『ギルド登録をしよう』
やっと冒険者になった
とりあえず、ギルドにいったんたどり着いた俺たちはギルド内に入ったのであった。
今は平日の昼間ではあるが、それでもさすがにギルドは大勢の人でにぎわっていた。
「おい見ろよあれ、変わったやつらが入ってきたぜ」
「見たところ魔物使いのようだが・・・・なんだあの従魔たちは」
「美しいアラクネに、スライムが人型とったやつ、それに美女に見えるが鱗がのぞいているところからおそらくドラゴンが人化したやつ・・・どう考えても相当な化け物ばかりだな」
「しかもあのアラクネって確か数日前に噂になったやつだよな・・・あいつがその飼い主ってとこか」
「素材にできたら1級品ものばかりだが、手を出したらこっちが全身バラバラにされて素材にされそうだな」
ギルド内でも腕の立つ冒険者がいるらしく、ハクロたちの実力をわかる人がいるようだった。だが、その他の人は下心丸出しの視線を向けている人もいるようだった。
ま、そんな視線は無視をしてカウンターの受付に話しかけた。耳が長いところからを見るとどうやらエルフのようである。一応むさくるしいギルドでは受け付けはきれいどころにするようにしているようであった。
「すいません、冒険者登録をしたいのですが」
「はい、冒険者登録ですね。では、こちらの記入用紙に書いてください。あと、冒険者用学校からの『学校推薦Dランク証明書』があるならばそれを出してください」
『学校推薦Dランク証明書』を提出し、確認してもらった後記入を開始した。
しかしこの人にもハクロたちは確認できていると思うんだけど、全く反応しないな。こりゃ相当ここではなんか起きているな。
そうゼロは思っていたが、実際はその驚きを隠されていただけであった。
記入し、確認をとることになった。
「では、最終確認をいたします。名前、『フォン・ガロン・ゼロ』。職業『魔物使い』。従魔名と種族、『ハクロ:ホワイトアラクネ』、『アルテミス:エンシェントドラゴン』、『スラ太郎(分裂し2匹として扱うため)A,B:光の女王』の以上4体。ランクは『学校推薦Dランク証明書』によりDランクから開始。以上でよろしいでしょうか?」
「はい、確認取れました」
「では、ギルドカードを発行するためにこの水晶に魔力の質を登録いたしますので手をかざしてください」
水晶に手をかざすと、水晶が淡く輝き、ギルドカードが発行された。
「なお、万が一そのカードを紛失された場合は初回は無料ですが、2回目以降は再発行代金として50万ゼン払ってもらいますので、くれぐれも紛失なさらないように注意を払ってください」
そういえば、この世界の通貨はゼン単位らしくて、だいたい日本の円と同じ感覚でいいようである。
ちなみに、一般的なDランク冒険者の収入は月40万ゼンらしいのでそれだけはなくさないようにしようと誓った。
登録も終わり、今日の寝床でも探そうかと思っていたらむさいおっさんの5人組がなんか絡んできた。
「おや、坊主。お前は魔物使いのようだがもうランクDなのかい」
「そうさ、学校を卒業したからね」
「そうかそうか。しかしその見た目からだと信じられんな。こんなちびっこがそんなランクなんてありえんわな。俺達だってまだEなのにそんなのはありえんよ」
「がっはっは、さっさと親のところへ戻ってしまいな。その従魔たちはおじさんたちが十分可愛がってやるわ」
いかにも胡散臭く、周りの冒険者たちからの視線も非難めいたものになっている。
「おい見ろよ、チームランクEの『筋肉魂』がまた冒険者に絡んでいやがる」
「ああ、あいつらは新人つぶしをしようとする上になまじ実力があるからな。調子に乗っているんだろ」
「しかしあいつら実力差が分かっていないのか?さっき聞こえたあの少年の従魔の種族名にとんでもないのが混じっていたぞ」
「え、よく聞こえたな。なんだったんだ」
「『エンシェントドラゴン』に『ホワイトアラクネ』、『光の女王』とかいうやつだ」
「まじか!後ろ2つのはまだよくわからないが、それでも『エンシェントドラゴン』はわかるだろ!」
「ああ、ランクSクラスの化けもんだ。そんなやつを従魔にできている時点でかなりの実力をあの少年は持っているだろう。あのバカたち終わったな」
うわぁ、よっぽど嫌われているんだな。
「はぁ、面倒くさいからどっかに行ってくれませんかね。こっちだってあんまり暇じゃないんですよ」
「な、なんだとこのガキが!!大人の常識を教えてやる!!」
ちょっと挑発しただけなのだが簡単に乗りやがった。
