『ワポーンに寄り道2』
通信障害きつい。
Ddos攻撃とかの可能性があるし、迷惑な話だよ・・・・。
ワポーンの宿屋にて一泊した後、俺たちはデジィマにて出国手続きをしていた。
が、ちょっとなにやら問題があったらしく、責任者のハンコを押してもらって手続きが完了するのだが、その責任者が今日はまだ来ていないという事らしい。
「だったら誰か代理でやったほうがいいと思うんだけどな」
そう思ったが、ハンコは責任者が持っているらしく、その人が来るまで少し待つことにした。
まあ、このワポーンは入国には簡単だが、出国には厳しいようだしな。
この出国管理署とかいうところには、こういったことのために待合室があるので、そこで待つことに。
ここの責任者は確実に決まった時間までには来るそうで、勤務態度は一応まじめらしい。
「責任者なのに、部下の人に一応なんていわれているとねぇ」
「時々、『切り捨てゴゥミンネ』とかいうようなことが起きる以外は平和な国の様ですけどね」
「・・・それ平和か?」
なんでも昔、王国で言うところの貴族のような立場である「貴名」とかいう立場の人が、武器屋とかで刀を買って路上で通行人に対して「切り捨てゴゥミンネ」といって斬りかかれば罪にはならなかったという風習があったようである。
現在ではその風習は完全禁止されて、そんなことをやらかせば死刑になるそうだ。
ただ、それでも頭が古い人たちが極稀にそのようなことをするらしい。教育が行き届いていないのが原因とか。
「特に、田舎で風習が根強いところとかはそうらしいよ」
「愚かなバカもいるんだYO!!」
お前らも人のこと言えないけどな。黒魔石で騒ぎ起こしてきているだろ。
と、ファウストたちに対して心の中でツッコミを入れていた時であった。
「てぇへんだ!!てぇへんだ!!てぇへんだ!!」
何やらあたりが騒がしくなった。
「何かあったのか?」
「なんか妙に騒がしくなってますよね」
何か事件でも起きたのか?
「あ!!出国待ちのゼロさんとその他の方々ですよね!!」
先ほどの受付にて対応してくれたここの人が来た。
「何かあったのですか?」
「大変なんです!!あなた方の出国にハンコを押す責任者の方が・・・・!!」
「・・・うわぁ、これはひどいな」
「なんというか・・・」
「わいせつ陳列罪ってやつになるのかな?」
その罪この世界でもあるのか。いや、そうじゃなくて。
受付の人に案内されて向かった先にいたのは物凄い野次馬の人たちがいて、その先にいたのはハンコを押してもらう予定の責任者の方だった死体であった。
普通の人間の男性のようだが、服を着ておらず、体中が骨と皮ばかりまでに干からび、髪の毛は抜け落ちたのか剥げていた。
「ハゲは元からなんですけど、昨日会った時はまだ元気だったんですよ」
そこは関係ないのか。何気にひどいことも言っているし。
「見事に干からびておるのぅ」
「からっからですね」
「ペラペラー」
見事に干からびているよな・・・・・まるで体中の水分が抜かれたような。
「出国予定のゼロさんとそのほかの方々ですね?」
先ほどの受付の人がどこかに行ったと思ったら、誰かを連れてきた。
「あー、はい、そうですけど」
「初めまして、某このあたりの担当ギルドマスターの御羅衛門と申す者である」
ちょっと中年体形の、眼鏡をかけ和服を着て落ち武者のような髪形の小太りなおっさんである。話し方がブレブレなひとだな・・・・。
ちなみに、このワポーンではギルドが警察のような役割をするそうだ。
「今回、こいつがゼロさんたちの出国ハンコを押す責任者であったが、このような事態になって、出国が遅れてしまうことをお詫び申し上げる」
深々と頭を下げる御羅衛門さん。
「あの、それより出国はどうなるでしょうか?」
「本来であればこの者がハンコを押して出国ができたのであるが・・・」
御羅衛門さんの視線の先には干からびた死体が。
「あのような状態になってしまい、しかも出国用のハンコまで紛失してしまったのである」
「代わりのハンコとか押してもらえませんかね?」
「いや、この国の出国にはそのハンコがどうしてもいるのである。そうでなければ密出国の罪になるのである」
ワポーンは出国の方は厳しくしているらしい。そのため、勝手に出ていけないようである。
