『舞踏会:前編』
珍しくこういう分け方。慣れないけどね。
舞踏会の時間となり、警備から一時離れて参加することになった。
俺の服装はタキシードだが、ハクロの糸で鎧以上の硬度を持っていた。アラクネの糸は本当にすごいな・・・。
「旦那様、どうですか」
「うん、よく似合っているよ」
ローズが見せてきたドレスは白を基調としたシンプルだけど綺麗なドレスであった。こちらもハクロの糸で強化されているので実はかなりすごいんだよね・・・・。
ローズの安全性を高めているけどな、国王やその他の人たちがきている物は普通の繊維でできているものだからな。ひいきだとおもうか?俺はできるだけ大事な人たちから守りたいからな。
ハクロたちは今回会場にはいない。今回はクーデターの警戒のために全員会場の外に行ってもらっているからな。
外部からの襲撃はこれで防げる。
内部、つまり会場から襲撃があった場合には魔法があるからまだ何とかなるだろう。
念のため、タキシードの下にはカトレア特製「緊急用7つ道具」とかいうのを渡されているしな。最近カトレアがあの便利なポケットを持つ奴のように思えてくるほどだよ。秘密道具じゃないけどな。
そうこうしているうちに、舞踏会が始まった。
音楽が流れ、それに合わせて踊っていく人が出始める。
現在、この会場には多数の貴族もいる。その中にデップリンとかいうクーデターを起こすであろう人物もいるのだが・・・。
今のところ怪しい動作はしていない模様。立食して他の貴族と話しているな。
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『こちらハクロ、今のところ異常なしです』
「了解、主殿の指示、もしくは異常があるまで現状維持するのじゃ」
以前、帝国との戦争の際に使用した「通信専用スライム(思念波タイプ)」を用いて、アルテミスたちは互いに連絡を取り合っていた。
ちなみに、リーゼとの会話に使えないかと思ったがなぜかできなかったのでそれい合いほとんど使ってなかったが・・・。
「やっぱこういうときに便利じゃよな」
アルテミスは手元にいるそのスライムを持ってしみじみとつぶやいた。
「くええつ?」
「きゅうう?」
「こらこら、こやつは大事な物じゃから」
アルテミスの周りには、すっかり懐いてしまったウォンとランスロの二匹が飛んでいた。
アルテミスをまるで母親のように感じてしまい、今回の舞踏会で出すのは少し時期尚早かと思われたが、ずっと第1王子たちの従魔用空間に入れておくのも可哀想だったので以外にも面倒見が良いアルテミスに子守りをゼロが頼んだのである。
一応、第1王子たちの従魔なので丁寧に扱うが、アルテミスとしては我が子のように可愛く思えた。ドラゴンはもともとそんなにいないのでこうして同族と触れ合えるのは彼女にとっても癒しだったのである。
ただし、氷龍帝は嫌いである。ゼロと既成事実を作ってやろうとした罪は許せないのであった。ちなみに、それはゼロの従魔全員度いように思っていることでもあった。
「しかし・・・平和じゃな。このまま何もなければいいのじゃが・・・」
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『イジョウナシダヨー』
「わかりました」
カトレアは別の場所で警備をしていた。念のため彼女は最新作のゴーレムたちで武装していた。
カトレア自身も戦えないことはないが、そこまで戦闘が得意というわけでもないのでこうしてゴーレムたちによって身を守っているのである。
「・・・黒魔石のゴーレムですか」
カトレアは思う。自分もゴーレムを作るものとしてはできれば黒魔石を組み込んだゴーレムとやらを作ったという技術者とは、敵でなかったらゴーレムに関しての会話をしたかったと。
黒魔石がどれだけやばい代物かは彼女自身よくわかる。だが、やはり興味をそそられてしまうのであった。
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『暇だぜよー』
「あなたは戦えませんもんネ」
「( 一一)」
一方、ゼロの自宅では今回の警備に関してはほとんど役に立たないため置き去りにされたライアとリーゼ、こっちにもしかしたら襲撃をかけられるかもしれないということでエネルギー満タンのワゼが仲良く会話していた。
この三人、何かと気があって仲が良くなっていたのである。
『拙者だって動ければ敵が出てもばったんばったん一刀両断するのにぜよ』
「人化できたら剣士みたいな感じですかネ?」
「(ヾノ・∀・`)」
なお、リーゼの会話は防水スケッチブックに書いて行っている。あと、ワゼはメイドとしての仕事もあったが、今はシルキーなどに指示を出して任せていた。
『拙者はいったいどうやったら人化できるぜよか・・・?』
「それはワタシにもわかりませんヨ」
ワゼにもわからないものである。魔道具だし、インテリジェンスウェポンに近いライアに似ている存在であるが、全くの別物なのだから。
「そもそも、人化はドラゴンとかぐらいにしか確認できていないはずデス。ドラゴン以外のモンスターにも確かにあるようですが、あまり聞いたことがないデスヨ」
『うーむ、人化できれば自由に動くこともできるのにぜよな・・・・』
「そもそも、あなたは黒魔石によって生まれたような存在デス。その仕組みが解明できればあるいハ・・・」
『できないから無理なんだぜよ・・・・ん?』
「ン?」
「(´・ω・)?」
この時、三人(人?)は同時に何か感じた。
「・・・どうやら動き始めたようですネ」
『黒魔石とかの気配はわかるけど・・・・なーんか劣化したものと、物凄いものがあるぜよ』
「(;・□・)」
まあ、離れた場所なので戦力外に近いこの三人には手出しができないのだが。
召喚により、リーゼとライアはここからでもすぐに行けるけどね。
王都丸ごとふっとばしてもいいならワゼも『魔道砲』発射するけどな。一応射程距離内である。ただし、全力で撃ったら魔力切れで稼働停止してしまうが。
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「・・・・来ましたね」
ハクロはあちこちに張り巡らした糸から感じ取っていた。もともとこういうのに向いてるのがアラクネという種族である。王宮どころか王都中に細かく警戒用の糸を張っていたが、感じ取れるのは王宮にあちこちからであった。
「さて、ゼロ様もこの黒魔石の気配を感じるでしょうし、私たちも対処を始めましょうか」
中編・後編と行くか、後編のみにするか・・・・・