『夢の中で』
最近おもう。こういった話の主人公ってろくな目に合わないよなと。
本当は今日の昼頃に出国する予定であったが、ギルドマスターが死亡したごたごたのせいでハンコをどうのこうのとかいう話が遅れたようで明日の朝と言うことに先延ばしされた。
「なーんか、いやな予感がするからさっさとこの国から出たいんだけどな」
「ゼロ様がそう言う時って、必ずと言っていいほど的中しますもんね」
「魔王の衣の副作用かもしれないかもね。魔王の衣は魔王様の存在を保つための物。できるだけ危険とかを避けられるようなっているのかもしれないね」
「ファウストがそういうってことはその可能性があるよな・・・。いやな予感が確信になりそう」
とりあえず、宿をとって明日こそさっさとこの国から出て魔族の国へ向かうことにするのであった・・・。
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ゼロたちが寝ている深夜であった・・・・。
「いいでありますか?この時間帯なら確実に怪物殺し達は寝ているはずであります」
「・・・わかった」
その指示に従い、自らの身体を夢の中へと溶け込ませていくものがいた・・・・
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「・・・ん?何者かがご主人の夢に侵入しようとしている?」
同時刻、ぐっすり寝ていたカトレアだったがふと違和感を感じて目覚めた。
ほぼ忘れて居られているのだが、カトレアは以前宗教王国にて進化し、「ドリームドリアード」となっている。
宿で女性陣で寝ていた部屋から出て、ゼロが寝ているところへ向かった。
カトレアが部屋に入ると、布団をきているゼロは気持ちよさそうにすやすや寝ており、他にいたファウストたちもぐっすりと寝ていた。
だが、ゼロの様子をよく見ると目立たないようにしていたはずの「魔王の衣」が、自己主張しているかのようにはっきりとゼロの周囲を囲んでいた。
(魔王の衣は、確かゼロ様を守るために働くモノ・・・はっきりとしているということは、何かからゼロ様を守ろうとしている?)
カトレアは素早く判断した。ドリームドリアードの勘としては、夢の方に何かが仕掛けられようとしているのではないかと思った。
ゼロの隣に行き、そこに横たわる。そして、自らの木の根をゼロの周囲に張り巡らせた。
「『夢見の音楽』」
スキルを使用し、カトレアは自らをゼロの夢の中へと入りこませたのであった・・・・。
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「ん?」
ゼロはふと、何か違和感を感じた。目を開けてみると寝ていた宿なのだが・・・。
「現実・・・・と言うわけではないな」
すぐにここが夢の中だとゼロは理解した。
だって、今この部屋にいるのが俺一人だけになっているし、明かりが紫っぽくなっているからな。
体の感覚も違和感しかない。
だが、ここが夢だとわかるが、なんかイヤにはっきりしているのはなぜだ?
いやな予感にとらわれていると、夢の中なのだが部屋のドアが開いた。
「・・・初めまして」
入ってきたのは、黒い翼を両手に生やした女の子だった。翼を両手に持っているのはハーピーで、それが黒いってことは・・・・。
「黒い翼・・・『黒翼のハーピー』か!?」
慌てて後ろに下がって警戒する。夢の中だというのにいやな汗が背中に流れる。
「何が目的だ・・・?」
「・・・本当はしたくない感じだけど、あなたの精気を吸い取るの」
そう言って近づいてくる。なんかやる気がなさそうだけど、結構整っている顔だな・・・ってそんな考えしている場合じゃない!!精気を吸い取るってことは・・・
「お前がギルドマスターなどを殺した犯人か!!」
干からびさせられてはたまらないと思い、戦闘態勢をとる。
「『ファイ、」
「・・・キャンセル」
バチィッ!!
「何!?」
魔法を使おうとしたら、強制的に止めさせられただと!?
「・・・ここは夢の中。つまり、私の領域。この夢では私の方が優先権がある」
「ちっ、ならば三十六計逃げるに如か、」
「・・・逃がさない」
「ぐっ!?」
夢の中とはいえ、体は動いているので逃げようとしたら体が硬直して動けなくなった。
「・・・ここはさっきも言ったけど、私の領域。私意外には干渉はできないよ」
「ぬぅ・・・」
体を何とか動かそうとするが、その場から動けない。それに全身を硬直されたせいか、口まで硬直したらしく、声がうまく出せない。
「・・・それじゃあ、さっさとやるね」
じわりじわりと、黒翼のハーピーが迫ってくる。逃げたくても足が動かない。
夢の中だとあっちのほうに主導権があるようで、魔王の衣も出せない。
って、意外にも身長が高かったようで、顔が俺の目の前まで来た。胸がハーピーにしてはあるようで、押し付けられてくる。
「ぎっ・・・」
「・・・いただきます」
そういって、顔が近づいて来た時であった。
ひゅん
「ん?」
何かが飛んできて、ハーピーの腰に巻き付いた。
「・・・これ何?」
と、その瞬間ハーピーの身体がその巻き付いてきたものに引っ張られ、後方に投げられた。そのまま後ろに向かっていき、頭から押し入れにつっこんだ。
「ご主人!ご無事ですか!?」
「か、カトレア!?」
体が動けるようになり、その飛んできたモノの先の方を見ると、カトレアがいた。
どうやらさっきのは彼女の木の根の一部だったようである。
「・・・なんで夢の中に侵入できているの?」
あまりダメージを受けていない様子で、ハーピーは押し入れから出てきて、カトレアの方へ向いた。
「私はドリームドリアード、夢に関してはこちらの方が上なのですよ」
うん、完全に忘れていたよそのこと。なんかごめん・・・・。でも助かった。
「何となく、違和感を感じてご主人の夢の中に入ってみたのですが、まさか危うくご主人の精気を抜かれかけていたとは・・・」
「・・・ちょっと分が悪いかも。ここは一時撤退するね」
そういい、ハーピーの姿が消えた。
「そうはさせませんよ」
と、カトレアの姿も消えた。
そして、夢の世界に残されたのは俺一人になった・・・・。え、おいてかれた?いや、夢の中から覚めたのか?
さっさと起きないといけない感じだけど、夢と分かっている空間からどうやって起きればいいんだろう・・・。
ワポーンはそろそろ出国できそうかな?まだ数話ほどかかるけど
 




