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『雪降る中で』

寒いのは苦手だな。


現在、魔族の国へ向けて飛行中であった。


雪が降ってきたので、ハクロ以外の従魔全員が従魔用空間に入り、俺とハクロと魔族3人組で飛行中である。


飛行魔法で全員飛んだけどさ、ハクロだと違和感あるよな・・・真下から見たら蜘蛛が飛んでいる様にしか見えないだろうし。


気温が下がってきている様だが、魔王の衣のおかげで快適状態だった。


魔王の衣は魔王を守る。どうやら対象には気温もあったようだ。


「僕らはまだ平気だけどね」

「魔族は寒さには強いですから」


何気に新事実が明かされたな・・・ものすごくどうでもいいことだったが。


「魔族の国って雪国にでもなっているのか?」

「違うYO!今の季節が冬になっているだけだYO」


ふむ、グライトス王国とは季節がずれているのか。


「しかし、雪のせいで視界が悪いな・・・もう少し高度をあげて雲の上からで・・・ん?」


 ふと、何かが目に入ったような気がした。


「どうかしたんですか?」

「いや、今なんか地上の方に・・?」


 気になったので、いったん下に降りた。




「・・・・うわぁ」


 赤色が目立ったので見に行ってみると、あちらこちらに凍り付いた肉片が散っていた。


「なにこれ?バラバラ殺人事件?」

「見た感じ、切り裂かれたって感じだけど・・・このあたりこういうことするようなモンスターっていたかな?」


 ちょっと軽く「鑑定」。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「人肉」

人の肉片。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


・・・知らなきゃよかったよ。


 え、てことはこの周囲の肉片って・・・・


「これ全部人肉かよ・・・」

「飛び散った感じだな・・」


 と、ふと雪の中になにか黒いものが埋まっているのを見つけた。


「なんだこれ?」


 掘ってみると・・・・・


「・・・黒翼のハーピーか」


 どうやら、ワポーンからここまで飛ばされてきたようである。あたりに散っている肉はハクロたちの話に出てきたこいつに命令をしていた男の身体か。


「体が冷たいですよ。だいぶ冷え切っていますし・・・」


 触ってみると、物凄く冷たくなっていた。


「死んでいるのかな?」

「どれどれ・・・?」


 ザイネがハーピーの胸に耳を当てる。心音を聞くためだ。


 なお、ハーピーにしてはなんか脂肪が胸に詰まっているようで、ちょっと大きい・・・。


「・・・かすかですが、まだ生きていますね」

「そうか・・・ま、ここであったのも何かの縁だ。出てこいカトレア!!」


 カトレアを従魔用空間から出す。


「この辺に小屋をちょっと作ってくれ。このハーピーの治療をしてやる」

「!?・・ご主人、正気ですか?ご主人の精気を吸い取ろうとしたのに・・・」

「だってな・・なんか見捨てられないじゃん」


 確かにこいつは俺のことを狙ってきた。だが、命令されてのようだし・・・・。


「また同じようなことをしてきても、カトレア、お前がいるだろ?」

「・・・わかりました」


 カトレアなら防げるしな。それに、このまま凍死させるってのもなぁ・・・居心地悪いんだよ。


 カトレアに、素早くログハウスを作ってもらい、他の皆を出して治療にあたらせた。


 全員不安そうな顔をしていたけど、俺にはこのハーピーが悪そうには見えないからな・・・。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・ここは」


 ハーピーは気が付いた。


 何か温かい感じのものに包まれていると。


 目を覚まして見て見ると、毛布でくるまれていた。


「お、目を覚ましたか」


 声がしたので、声の主を見て驚いた。


 あの時、まさに精気を吸い取ろうとした相手だったのだ。


 同時に自分の体の状態にも気が付いた。


 怪我が治っており、服も新しいものに着替えさせられていたのだ。


 助けてくれたらしいというのはわかったが・・・・・


「・・・なんで私を助けてくれたの?」


 それが不思議だった。


 精気を吸い取ろうとしたのに、どうして、なんで?


「うーん、なんとなく悪い奴には見えなかったからだよ」

「・・・なんとなく?ただそれだけで?」


 ますます訳が分からない。そんないい加減な理由で?


 と、混乱している最中に、あの夢の中で自分よりも主導権が強かった人が近づいてきた。


「私たちとしては、あなたのことを警戒していますけどね・・・ご主人は私たちがいるから大丈夫だとおっしゃったので、こうして助けたんです」


 不満げな顔だが・・・それも理由で?


「あー、見捨てることができなくて、さすがに可哀想だなと思ったんだよ」


 見捨てることができなかった・・・・?


