最終話 『適当に生きたいただの魔物使いですがなにか?』
最終回です・・・・・
全員無事に子供が生まれ、それぞれすくすくと育っていった。
全員子育ては初めてだったのだが、魔王の記憶の中にある知識を持つ俺と、もともと子供に関しての面倒見がよかったアルテミス、母性を放つカトレアと本能的なもので育てられるヤタで何とか子育てをしていった。
すくすくと育っていき、学校へ通える歳になったら学校に通わせた。
魔王である俺の子供とか言ったりしたが、別にそれを威張ることもなく全員いい子に育っていった。
そのうちに成人していき、恋愛し、孫ができる。
その孫がまた子供を産み、それの繰り返しだ。
ハクロたちもまた子供を産み、育てていく。
・・・月日は流れ、いつの間にか子孫が普通に世界中に交じっていた。
魔王の衣は魔王の存在を保つ衣。
政治から隠居した俺はさらに長い年月を生きた。
だが、魔王の衣の効果で老いることもなく、昔の姿のままである。
・・・さらに月日は流れていき、周囲も次第に変化していった。
いつの間にかローズが寿命で死んでしまった。
時間の感覚がこの頃からわからなくなる。
・・・モンスターに寿命があるらしいということは言われてはいるが、大抵は冒険者たちによって討伐されていくため確認することはない。
ある日倒れて衰弱いていき、最後にはまるで光となって消えていく。
スラ太郎、ヤタ、リーゼ、ライア、アルテミス、カトレア、ハクロの順で消えてしまった。
俺は一人残されながらも見て行く。
・・・・・・いくつもの国が栄え、滅び、生まれての繰り返しを俺は見た。
魔王となったせいかは知らないが、従魔になってくるモンスターがいて、先代魔王のように求めてきた者には答えたが、寿命で死んでいく姿を見る。
そのうち、モンスターすらいなくなり、生きているのは人々や普通の動植物ばかりとなった。
ダンジョンもすべていつの間にか崩壊し、モンスターは絶滅した・・・・・。
だんだんと魔族、亜人などが消えていき、人間が増えていく。
いつの間にか、科学というモノが生まれる。魔法にとって代わり、そして魔法も何もかもなくなっていった・・・・・。
・・・長い年月、俺はずっとみていった。だが、ずっと似たようなことの繰り返しだ。
そのうち地球とも変わらないような感じになってきた。
魔道具であったワゼも、いつの間にか壊れて動かなくなった。
魔王の衣は魔王の存在を保つ衣。それはある意味呪いのような気もしてきた。
・・・そして、ある時自らの魔法によって魔王の衣を俺は消し去った。
先代の様に毒で自殺と言う手段があったが、さすがにそれは嫌だったからね。
魔王の衣が消え去った瞬間、俺は脱力してその場に取れこむ。
「もう、一人は嫌だからな・・・・」
そして、意識とともに俺はその場から消え去っていったのであった・・・・・。
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・・・ここどこよ。
俺は気が付くとどこか暗い空間にいた。
て、これあれか、転生させてくれるみたいな展開か。
最近よく読むもんなこんなやつ。だいたい簡単にチートといったやつかな。
・・・そもそも俺誰よ。あ、魔王だったわ。ゼロだわ。
・・・・あれ?前にもこんなことがあったような?
