『無人の街』
シリアス
「ものの見事に誰もいないな・・・」
魔族の国の中に(密)入国した俺たちは戸惑っていた。
魔族が住んでいるはずなのに、人影すら見当たらない状態なのだ。
奥の方に西洋の感じの城があるが、記憶だとあれが魔王城らしい。
だが、魔王城の周りの城下街ともいうべきこの町は誰もいないのである。
「おかしい・・・前は確かに人がいたのに」
ファウストの方も予想外のようである。
「・・・・空から見て回っても、見当たらないです」
ヤタが結界ギリギリの高度で飛行して見まわったが、誰もいなかったようである。
「糸を素早く張ってみましたが、反応が皆無ですよ」
ハクロも糸を使ってみたが誰も探知しないようである。
ほかにもスラ太郎の眷族のスライムたちや、カトレア制作ゴーレムたちにも見て回ってもらったが、やはり魔族の姿が見えないらしい。
「とにかく、魔王城の方から見て見よう」
魔王城の中にある会議室とやらがこの国の政治機関らしい。
先代魔王亡き後はしばらくはそこがこの国の政治を収めていたようだが・・・・・。
城門を開き、城内に入ってみるが人の気配が全くない。
静まり返っていて不気味さがあった。
「なんか死んだ国って感じだな・・・・」
こういうのをゴーストタウン、いやゴーストカントリーとでもいうのだろうか?
魔王城の中は、魔王の記憶の通りでそこまで手が加えられていないようである。
「誰一人見かけないな・・・」
「魔王様亡き後、50~60年飴ぐらいから政治争いとかがあったんだけど・・・・騒いでいたやつら皆いなくなっているようだよ」
会議室とやらに入ってみるが、ここにも誰もいない。
「ん?」
そんな中、一冊の手帳のようなものが目に入った。
「これは・・・・・名前が書いてある。フングァ・ドレ・タランか」
「タラン議長のか。あの人影が薄かったからいまいち印象がなくて、姿をも思い出せないんだよね・・・」
影が薄い人って魔族にもいるんだな。
パラパラとめくってみると、どうやら日記の様なものらしい。字がきれいで読みやすいな・・・。
ただ、日付や年号がこの世界のこれまでの国々の物とは違っていた。
「ああ、これ魔王暦だよ。魔王様が建国したのを元号として使用しているからね。外の国々とのずれはあるけど・・・これ最近の日付だ」
どうやら今の日付から逆算して1か月前ぐらいのものらしい。
だが、何でこんなものが・・・?
ともかく、内容をしっかり確認してみるか。
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#/&
最近、国内で謎の減少が確認されている。
人口が少しづつ緩やかにだが目にわかるまでに減少し始めている。
国外に流失しているわけでもないし、いつの間にか人が消えていっているそうだ。
それも、いつの間にと言うような感じで詳しいことはわからないらしい。
#/%
原因を調査してみるが、一向に原因が不明だ。
ある日忽然と、それも急にいなくなったように感じるのではなく、いつの間にかといった具合で消えているらしい。
昨日?おととい?といった具合でわからない感じらしい。
このことは国民には知らされていない。
今、魔王様の座をいただこうとする議員が多くて誰も気にかけていないのだ。
$/*
調べてから3ヶ月が経った。
こうしている間にも、人口がどんどん減っていっている。加速的に進んでいるようだ。
さすがに言い争いをしている場合ではにとやっと気が付いたのか、議会で緊急対策を行うことにした。
人口が外に流失しているのではないかと思われたので、緊急措置として一時的に国内のすべての外に通じるところを魔道具にて閉じさせた。
少々混乱が広がるかもしれないが、これで人口が減るのを止められれば・・・。
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「・・・なるほど、国に張られている結界はこのためのものだったのか」
しかし、ますます訳が分からなくなるな。
人口が減少しただけなら、どうして半壊したりしている建物なんかがあるんだ?
