閑話 忘れられているであろうあの人
ちょっと忘れ去られている人発見したので・・・。
「なぜだ・・・なぜなんだ・・・・」
その男は自問自答する。しかし、その答えをいえる者はいなかった。
「なぜ、俺はこんなにも皆に臭いと言われるんだーーーーー!!」
その男、アンネルはそう叫んだ。
彼は生まれ持って臭っていた。
人の近くを通るたびに「クサイ」と言われ続けた。
だが、彼は今までそのことをあまり気にしてはいなかった。その臭いのおかげでこれまでモンスターが彼によってくることもなく、かなり平和に暮らせていた。また、その臭いの才能を逆に利用して冒険者となって護衛などで稼いでいたこともあった。
そして、引退し人々を王都まで運ぶ馬車の仕事を始めた。
後に怪物殺しという異名をもつ少年をのせたことだってある。
だが、年を追うごとに彼の臭いは次第に強烈になっていった。
「歩く孵卵臭」、「ヘドロ臭」、「加齢臭」などというあだ名が彼につき、その臭いで有名になっていったが、彼の場所を利用しようとする人は減っていき、ついには誰も乗らなくなってしまった。
そのため、アンネルは馬車を売り払い仕事を辞めた。
そして、己の臭いを消し去る方法を探し求めた。
野を越え、山を越え、谷を越え、時には国を越え、海を越え、空を越え。
様々な場所に行き、それで探し求めていく。
その旅の中でアンネルは恋をした。
その女性はアンネルの臭いを気にすることなく一緒にいてくれた。
だが、アンネルと一緒にいると彼女にまで臭いが移ってしまうかもしれない。
自身が愛し始めた女性にそんな臭いをつけさせぬため、彼は臭いを消す方法を追い求めた。
「・・・その執念でここまでたどり着いたというのか。凄まじいな・・・」
「はい、どうかお願いいたします!!」
アンネルはついに、臭いを完全に消せる方法にたどり着いた。
「私は聖龍帝だが、あくまで聖属性の頂点なため、貴公の臭いを完全に消せるとは言えないが・・・それでもいいのか?」
「臭いが消えればいいのだ!!俺が愛した女に臭いをつけないようにするためにも!!」
今、アンネルは聖龍帝が住むと言われているとある場所にまでたどり着いていた。
聖龍帝は聖属性のドラゴンの頂点。
聖属性はいわば清めることに長けた属性。それならばアンネルの臭いを清めて消し去ることができるのではないだろうかと最終的に彼がたどり着いた結論であった。
ここまでくるには幾多の困難があり、彼自身かなりボロボロだ。
だが、自分の臭いを消せるならばそれで良かったのである。
「その心意気やよし!!では、行くぞ!!」
聖龍帝はアンネルのその意志の強さを感じ、できるだけ消せるように使える限りの力を尽くした・・・。
そして現在、彼は聖属性の多量摂取により臭いが消え去り、その副作用として聖人と化し、今は愛する妻と共に人々の救済のために諸国を旅して回っているのであった・・・・・。
人々は彼をこう呼ぶ。「聖人君子のアンネル」と・・・・・
Nコード:N6505DM
「聖剣と魔剣に選ばれてしまった俺はどうしたらいいのだろうか? 」
新連載です。まあ、そこまで面白いかはわかりませんが、こちらも興味があれば読んでみてください。タイトル変更する可能性がありますが。
あ、この話もまだまだ続きますよ。