「代わりのハンコを注文したのであるが、完成し届くのに明日の昼までかかるようなのである」
「明日の昼までですか・・・」
まあ、急ぎ旅というわけでもないしな・・・。明日の昼までならまあいいか。
「それなら別にかまいません。人がいつ突然死するかは誰にもわかりませんし」
というか、こんな事件予想できないもんな。干からびた死体が出るって・・・。
「ご理解感謝するのである。ただ、今のところこの事件は不明なところが多いのである。そのため、明日の出国まで警戒しておくように注意も喚起するのである」
そういうと、御羅衛門さんはあわただしく他のところに対応しに行った。
「にしても、滞在延期かのぅ・・」
「こういった事件はここのギルドの方々に任せた方がいいですもんね」
「お前ら黒魔石で事件起こしたわけじゃないよな?」
ファウストたちの方を俺はジト目で睨んだ。こんな奇妙奇天烈摩訶不思議のような事件ってこいつらが関わった可能性が0じゃないからな。
「いやいやいや、僕らはこの国では黒魔石の受け渡しなどはしていないよ!!」
「手持ちには黒魔石がないですし」
「濡れ衣だYO!!」
必死になって弁解しているところを見ると違うようである。
まあ、下手にこういう事件に関わらない方がいいな。ろくな目に合わないのが経験上知っているもん。
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デジィマのとある路地裏に2つの影があった。
「完了であります。このまま完成までに残り5~6人ほどの分だけ精気を吸い取っていくのであります」
「・・・なんかイヤだ。不味い」
「まあ、あんなおっさんの精気は確かにまずそうでありますな。だけど、この国を乗っ取るという吾輩の目的のためには精気を集める必要性があるのでありますよ」
「・・・でも、僕としては今あそこに見える何かまとっているように見える人・・・・人?の精気の方がおいしそうに見えるんだけど」
「やめておいた方がいいでありますよ。あれはあの近くにいる従魔らしきモンスターを見る限り、おそらく『怪物殺し』というSランク冒険者。吾輩たちがぶちのめされる未来しか見えないであります」
ゼロの従魔・・・ハクロたちの特徴から、怪物殺しだとその一人は判断した。せっかくここまでできるだえ目立たぬように計画を進めて来たのに、まさかこの国に来ているとは思わなかったのである。
「・・・残念。でも、従魔としてついていきたくなるような気がする。精気おいしそうだし、なんか惹かれる」
「いやいや、ここは父親である吾輩の言うことを黙って聞いておくほうがいいでありますよ?」
「・・・・でも」
「黙って聞いておくのがいいでありますよ。誰がお前を孵化させたと思っているのでありますか?そして今もしっかりと生娘でいられるのは?」
「・・・・わかった」
こめかみに青白い血管が浮かんだのを見て、反論しようとしたモノはやめた。
「とにかく、怪物殺しだとすると少々メンドクサイでありますな。ここでお前に一気に精気を吸わせて殺してしまうのが安全かもしれないでありますが、あの従魔たちに感づかれる可能性が大きいであります」
「・・・どうするの?」
「ここは、あの怪物殺しの精気を狙うのはリスクがでかいからやめて、まずはこの事件の捜査責任のギルドマスターを狙うのがいいでありますよ」
「・・・脂肪が詰まっていそうでまずそう」
「まあまあ、せっかくハーピーとサキュバス両方の特性を持って生まれてきたのだし、今夜にでも夢の中でやせた姿にでもさせて、それで吸えばいいでありますよ」
「・・・起きていたら?」
「空から強襲してがぷっと」
「・・・・いろいろ文句あるけどわかったよお父さん・・・」
そういうと、ターゲットであるギルドマスターを確認し直すために、それは黒い翼を羽ばたかせて、誰にも気が疲れないように羽音を立てずに空に飛んでいった・・・・。
「さてと、あいつが精気を吸収しているうちに、こちらはとれたての精気を圧縮するでありますか」
そういうと、残されたその人物はそそくさとその場を去っていったのであった・・・・・・・・。
あ、これ巻き込まれていますな。
こういう小説とかの主人公って、どこかの頭は大人・体は子供の人みたいに事件に出会うよね。
事件の遭遇率は負けるけど。