「・・・私は、あなたの精気を吸おうとしたりしたのに?」

「カトレアがいるからもう夢の対策はできているし、戦闘を仕掛けようとしてもこちらが上だしな。もうお前を軽快する必要がないからだよ」


 カトレアと言うのは、あの夢の中で主導権を握ったあの人か・・・・。それに、この場にいる人たちはお父さんと逃げたときの・・・。


「・・・私を生かしておいていいの?」

「いいんだよ。どうせ、もう悪いことはできないようなものだろう?」


 たしかに、命令していたお父さんはいなくなっているし、精気を吸い取る理由もない・・・。


「それにな、お前は本当は心が優しい奴だろ?」

「・・・どこが?」


 ちょっと不意を突かれ、ドキッとした。


「俺の夢の中でのおまえの表情だが、どこか悲しそうな顔をしていた。お前としてはやりたくなかったことだろう?」

「・・・・!?」


 時間としては短かったと思うが、それだけで私の心をわかったの・・・・!?


「だが、もうお前は自由だ。命令する奴もいないし、その翼があればどこへでも飛んでいけるだろう?」


 指さされた自分の翼は、元通り綺麗になっていた。だけど・・・・


「・・・私は、ワポーンでは『黒翼のハーピー』と言われているらしいけどいいの?」


 自分に対する話・・・おそらく、母親の方の話だろうが黒翼のハーピーはワポーンの三大伝説モンスターとして伝わっていて、様々な混乱を引き起こしたものとして言われているのだが・・・。


「時代から言って、お前はそれとはまったくの別人、いや、別モンスターだ。お前がどうあろうが、それはお前自身が決めることではないか?」

「・・・私自身が決めること・・・・・・・・」


 その言葉は、物凄く心の中に響いた。


 この人は、三大伝説モンスターとしても、精気を吸い取ろうとしたモンスターとしても見ていない。


 父親の様に私を道具として見ていない。


 この人は・・・・私その物を見ているんだ。


 それに気が付いたハーピーは胸が熱くなった。自身しっかり見てくれた人に対して・・・・・。


「・・・わかりました。私は私の好きなように生きればいいんですね?」

「ああ、そうすりゃいいさ」

「・・・でしたら、まずは、謝りたいと思っていたことですが、精気を吸い取ろうとしてごめんなさい」



 まずは謝ること。これが一番にしたいことだった。


「いや、もうしないならいいんだよ」


 あっさりこの人は許してくれた。


 そして、もう一つやりたいことと言えば・・・・。


「・・・・お願いを一ついいですか?」

「なんだ?」

「・・・私を、あなたの従魔にしてください!!」


 今までにないほどはっきりと言った。


 父親もいなくなり、もう自分の心に従うならば・・・・・・この人についていきたいと思った。


 従魔となって、この人のそばに行きたい。


 というか、添い遂げたい・・・。


 この時、ハーピーははっきりと自分の心を現したのであった・・・。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・私を、あなたの従魔にしてください!!」

「はい?」


 いきなり言われた。


 予想の斜め上に行ったんだけど・・・・・。


 だが、その顔は真剣そのものである。


「従魔になりたいのか?」

「はい!!」


 確認のために確かめると、力強い返事が返ってきた。


「ゼロ様の精気を吸い取ろうとした相手ですよね・・・・いいのですか?」

「まあ、基本来るもの拒まずだしな・・・・」


 ハクロが心配げな表情だが、大丈夫だろう。


「いいのぜよか?殺そうとした相手を従魔に引き入れるなどと・・」

「お前が言ったらダメだろ」


 ライア・・・おまえも似たようなやつだったしな。


 とりあえず、他の皆にも聞いてみたけど反対はなさそうである。


 カトレアが「何かあったら私が全力で守りますので」と言ったしな。


「それじゃあ従魔にするが、お前の名前を付けなければいけない。元からあった名前とかないのか?」

「・・・ないですね。私はお父さんに昔は何かで呼ばれていましたが、今では名前で呼ばれなくなり、もう忘れてしまいました」

「だったら、俺が付けるぞ。そうだな・・・・・『ヤタ』だな」


 カラスの羽みたいな色だから八咫烏(ヤタガラス)を思い出してとったんだよね。


「『ヤタ』ですか・・・・それでいいですよ」


 そういうと、足元に魔法陣が浮かびあがり、従魔の契約が完了したのであった・・・・。





 



 





来るもの拒まず、これがゼロの信条である。

自ら従魔になりたいというならば、拒む意味があるのか?

というか、やっと話が進みそう・・・。

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