SIDE ゼロ&???
前話の最中のゼロの様子
「・・・ん?」
ゼロが気がついたのは、どこか真っ暗な空間だった。
自分が落とし穴のようなものに落とされたことは覚えている。
だが、辺りが真っ暗すぎてどっちが上だか下だかわかりづらい。
「というか、地面の感触もないな・・・」
動きにくいし、例えで言うなら水の中にいるかのような感覚だ。
しかし、息は普通にできるし水の中ではない。
だが、ものすごく気持ち悪くなるかのような感じが周囲にある。
先ほどの吐き気のときのような・・・いや、それ以上か。
「灯りが欲しいな・・・『ライト』」
かなり簡単な、初級の明かりを灯す魔法を唱える。
手に光が灯され・・・ん?
「あれ?」
魔法が発動しない。試しに他の明かりがとれる魔法を唱えたが、どれも発動せずあたりを照らせない。
「・・・どうなっているんだ?」
「それはこっちのセリフだよ」
いきなり声が聞こえたので、その声がした方を見ると・・・
「・・・俺?」
真っ暗なのに、はっきりとした姿の人物がいたが、その姿はまるでゼロそっくりであった。
髪、目、顔、体つき・・・違うとしたら、その人物はこの真っ暗な空間でも黒いと感じさせる衣を着ていたというぐらいか。
「『俺』と言うのは間違っていない。私はお前でもあり、お前は私でもあるのだからな」
なんとなくむかつく言い方だが、すんなりと納得できる感覚があった。
「そうだな・・・私は魔王と呼ばれていた者だとも言えばわかるかな?」
「魔王・・・つまり、さっきの言い方からして俺はあんたの生まれ変わりみたいなものか?」
「間違ってもいないし、間違ってもいる。生まれ変わりという言い方では0点だ」
なんか難しく言っているようで、そうでもないような。
「まあ、私は魔王でお前は私の死後にできた存在だ。正確にいうとその時点でかなり違う。だが、理解するには死んだほうがわかると思うが・・・死んでみるかい?」
「死んでたまるか‼︎」
明らかにいたずら顔でそういった魔王にツッコミを入れたが、とりあえず今の言葉から俺は死んでいないことがわかった。
「ま、私がこうしてお前の心を守っているから死なないんだけどね?」
「・・・つまり、今のこの状態は精神だけの存在みたいなものだと?」
「そ、今お前の体は物凄い負のエネルギーの中に入れられているからね。こうしなかったら今頃心が死んでいたよ」
黒魔石によって引き起こされた騒動で発生した負のエネルギーを貯めているとか言っていな・・・その中に入れられたのか?
「・・・とりあえず礼を言っておくよ。だけど、なんで俺がその中に入れられた?」
「ぶっちゃけ私を復活させたいようだけどね、彼らは勘違いしているよ」
勘違い?
「私は死んだ。そして今君の魂となっている。死んだ直後ならできるけど、生まれ変わった後は不可能さ。私がこうして君と話をできているのも、その魂の中の私という残っていた部分が少し目覚めただけなんだよ。」
「ということは、ファウストたちがやってきたことは無意味なことになるのか?」
「いや、無意味ではないよ。私という存在が復活はできないけど、魔王の衣はリニューアルして君の衣となる。魔王の衣は私を守ってきた衣、それが君に受け継がれるからね」
つまり、魔王復活はムリだが俺に魔王の衣がつくということか。
と、だんだん魔王の姿が薄れ始めた。
「あー、時間切れか。私がこうして語りかけられるのは今回切りだ。多分。お前はもう目覚めて、その時には魔王の衣をまとっているよ」
「いらないんだが・・・というか、それだと俺が魔王になると言うことになるのか?」
「そうだね、新たな魔王としてなるね。鑑定で改めて自身を鑑定してごらん・・・そうだ、ついでに私の記憶を渡しておくよ」
そう魔王が言うと、手を俺の頭にかざし、何か一瞬見えたがすぐに消えた。
「これでよし、今の記憶は思い出したい時に思い出せるからね」
「記憶の混濁を避けて、そういうふうにしたのか」
「だって、私の記憶は多いもん」
試しに少し見ると、楽しかった記憶から辛かった記憶までみれた。
「あ、もう無理かな・・・わずかな間だったけど楽しかったよ・・・そうだ、ついでに邪龍帝に伝言を頼めるかな・・・」
「なんて言えばいいんだ?」
「先に逝ってごめんねと」
そして、魔王の姿は消えた。
再び意識が沈み、戻った時には現実に戻れていたようである。
体には特に変化はなかったが、俺はあの魔王のような衣をまとっていた・・・。
要は中途半端な魔王復活とも言える
まだまだ続く