『ありましたよ』
「うおっ!?」
いきなり声が聞こえた途端、俺はこの場所がどこか思い出した。
「あー!!チートいらんって行ったのに付けたやつの声だ!!」
『何で声を覚えているの!?』
どうやら、まーたこの空間に俺は魂だけの状態でいるようである。
「あれか?また転生させるとかそういうやつか?」
『はい、そうですよ』
確か神とか言っていたやつが言うには、俺の魂はどうやら強い力を持っているらしい。
『何度も転生させたりしましたが、いやほ本当に何でこんだけの力があるんだって感じの魂ですよ全く』
「そういや先代魔王の話にあったな・・」
魔王はどうやら神々をも恐れさせる力を持っていたって・・・。
『はい、ですので神々としては危険と判断しましたが、何分神をも超えていましたから消去ができなくて、こうして何度も転生させて魂を消耗させていく予定でしたが・・・・全く効果がないようです』
すごいなこの魂。あ、俺か。
「で、また転生させるとかいうんだよな」
『はい、いつか魂が力を失うときまで何度もですよ』
・・・まるで呪いみたいだよな。
『で、今回はどうします?上の人に聞いたら今度は何か希望があったら2つまでは確実にしてあげるとかなんとか?』
「・・・その前に質問いいか?」
『いいですけど?』
「・・・・ハクロたちの魂ってどうなっているんだ?」
長い年月の間に、彼女たちも転生しているだろうしな。
『・・・・転生していますね。ですが、みなバラバラですよ』
やっぱり全員一緒とかじゃないのか。
「ならば、希望2つ叶えてもらおうか」
『はいはい。では2つどうぞ!!』
軽いノリだな・・・
「まず、転生したらこれまでの記憶は完全消去。今の自我は消えるが、俺はもう考えたくないからな」
『記憶の完全消去っと』
「そして・・・・来世でも魔物使いになることができるか?」
『できますけど・・・・それでいいんですか?チートとかいらないんですか?』
「それは前にも言ったからな。・・・またチートみたいなものが付いていたら今度こそ思い出して神様あんたを吹っ飛ばすぞ!!」
『ま、いいでしょ。そういえば、元いた世界にはもうモンスターがいなくなってしまったので、魔物使いとなるには別の世界に転生での転生となります。では記憶完全消去ののち、魔物使いの才能を付与して転生いたしますからね・・・・』
声が消えていき、俺の意識はなくなっていく。
今までの記憶が消えていく。
「まあ、俺は適当に生きたいただの魔物使いだからな!!来世こそ適当に生きたいただの魔物使いとしてかなえてやるぜ!」
そう叫び、俺に意識は完全に消え去った・・・・・・・・
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とある森の中、ある男の子が歩いていた。
「ある日~森の中・・・・・ここどこだろう」
陽気に歌ってみたが、さみしくなってしまう。
男の子はいわゆる迷子であった。
今日は家族とともに、ピクニックに来ていたのだがちょうちょを追いかけていたらはぐれてしまったのだ。
「お母さん・・・お父さん・・・・」
涙が出てきたが、どうにもならない。
「うわぁぁぁぁぁん!!」
ついに泣き出してしまった。
鳴き声があたりに響き渡る。
「おかぁぁぁさぁぁぁん!!おとうさぁぁぁぁん!!」
泣きわめく男の子。しかし、両親が来る気配がない。
泣き続けていた時だった。
「・・・・どうかしたのですか?」
「ふぇ?・・・・・でっかい蜘蛛!?」
誰かの声がしたので、男の子がその方向を振り向くと目の前には巨大な蜘蛛がいた。
トラウマレベルの光景であり、後ろに後ずさりをした。
「あの、上が本体なのですが・・・・・・」
「ふぇぇぇん!!」
さすがに今ので男の子は完全にビビってしまい、もう動けなかった。
「えっと、えっと・・・・」
あたふたと蜘蛛が慌てているようだと思ったら、男の子の身体は急に宙に浮いた。
「ふぇ?」
「こうすればいいんでしたっけ?」
いつの間にか、きれいなお姉さんの腕に男の子は抱えられていた。
胸の部分が大きいので柔らかく、なんとなく気持ちい感覚だった。
「ふえっ?蜘蛛は?」
