閑話 ハクロの一日
表彰式の次の日である。今回はハクロにクローズアップしてみました。
王宮での表彰式が終わり、次の日、私は従魔用空間の中に作った私の寝床で目覚めた。
自分で作った糸を利用して、そのあたりで適当に拾った小石に巻き付け、ふんわりとした感じになるようにし、そこに寄りかかって寝ているのだ。
いつものように起きると、まず、日課として従魔用空間の中で軽くジョギングをする。前はこの空間は狭かったんだけど、ゼロ様が何とかこの空間を広げてくれたおかげで、できるようになったのだ。
この日課をこなすことにより、以前より少しは体力が付いたかな?(体力レベルとしてはとっくの前に人間どころか普通のアラクネも超えている)
朝食の時間となり、ゼロ様が召喚してくれてこのゼロ様がいる空間に私は出られる。ずっと一緒にいたいのだけれども、できれば寝るときは体を伸ばして寝たいとか言って、寝るときには従魔用空間に入れられるのだ。
今日の朝食は、ご飯とみそ汁だった。ゼロ様曰く、この宿の朝食はこれが出るらしいからここに泊まりたかったという。ゼロ様の従魔になる前は何食べていたっけな・・・。なんかこうもやがかかったようにしか覚えていない。アルテミスに聞いてみたところ、おそらく、従魔になる前は自我が確立しきっていないからそんな風にしか覚えていないのではないかという事だった。
朝食を食べ終え、いつものように依頼を見に行くぞ、というかと思ったら今日は違った。
なんでも昨日の王宮での疲れが残っているらしい。
「あ~お前たち、今日は冒険者家業は休んでこの宿で寝てるからお前たちは今日はそれぞれ自由行動な」
と言って、寝床に戻って寝てしまった。
こんなにぐだったゼロ様って結構珍しい。精神的に疲れたのだろうか?
「自由行動と言ってもどうするかの・・・そうじゃ、いいこと考えたのじゃ」
あ、アルテミスがなんか企んでいる。絶対何かろくでもないことだ。そうに違いない。
「のう、今日は我らだけで依頼を受けてみないかの?」
「「ワタシタチダケー?」」
「うむ。なんでも冒険者ランクを上げるには依頼をできるだけ多く達成する必要があるらしいからの。我らは従魔だから、我らが依頼を達成したとしても功績は主殿に来る、主殿の役に立つにはこの方法が一番じゃ」
前言撤回。このババァは意外にもよく考えていた。
「ん?今何か変なこと思わなかったかの?」
「思っていないですよ」
一応、ゼロ様にその私たちだけで依頼を受けることを許可してもらい、ギルドに向かった。
「『ゴブリン退治』、『町の清掃』、の二つか。これだけしか受けられないんじゃのぉ」
今日はどうやらあまり依頼がないようです。
「そうじゃの、『ゴブリン退治』は我が、『町の清掃』スラ太郎、お主に任せる」
「「イエッサー!」」
「あれ?私はなにをすればいいのですかね?」
「んー、適当にほっつき歩いて来ればいいと思う」
仕方がないので、依頼はあの二人(あれ?私たちってモンスターだから2匹かな?)に任せて、今私は街中を歩いていた。
時折私を見て驚く人が出るが、それはすぐ周りの人が教えて収まる。そんなに私が珍しいのだろうか?
とりあえず何をしようか考えていると、美味しそうな匂いが漂っているのに気がついた。向こうにある屋台からで、かなりの列ができている。
最後尾をみると、加齢臭漂うアンネルさんが並んでいたので聞いてみた。
「すいません、何を売っているのでしょうか?」
「ああ、坊主のとこの従魔か。あの店はな、今王都で人気がある『たっこんやっき』と言うものをうっているのさ」
たっこんやっきは、王都の近くにある湖で採れる『オクトパスンガルカ』というEランクモンスターを材料にして作られた食べ物らしい。
ゼロ様に土産として買おうかな・・・。一応、私たちにも小遣いとしていくらかわたされているし。
列に並び、屋台で『たっこんやっき』を数箱買い、ゼロ様のところへ帰宅したのであった。
閑話にたまに他の従魔の1日を書いてみようかな