閑話 副産物による影響
副産物というか、残り物というか
舞踏会での襲撃の後、少々問題になったことがあった。
「黒魔石の破片か・・・」
量産された黒魔石で、さらに劣化した状態で破片となっているため、オリジナルの黒魔石ほどの危険性はないようである。しかし、これまで数々の事件を引き起こしてきたことからそう簡単に気を抜けるもので
はない。
また、今回の事件からよからぬ人がこれをさらに複製・量産して似たようなことを引き起こしかねなかったので全部回収したのだが・・・・・。
「そうやって処理するかが問題ですよねー」
モンスター化をさせる効果もあるので、下手に火で燃やしたりしたら火のモンスターになるかもしれない危険性があるのだ。そのため、これまでの黒魔石による騒動に対応してきた俺が引き取ったのだが・・・何分処理が厄介である。
「カトレア、この破片を圧縮したりできないか?」
「できると思いますが・・・どうするのですか?」
「できるだけ小さく圧縮して、アルテミスに物凄い高い高度から勢いよく夜空の星へ投げてもらう」
宇宙空間に投げてしまえば一応解決だ。
ちなみに昔、アルテミスは夜空に光る星まで飛んでみようかと思って試したことがあるそうだが、ムリだったそうである。だが、そのギリギリの高度から勢いよく投げれば大気圏を圧縮黒魔石が突破できるはずだ。
まあ、落ちてきても摩擦熱で燃え尽きそうだが。
「あの高度はきついんじゃよ・・・・」
なお、常人なら死ねるそうな。
というわけで、黒魔石の破片圧縮タイム!
「黒魔石の圧縮ですが、物凄い高圧と高熱をかけながらやるため、家の地下室の作業場にて行います」
その製法だとダイヤモンドが作れそう・・・・。この世界のダイヤの価値はほかの宝石や鉱石に比べるとあまり高くはないそうだが。魔道具で同じようなのが量産できるのが原因らしい。
市場の需要と供給のバランスを崩してしまったらしく、何とか他の宝石並みの価値に戻ったものの、いまだに昔の高級品までには戻れていないそうな。
なお、カトレアの場合はゴーレムでやるつもりのようだが・・・・。
何やら重々しい黒光りする箱に全部の破片を入れた。
「では、圧縮を開始いたします」
カトレアがその箱に合ったボタンを操作して数分後・・・・。
「完了いたしました」
「早っ」
出てきたのは色が薄く、BB弾ほどのサイズになった黒魔石だった。
「かなり圧縮されているな・・・」
「ちょっと投げにくいかのぅ・・」
小さすぎるな・・・。アルテミスがドラゴン化したらこれつかんで投げれるかな?指の隙間から零れ落ちそうなんだけど・・・・。
ピカッツ!!
と、いきなり圧縮された黒魔石が光った。
「なんだ!?」
そのまま浮かんだかと思うと、そのままどこかへ向かって飛んでいった。
「・・・なんだったんだ今の?」
「わかりません。何せ圧縮したのでその分力も圧縮されているのではないかと・・・」
とりあえず、追いかける。何かを怪物化されても困るからな。
地下室から出て、上に出るとワゼが何やら慌てた様子で走ってきた。
「マスター!!大変デス!」
「どうしたんだ?」
「とにかく来てくだサイ!!」
ワゼに引っ張られて向かった部屋にはいると・・・・
「ぜよ~~~~~」
・・・目を回してぶっ倒れている人がいた。額に何やらでかいたんこぶができている。近くにはリーゼが何やら慌てている様子で濡らしたタオルをその人のたんこぶにかけていた。
「え?誰だこの人?」
こんな人いなかったと思うんだが・・・・。
見た目は165㎝ぐらい。来ている服は、昔の侍が着ているようなやや青みがかかった着物が上で、下には紺色の袴。ただし、若干肩のあたりが脱げていてさらしが少し見える。顔はやや整っている感じで、女性のような感じ。髪は黒のポニーテールか。かなり長くて腰辺りまであるけど。
腰には木刀のようなものが刺さっており、女剣士のように見えた。
「ライアデス・・・・」
「「「「は?」」」」
