『どうするのか、そして二人の会話』
今回なんか主人公速攻出番なし
「ゼロ君、きみはどうしたいかな?」
モッセマンさんのその質問に俺は一瞬ためらった。たしかに、一国と同じになればそのような国の面倒くさい争いからある程度は関わりを持たなくて済むだろう。それに別に領地を持っているわけではないので基本は卒業したあと冒険者として自由になれる。
だが、それでもなぜか迷ってしまう。そう、一国と同じなら戦争が起きた際にどの立場でいればいいのだろうか。中立でいればいいが、それでもこの国にいたのだから、どうしてもこの国に味方したくなってしまう。だか、そしたら他の国から批判を浴びせられる可能性もあるのだ。
「・・・一晩考えさせてください」
「ま、たしかにまだその話はおもかったかな。でも、今先延ばしにしてもこの話なようなことはまた来る。それだけは忘れないでくれ。だから、今日一晩考えたら、明日の朝、この場所で君の決断を聞かせてくれ」
校長室を後にし、俺は寮の自分の部屋へ戻った。
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ゼロが校長室を出た後、国王はモッセマンと少し話していた。
「その話はやっぱり重かったですかね?」
「まだ11歳で子供だからぞい。大人のそんな汚い国の争いに巻き込みたくない本心だが、それでも彼は力がありすぎるからぞいね。ランクSに当たるモンスターをすでに三体も従魔にしている実力はそれだけ様々な問題事を引き寄せやすいかもしれないぞい」
と、そこでモッセマンはふと思い出した。アルテミスがゼロの従魔になっていた会話のことである。
「そういえば、彼女が従魔になる際になぜゼロ君に興味を持ったのかの理由を思い出しました」
実はあの時モッセマンは気絶していたが、耳にはしっかりその時の話を捉えていたのである。
『なんでかわからんという顔をしておるな。それはな、おぬしの魔力量が異常じゃからじゃ』
ゼロの魔力が異常。それをエンシェントドラゴン自身が認めているのだ。それだけの魔力を彼は持っているということになる。
「ゼロ君の魔力が異常と言っていたのですが、国王様はその理由を知りませんか?確か10歳で行われる能力を調べる儀式でてたものは神父様と国王様しかわからないんですよね」
「うむ、内容を話すのは超国家機密なのじゃが、あの神父から聞いたのは彼は魔物使いである能力だけじゃ。聞いた通りならな」
その言葉に何か含みがあることにモッセマンはすぐわかった。
「つまり、神父様が何か隠しておられると?」
「だろうな。あの神父は常に国の事を思っているためそう都合悪いことなど普通は隠さないはずぞい。だが、それはあくまで国に対しての話。もしかしたら彼の力が強すぎるからこのままではこの国が戦争を起こすからと考えて秘匿した可能性があるぞい」
「ふむ、それなら今、直接聞きに行くのはどうでしょうか。このような事態になっていると伝えれば」
「だが、神父は1か月前、モンスターに襲われた村への救済作業中にぎっくり腰で動けなくなり、現在は腰に効くという温泉へ療養しに行っていて戻ってくるには往復5か月間もかかるぞい」
「今は国から離れたらまずいですし、かといって国王様以外が聞きに行くのもまずいし・・・、ゼロ君が自分のスキルすべてを話してくれるのが一番いいんですけどね」
「だが、スキルは完全にその人の秘密です。別に知られていいようなものならまだしも、過去に確認された『精霊王の加護』や『魔王の証』、『勇者の証』、『破壊神』、『魔人』などはさすがにやばいぞい」
「そのスキル持っているだけで国を簡単に掌握できるようなものですからね・・・。あ、でもアルテミス殿が少し昔話をしたときに魔王と勇者の話がありましたけどその人たちはそのスキル持ちだったんでしょうかね?」
「そんな話があったぞいか」
「で、アルテミスさんはどちらも倒したそうです」
「むちゃくちゃだぞい・・・。しかしそれだけの強さを持つのが、たった一人の、それも人間の従魔になるとは世の中どうなっているかわからんぞい」
「しかしそれ一体だけで国滅ぼせますもんね・・・」
「しかも後、2体も同じぐらいのランクかぞい・・・」
はぁ、と二人ともため息をついた。そもそもたった一人の魔物使いにここまで強力なモンスターが3体も従魔としてなるとは歴史上なかったことである。現在いる最高ランクの魔物使いはランクA。だが、その従魔ランクはA。Sランクのモンスター3体を連れているゼロと比べると完全に力負けである。
こうして、二人のおっさんはその悩みを互いに話しながら夜を過ごしたのであった・・・・
次回予告、自分が取れる策とは何なのか、本当に自身が1国と同じ扱いになればいいのだろうか、悩みに悩むゼロはどう決断を下すのか。
次回『悩みの末に』
やっぱ次回予告はたまにやってみようかな。次回タイトル決めれば書きやすくなるし