おそらく下っ端にあたるやつが殴り掛かってきた。が、遅い。その拳のスピードは確かにただのEランクにしては速い。しかし、俺たちは違う。
しょっぱなからムカついていたのだろうか、アルテミスがいつの間にかその拳を片手で受け止めたかと思うと、そのことに驚愕している相手を無視してそのまま拳をつかみ、床に勢いよくたたきつけた。
骨が折れるような痛々しい音が鳴り、その男は白目をむいて気絶していた。
「一応面倒じゃから、命は奪わんかったぞ。主殿、この汚泥のような腐った連中は我らだけで倒していいかの?」
「ああ、いいぞ」
一応ギルド内では、ちょっかいをかけてきた方が悪いとされ、乱闘になっても命を奪わない程度までは許されているのであった。
「く、くそ、野郎どもやっちまえ!」
「「「おおっ!!」」」
リーダらしき男が掛け声を放つと、残り3人がそれぞれ殴り掛かってきた。しかし、今度はハクロが糸を使って目にもとまらぬ速さでそいつらをあっという間に縛り上げた」
「く、化け物か!」
「どっちかというと、モンスターの目から言わせてもらうならあんたたちのほうがよっぽど醜い化け物よ。まるでオークのようで本当に卑しいわ」
「「ツマリバカナノ?」」
ハクロが怒りを込めた声を放ち、スラ太郎は話の流れ的に乗っているだけだろう。
だが、その一言が完全に男を怒らせたようだった。
「こ、このガキがぁーーーーーーーーーーーー!!」
男は持っていたナイフを俺に向かって切り付けてきた。
だが、そのナイフがその場所を切り裂いたとき、そこにはすでに俺はいなかった。
「な、どこに消え「ここだよバーカ!!」ぐほぅっ!?」
男がナイフを振り下ろした瞬間、俺は素早く身体強化「エンチャント」の魔法をかけてよけて、男の懐に潜り込み、その腹めがけて思いっきり膝蹴りを叩き込んだ。
男は宙を舞い、そのまま地面に落ちる前に追い打ちとばかりにスラ太郎がその着地予定地点に薄く広がり、明らかに『ビリビリスライム』の能力を出して電撃をまとい、着地とともに容赦なく男を感電させて気を失わせた。
周りでそれを見ていた人たちはその容赦のなさにおびえた。
「あ、すいません、今ギルド登録したばかりなのにさっそくこんな問題を起こしてしまうなんて」
一応正当防衛なのだが、受付嬢に謝っておいた。
「いや別にいいんですよ。この人たちが悪いのはわかってましたし」
「えっとそれでこの人たちはどうなってしまうのでしょうか?」
「ギルド内でいきなり喧嘩を吹っかけ、さらに素手の相手に対しての武器使用、そのうえこれまでの行いがありますからよくてランクの格下げ、最悪永久ギルド追放ですかね」
あっさりとおっかないことを言う受付嬢に少し引いた。
とりあえず、今回の騒動の必要手続き書類を書き、ギルドをでて今夜の寝床を探すのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ギルドのギルド長がいる執務室。そこではギルド長であるドワーフのメタドンが、冒険者用学校から届いた資料を見て頭を抱えていた。
「くっそ、モッセマンめ。厄介ごとを持ち込んできやがった」
その書類には、だいたい今日ぐらいに卒業してきた冒険者希望の魔物使いがギルドに来るかもしれないと書かれていた。
モッセマンの顔を思い出し、腹を立てていると、受付嬢の一人がノックして入ってきた。
「ギルド長、本日は新たに魔物使いの少年が冒険者登録を行ってきました」
「そうか、じゃあそいつの書いた受付用紙を見せろ」
手渡された書類には、先ほどのモッセマンからのと同じ顔写真が貼られていた。
「ちっ、モッセマンめ。面倒ごとは俺に押し付ける気だな」
「それと、そのものが今日登録後すぐに喧嘩を売られ、返り討ちにしていました」
「そうか、返り討ち・・・・ちょっと待て、何のチームをだ」
「えっと、ランクEの『筋肉魂』ですね」
「またそいつらか・・・、しかも相手が悪かったようで同情するぜ」
ランクの差は実力を現しやすく、はなからEランクチームがDランクに挑んでも勝率はないに等しかった。それも、モッセマンからの手紙と資料によるとさらにもっと上ではないかとあった。
「そうだな、そいつらは今まで問題を起こしてるし、かといって相手が悪かったことに同情できるからな。そうだな、処分としてはEランクからGランクへと格下げにしといてくれ」
「わかりました」
受付嬢が部屋を出ていくと、ギルド長はこれから先に起こるであろう問題に頭を悩ませため息をつくのであった。
これでもまだ処分は軽いが、それでもランクが落ちたことはその名に傷が付き、今まで以上に依頼にありつきにくくなってしまう。