『邪龍帝の昔話』
閑話:昔話
の邪龍帝視点です。
はるか昔、魔王と呼ばれる人がいました。
その者は人間でありながらも強大な魔力を持ち、その力と、彼の人柄に引かれて次々と様々な生き物が集まっていきました。
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「その話、長くなるのか?」
邪龍帝が話し始めたが、物凄く長くなりそうな予感がした。
「いいえ、そこまで長い話ではありませんよ。・・・話を続けますね」
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彼は、その強大な力を持ちながらも、たまに人々の手助けのためにその力をふるう程度で、その力を別に誇示したりせずに穏やかに過ごしていました。
そして、その彼の心と力に引かれた者たちが集まり、国を作っていきました。
また、彼に自然としたがう魔物が出てきて、彼の従魔となったりもしていきました。
彼は魔王と呼ばれるようになっていきましたが、それでも従魔たちは彼に仕えました。
従魔の中には、彼に恋心をいだきはじめました。
ですが、彼は人間。モンスターである従魔を受け入れてくれるとは到底思えませんでした。
また、モンスターの中にはオークのような人間などを使用して繁殖したりする種族もいますが、それで生まれる子供もモンスターです。
つまり、彼と子を成しても自分たちと同じようなモンスターが生まれてしまい、モンスターは大抵は人々を襲いますから、その子が彼に危害を加える可能性があったので誰も彼になかなか一歩も踏み出せませんでした。
ですが、皆が見守る中とある従魔が彼に告白し、彼はその告白を受け入れてその従魔と契りを結び、子供ができました。
ですが、生まれた子供は不思議なことにモンスターでもなく、人間でもない全く別の種族として生まれてきました。
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「・・・それが、僕ら魔族のルーツとも言われているのさ」
そういえば魔族の特徴は見た目がほぼ人間で、魔法などを使う際に姿が変わる種族。角が生えたり、腕が増えたりするらしいんだっけな。その特徴がモンスターによるものなら納得できる。
・・・って、それなら魔王って魔族全体のお爺ちゃんとかご先祖とか言えるのでは。
「母親と同じモンスターとしては生まれなかったという事かのぅ?」
「全く違う種族でしたよ」
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全く違う種族として生まれてきた子供を、人々は「魔族」と呼ぶようになりました。
そして、その一部始終を見ていた他の従魔たちも我先にと彼に告白していきました。
彼は純粋に皆が大好きだったので、全員受け入れ、次々と様々なな魔族が生まれ、次第に彼が納めていた国は魔族だけになりました。
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と、そこで邪龍帝が一旦話を止めた。
「私も彼に告白して結ばれたんですよね・・・・・。ですが、どういうわけか全く子供ができなくて」
物凄く落ち込んでいるようである。
「まあ、彼に愛されたのはいい思い出ですけど、子供が本当に欲しかったなぁ・・・・」
自分で話しておいて落ち込むって・・・。
「って、魔族だけしか生まれなかったのか?」
「まあ、そのうち他の亜人の種族の中から魔族と呼ばれるようになったものが混じっていたからねぇ・・・」
「皆が魔王の血縁というわけではないようです。私も元は人間でしたが、いろいろあって魔族となっていますし」
今さらっと何かすごいこと言わなかったか?
「まだ話しますよ」
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魔族が増えると同時に、魔族を毛嫌いする人たちが増えていきました。
彼は皆が仲良く平和に暮らせるように働き始めました。
しかし、人間のある国が勇者召喚とやらをし、その勇者とその呼び出した国が腐っていたため、彼は念のために一旦人々と縁を切り、国そのものを別の場所に転移させて、その勇者召喚した国を避けて他の国々と魔族の差別や迫害を除くために活動しました。
その活動の際に、様々な負の感情が彼にまとわりついていきましたが、いつしかその負の感情は魔王の衣へと変化し、彼を守るようになりました。
彼は人間だったのですが、その衣のおかげで長い時を生きることができました。
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「・・・そこまでは本当に私たちは幸せだったんですよ。彼は人間だったけど、私たちのように長い時を一緒に暮らせましたから」
邪龍帝がどこか昔を思い出して楽しかった時のことを思い浮かべたような表情をした。
というか、魔王の度量物凄いな。
「ですが!!」
邪龍帝がいきなりものすごく怒りの表情を見せた。
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彼には弟がいました。その弟は魔王の様に長生きすることが目的の研究をしていました。
ですが、何を思ったのかこの弟は彼を毒殺し、魔王の衣を奪おうとしました。
ですが、衣は彼とともにあったので、彼が死ぬとと同時に消え去りました。
この毒殺の話は、この腐れ弟の日記を見つけて分かったのです。
ですが、この時にいた従魔はほかの国々に彼と同じように活動していて、私も同じように彼のもとを離れていたため、その最後には会えませんでした。
悲しみました。それはもう、湖が一つできるぐらいの涙を流して。
そして、その彼の弟はあろうことか魔王を名乗り、国を乗っ取ろうとしました。
ですが、愚かなことに、自分の力量を全く分かっていなかったのか、ある日ドラゴンに食い殺されました。
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「・・・で、そのドラゴンがゼロの従魔、アルテミスだというところにはたどり着いているの。彼を殺した奴を殺してくれてありがとう」
深々と邪龍帝はアルテミスにお辞儀した。
「あの魔王を名乗るやつがそやつじゃったか・・・・・。味がひどかったのう」
ここで話したいことを終えたのか、邪龍帝はファウストの後ろの方に下がった。
そして、今度はファウストが前にでた。
「でだ、ここからは僕が、」
「めんどくさいのでこの場で縛り上げていいか?」
長話はもう十分なんだが。そもそもこいつら魔王復活とか言っているけどこちとら物凄く迷惑をこうむっているのだが。
「いやいや、それはよしてくれ」
「それじゃ、5・7・5でまとめろ」
「無茶ぶりすぎないかい!?」
「いやだってね、邪龍帝の話が恋バナみたいな感じだったからもう十分だもん。メンドクサイ」
「ま、魔王復活のこれまでの涙なしでは聞けないような話もあるのに!?」
「もういいからまとめろ」
「ふっかつに・ひつようなもの・そろったよ」
「「「まとめた!?」」」
「と言うか、抽象的過ぎて分かりにくいわ!!」
「負のちから・ためてまぜてね・きみ投下」
「へ?」
そういい終わると、ファウストはなにかをぽちっと押し、その瞬間俺の足元の地面が消え去り、俺は落とされてそこで意識が途切れたのであった・・・・。
流石にいきなりすぎて対応ができなかったよ・・・・・。
落とし穴?