「日付的にはまだ半年以上前だね。まだ続きがあるみたいだ」
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ダメだ!!まったく人口が増える気配もなく、止まる気配もなく、加速的にだが次々と減ってきている!!
この議会内にもついにいつの間にか消えている者たちが出始めた。
早く原因がわからないと・・・・・
¥/%
原因がわからぬまま、自分が消える恐怖におびえ始める者たちが出始めた。
暴動などが起こり、あちこちで火の手があがる。
さらには、壁を破壊して外に逃げようとするものが出始めた。
さすがにこのままこの国にいるのは危険だと判断。
国外へ逃れるようにしようとした。
だが、国の人口が外に流失するのを防ぐために起動した魔道具なのだが、なぜか全く停止しない。
どこからか魔力が、それもかなりのものが供給されているらしく、破壊して止めたくとも破壊できない。
しかし、ここで思いついた。この魔力を流しているものが原因ではないかと。
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「魔道具って、あの結界を創り出しているやつか」
「確か、設計上1年は持つ作りの様だったけど、ちゃんと停止させたりできたはずだよ」
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やった!!ついに原因が分かった!!
魔道具に流されている魔力の流れを追跡し、ついに見つけた!!
だが、判明したとこでこれは止められない。
これは、魔王様が持っていた魔力クラスの人物でないと不可能だ。
絶望しか得られなかった・・・・
@/$
ついに自分だけしかいなくなった。
もはや外は荒れ果て、あの町並みは無残なものとなっている。
だが、だれも住んでいない場所なら別にいいだろう。
あとは自分が消えるのを待つばかりである。
・・・それにしても、なぜ自分だけが最後に残されたのだろうか。
もしかすると、この記録を残すためだけに残されているのかもしれない。
もし、この国に入ってこの記録を見つけ、読んでいるなら早く逃げろ・・・・。
アレは、もうどうにでもな、
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ここで、途切れていた。
「・・・日付は、2か月前だね。どうやら2か月前にこの国は全滅したようだ」
「一体何が原因だったんだ?」
そこのところを書いておいてくれたらわかったのだが・・・・。
「この人は最後まで、これを伝えようとして記録を残したのか」
「魔力が、それも魔王様クラスが必要ってことは、もしかすると・・・・魔道具?」
何らかの魔道具の暴走が原因?
「でも、魔道具って人を消せるのか?」
「それはわからないよ」
「たしか・・・一部の魔道具の中には人を呼び寄せる物があるそうです」
カトレアはどうやら何かわかったようである。
「カトレア、何かわかるのか?」
「前に本で読んだ程度ですが・・・・」
カトレアの話によると、めったにないようだがそういう魔道具はあるらしい。
自ら魔力を創り出し、他の魔道具を動かすという魔道具が。
ただし、それはどうやら禁忌とされているようなもので、魔力を創り出すには生き物を取り込む必要があるそうである。要はエンジンのようなもので、運動エネルギー(=魔力)を生み出すために燃料(=生物)が必要な魔道具と言うわけだという。
しかも、周囲の生物を自動で取り込めるらしい。
魔道王国でも完全禁止されているもので、ごくまれにしかダンジョンでしか出ないようなものだという。
しかし・・・・・。
「そんなやばい代物がなんでこの魔族の国に?」
魔王の記憶をさかのぼってみたが、そんなものはどこにも見当たらない。
「というか、結界が働いていると言うことはもしかして今も稼働中なんじゃ・・・・」
沈黙がその場を覆う。
その瞬間だった。
ズゴン!!
「いっ!?」
いきなり地面が揺れた。
振動が強くなり、まるで地震のように大地が震える。
「やばいな・・・急いで逃げるぞ!!」
この城が崩れかねない心配があったので、俺たちは淡って城から出たのであった・・・・。
〇/〇 は、○月○日みたいなものと思っていただければ・・・・




