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『被害甚大』

ちょっと都合上一部変更

 壺が割れた中から出てきたのは、3つの頭を持つ体全体が煙のようにかすんでたりすす白くて巨大な怪物だった。


 狼の頭にも見えるが、時折出す舌が蛇のようにも見える。


「な、なんですかコイツは・・・」


 ハクロたちが警戒し、構えた瞬間だった。


「ワォ―――――――――――――――――――――ン!!」


 その怪物が吠えた瞬間、衝撃波が発生して周囲を一気に吹き飛ばした・・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「・・・はっ!?」


 夢からやっと覚めた俺が周囲を見渡すと、がれきの山ばかりであった。


「寝ている間に何があったんだ・・・・?」


 気が付くと宿まで崩壊したようだが、俺自身は魔王の衣で守られていたようで無傷だった。


 立ち上がって周囲を見渡すと、どこもかしこもがれきばかり。


「一体何がどうなって・・・・・ん!?」


 がれきから何かが付きだしている。


 見覚えのある足・・・・ハクロのだ。



 慌てて近くに行き、足を引っ張り上げる。


 がれきから引きずり出すと、やっぱりハクロであった。


 ただ、体のあちこちが破片などで傷ついているようで痛々しい状態だった。


「大丈夫かハクロ!!」

「ぜ、ゼロ様・・・」


 呼びかけると、どうやら意識はあるようで何とか体を起こした。


「痛たたたた、結構ひどくやられました・・・」


 ハクロのけがは、頑丈な蜘蛛の足の部分が一部削れており、衣服も自身の頑丈なアラクネの糸で作っているはずなのにボロボロになっていた。


「一体何があったんだ?」

「それがですね・・・」






 ハクロの話を聞き終え、俺は状況を理解した。


「なるほど、なんか壺が割れて出てきた怪物の咆哮で吹っ飛ばされたと」

「衝撃波の様でしたが、同時に体を傷つけられて、あちこちの建物が倒壊してそれに巻き込まれて埋もれた感じですね・・・」

「って、他の皆は!?」

「おそらく同じように巻き込まれて吹っ飛ばされたのかと・・・」


 あの魔族三人組も吹っ飛んだようだが、今は別にいいとして、アルテミスたちが心配である。


 その怪物とやらは今はこの場にいないようだ。


「召喚!!アルテミス!!スラ太郎!!カトレア!!リーゼ!!ライア!!」


 魔物使いが使える召喚を使う。普段めったに使わないけど、この召喚は遠距離でも呼び出せるようだ。



 全員が呼び出され、目の前に出現した。


 だが・・・・。


「これはひどいな・・・」


 全員、かなりズタボロの状態である。というか、スラ太郎が一番悲惨な状態。スライムの身体だったから、あちこちちぎれたすべての部分全部が呼ばれたようで・・・ばらばらだった。


 アルテミスは外傷はないようだが、気絶中。頭にでかいたんこぶがあるのでおそらく落下してぶつけたようである。


 リーゼはハクロ同様の怪我。


 カトレアは木の根の部分が折れたりちぎれたりしている部分があり、衣服もやはりビリビリになっていた。


 ライアに至っては、後ろで結んでいた髪留めがはじけたらしく、服装もボロボロになっていて貞子状態であった。



 全員手持ちのポージョンなどで回復させる。アルテミスが気が付いたので、空間収納から傷薬やさらに格上のポーション。スラ太郎はちぎれた部分が集合して何とか元通りになったので、眷属の中にいたヒールスライムなどを出してもらって治療してもらった。