ワゼが何やら頭をを抱えるようにそう言った。
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時間は数分前に遡る。
『暇ぜよ』
「(´・ω・)」
「でしたら家事を手伝ってくれませんカ?」
ライア、リーゼは暇なように辺りをぐるぐるしていた。なお、ライアはこの時板の姿なので実際はリーゼが胸元に抱えているのだが。
ワゼは洗濯物をたたんでいた。全員分の衣服と下着をたたむのはかなりの作業だが、ワゼにとっておちゃのこさいさいなのである。だが、できれば空いている手を使って手伝ってほしいとは思っているのであった。シルキーやカトレア製ゴーレムを統率してはいるが。
『拙者たちが家事に役立たずなのはわかるぜよな?』
「(*‘∀‘)」
ライアは板なので手があるわけがない。リーゼは手があるのだが、実は常に表面が少し湿っているので洗濯物が湿ってしまうのである。
あと、他の家事にほとんど向いていない。歌はうまいのだが、少し不器用であった。
「はあ・・・そうでしたネ」
一応魔道具なので息をする必要はないのだが、ため息をつくワゼであった。
「大体、あなたが人化の術とやらを使えれば可能デショウ」
『拙者自身にもどうやって使えばわからぬものをつかえるわけがないぜよが!!』
そうライアの心からの叫びが表示された時(文字を表示して意志を伝えているから)だった。
がぁぁぁぁぁぁん!!
『いたぁぁぁぁぁぁっ!!」
「!?」
「Σ(・□・;)」
何かが飛んできてライアに直撃すると同時に煙が立ち、悲鳴が聞こえた。
そして、すぐに煙がはれると同時に、そこには人の姿になったライアがあったのであった・・・。
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「なるほど、ライアだとすぐにわかったのはその魔力と気配が全く同じだったからか」
「ハイ、ですのですぐにマスターを呼んだのデス」
そりゃ板がいきなり人の姿になったら驚くよな。
「そのぶつかったものってたぶんさっきの圧縮した黒魔石かな・・・?」
「まだじんじんするぜよ・・・」
ライアは涙目でたんこぶをさすった。だいぶ小さくなっているな。
「おそらくじゃが、ライアはもともとは黒魔石から生まれたモンスターじゃ。あの圧縮した欠片の力がお主に人化できるだけの影響を及ぼしたのではないじゃろうか?」
そういえば、ライアのもとのモンスターって黒魔石の影響を受けて生まれた屋敷型モンスターだったよな・・・・。
量産黒魔石の破片を圧縮したものが、圧縮されて力が高まって、黒魔石から生まれたといってもいいライアに力を与えたのだろうか?
とにもかくにも、思わぬ影響であった。
「・・・ところで、これどうやって人化を解くのぜよ?」
「人化を解きたいと思えばいいのじゃ」
「いや、解けないんだがぜよ・・・・」
「・・・・精神が足らぬのではないか?」
どうやら精神に影響しているようなので、アルテミスがライアをそのまま地下の模擬戦用に作った特訓場に引きずっていった。
数時間後・・・・・、ボロボロになったライアがちゃんと人化をコントロールできるようになっていた。
着物があちこち破け、さらしがちぎれて緩んだのか胸が出ているが。さらしで押さえつけらえていたからわからなかったけど大体カトレア以下だけどおおきいですね・・・・。どこがとは言わないけど。
とにもかくにも、今回の騒動の副産物による影響はライアに人化というものを与えたのであった。
後日談
人化して女剣士の姿でギルドに見られるようになったライアには、剣術指導をしてあげるからという男たちが群がってきたが、全員ライアと試しに剣で対戦してみるとあっという間にみねうちで倒されていき、剣豪の人たちに注目されるようになったのであった。
なお、人気は板の時に比べると一気に高まった模様。単純だなぁ・・・。
次回から新章ですよ。ややシリアスを増やすか、減らして明るい感じにするか?