「あの・・それ私の下の身体なのですが・・・」
みると、お姉さんの身体は、太もものあたりから蜘蛛に刺さっているような感じであった。
「え!?お姉さんもしかして足から蜘蛛の頭に突き刺さってしまったの!?」
「なんですかそれ!?その言い方は怖いですよ!!」
男の子の言い方に、蜘蛛のお姉さんのほうも驚いたようである。
「・・・・私はアラクネとかいうモンスターですよ。他の皆とは違ってこうして人と話せるのですが・・・・皆怖がってしまって・・・」
モンスターと言うのは人を襲うような生き物だと男の子は絵本で読んだ。アラクネとかいうのは良く知らないけど・・・・・
「でも、アラクネのお姉さん美人だよ?」
蜘蛛の部分を隠せば結構なきれいな人だと男の子は思った。
「そうですか?でも・・・先ほど、あなたが怖がったかのように、皆怖がってしますので・・・」
悲しそうな顔をしたアラクネのお姉さんをみて、男の子は思った。
「さっき確かに怖かったよ・・・・でも、こうしてみるときれいだからみんな大丈夫だと思ってくれるって!!」
「・・・本当ですか?」
「本当に!!」
その言葉を聞いたアラクネのお姉さんは喜ぶような顔をして男の子を抱きしめた。
「ありがとう!!そんなことを言ってくれて!!」
「ぎゅむっつ!?」
抱きしめられたために胸に顔を沈める形となったが、柔らくて気持ちよかった。しかし・・・
「く、苦しいよお姉さん・・・・」
「あ!!ごめんなさい!!」
危うく窒息しかけた。
けほけほと男の子がせき込んだ時だった。
「・・・・・・どこにいるのー!!」
「返事をしてくれ・・・・・!!」
「あ!お父さんとお母さんの声だ!」
両親の声が聞こえて、男の子は喜んだ。
「・・・あなたの親が来たのですね。では、ここでお別れですよ」
そうお姉さんが言うと、そっと男の子を地面におろして森の奥の方へと歩もうとした。
「え!?なんで別れなの!?」
「私はモンスター、あなたの両親も怖がらせてしまうかもしれませんよ?」
「別にいいじゃん!!お母さんたちにはちゃんと話すから!!」
「・・・・でも」
「大丈夫だってば、ハクロ!!」
「・・・え?」
「え?」
男の子と、アラクネは二人とも今の言葉にどこか聞き覚えがあった。
「ハクロって・・・・なんで今出たのかな?」
「私には名前はありませんけど・・・・ハクロってどこか懐かしい感じがします」
その瞬間、二人の足元に何かが浮かび上がり、すぐに消えた。
「・・・・・今の何?」
「これは・・・・魔物使いの主従契約の・・」
アラクネの方はこれが何なのかなぜか知っていた。そして・・・・
「これが出たってことは・・・・私はあなたの従魔となりました」
「え!?従魔って何!?」
男の子の方は訳が分からなかった。
「・・・要は、あなたの家族ってことですよ」
「家族・・・・・・うん、わかった!!」
アラクネは、なぜか自分でも無意識のうちに「家族」と言った。
そして、男の子の方も「家族」という言葉があうと思った。
両親の足音が聞こえてくる。
「家族になったなら、お母さんたちに話さなきゃいけないけど・・・・名前は何て言うの?」
「先ほどの『ハクロ』でいいですよ。なぜか心に響きましたから」
「そう・・・・じゃあ、ハクロこれからよろしくね!!」
両親が男の子にやっと再会できたとき、ハクロにビビった。
男の子が一生懸命家族になったと説明し、ハクロの方も丁寧に説明していく。
そして、男の子の家族の一員として、そのアラクネは加わった。
それから10年後、とある冒険者ギルドに魔物使いで登録したいという少年が来た。
彼が連れていた従魔は、美しいアラクネ。
いったい何者だと聞かれた時、彼はこういった。
「適当に生きたいただの魔物使いですがなにか?」
~THE END~
ついにこの話が最終回を迎えました。
かなり急にこの話を終わらせてしましましたが、それでも何とかまとめ上げられてよかったです。
・・・あの男の子とアラクネ、彼らはこれから先どうなるでしょうか?
長い間のご愛読、本当にありがとうございました。ゼロの話は終わってしまいましたが、彼らの話は今まさに始まったばかりです・・・・・。