 1時間後、ようやく全員回復した。


「あいたたた、あまりにもうるさい咆哮で墜落したのじゃ」

「シヌカトオモッタ・・・」

「再生できましたが、微妙に節々が・・・」

「(´・ω・)」

「拙者の刀は無事だったぜよが、服が・・・」


 見た目的にも困るので、ハクロに素早く全員の衣服を直してもらった。


「ともかく、状況整理だ」







「詳しく聞くと、その壺が怪しいな」

「そうなのじゃ、どうも大切なものだったらしくてのぅ」

「それが地上に落下して割れて、なんか三つ首のでっかい白い犬みたいなのがでて、吠えたんですよ」

「おそらく、衝撃波を含めた咆哮です」

「同時に、風の刃みたいなものも発生したようだぜよ」


 簡単にまとめると、その咆哮は衝撃波で周囲を吹き飛ばし、ついでにかまいたちみたいに切り裂く効果付きってことか・・・。


「ハクロの糸でできた服が切り裂けたから、かなりの威力だな・・・」


 アラクネの糸は鉄より頑丈だ。


 さらに、ハクロの糸は通常のアラクネの創り出す糸以上の強度だ。


 それがいともたやすく切り裂かれたのが驚きである。


「我らの肌はその程度のものでは切り裂けぬようじゃったが・・・」

「飛んできた破片などが痛かったですよね」


 そういや、ハクロたちってモンスターだから皮膚とかもそりゃ普通の人間よりも強いよな。


 だけど、破片にはとがったものなどが混じっていて、しかも衝撃波のせいで猛スピードで飛んできたようである。


 そのため、全員けがを負ったようなのであった。


「気絶したせいで、見失ってしまったわい」

「まだそんなに遠くへ入っていないと思うんですけどね・・・」


 あの夢の中に来て俺の精気を吸い取ろうとしたハーピーと、ハクロたちの話に出てきたそのハーピーに命令していた男も巻き込まれたようで行方不明である。


「近くにあった宿屋ごと巻き込まれたせいで、ファウストたちも見失ったか・・・」

「僕らならここにいるよ」

「!?」


 声がした方向には、仮面がひび割れているファウストがいた。その後ろには、メイド服がボロボロになったザイネと、なぜかドラム缶に入っているガイントの姿があった。


「お前らも無事だったのか」

「仮面にひびが入っちゃって、ちょっと残念だけど無事ですよ魔王様」

「というか、この二人さかさまになって埋もれていたので掘り起こしてきたんです」

「俺っちは服がないのでこうして隠しているんだYO!」


 とりあえず、三人ともハクロに服装を直してもらった。


「周囲の被害状況は最悪ですよ。半径12㎞ほどの建物が全壊、半壊して、死傷者が多く出ているようですよ」

「さらに、あの白い3つ首の怪物は咆哮した後に消滅しました。どうやら、その咆哮ですべての力を一気に使い切ってしまったようです」

「取りあえず、今はギルドの方が大慌てで対処している状況らしいYO!!」


 こいつら・・・短い間に情報を集めてきやがった。結構こういうところは有能か。


「しかし、姿を見ていないけど結局なんだったんだ?」


 全員で首をひねるも、わからない。ここまで被害を出して消えたって・・・。


「うみゅっ?」


 と、ライアが何か変な声を出した。


「どうしたライア?」

「なんかメッセージが届いたようだぜよ。人化解除して表示するぜよ」


 何かを受信したらしい。


 人化を解き、板の姿に戻るライア。そこにはある物が表示されていた。


『by世界の声:その怪物についての鑑定結果を送信いたします』


 世界の声さんどれだけ有能なんだよ・・・従魔のところの?ってこの世界の声のことか?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

名前:不明

種族:精神体

MP:鑑定不可能

ATK: 鑑定不可能

DF:鑑定不可能


スキル:「超・衝撃砲」

称号:「不完全な欲望の化身」


 「願いが叶う壺」に溜められ、とある願いをかなえるためにこれまで集められてきた精気が、いつの間にか集合して一つの精神体を生み出した。欲望を詰め込まれ、もはや破裂寸前の風船状態であった。

 壺が割れ、その中身として飛び出たのはいいが、体を形成して器となってしまい、耐え切れなくなり自らのすべてのエネルギーを放出した。そのため、すべて使ってしまったために消滅した。いわば一発限りの爆弾である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「つまり、エネルギー体みたいなものだったという事か」

「耐え切れなくて破裂したみたいな感じだっというわけですか・・・」

「要は自爆したということでいいのじゃな」

「スゴカッター」

「この『願いが叶う壺』とか胡散臭いですよね・・・」

「あ、これ魔道王国の魔道具だ」

「「「「「は?」」」」」


 ファウストのその発言に全員驚いた。


「たしか、失敗作とかで廃棄されたらしい魔道具の一つだったはずだよ」


 こいつ・・・魔道王国の重要機密とかそういうのも読んでいたな?



「だけど、1発限りだったということは、もう出ないという事か?」

「自爆兵器みたいな感じじゃったのぅ」


 とにもかくにも、周囲の被害は甚大なようであった。


ワポーン・・・悲惨な事しかなかったな。こんなことになるんだったらこの国に立ち寄らなければよかった。







後に、この事件はワポーンの歴史に残る「咆哮事件」として記録されることになった・・・・。

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