『王族集合だよ』
午前中に免許を取るために学校に行くようになり、ちょっと遅れるんですよね・・・。
「第1王子様と第1王女様のご帰還です!!」
ぷっぷくぷーのぱっぱらぱーの
と、ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪があたりに舞った。王族が乗った派手な馬車が普通に王宮まで進んでくる。
なんかあれだな、あまりにも気が抜けそうな音というか。
本日、はるか東に位置する島国の『ワポーン』という国に留学していた第1王子グライトス・クラン・ダンデと、第1王女グライトス・クラン・アマスが王都に3年ぶりに戻ってきたのである。
今まで数回ほど戻ってきていたらしいが、すべて俺が国外に行っていたときだったそうで初めてその姿を見ることになる。
なお、俺たちは現在ギルドからの指名依頼として、この2人が王都にいる間は王宮の警備の一部を請け負っていた。
王族にはSランク冒険者が警備についた方が確実に安全だからである。
こちらとしても、クーデターが起きる可能性があるので請け負った。念のため、ハクロに全員の服をいつものよりも防御力が高い糸で編んでもらったやつを着用している。そこら辺の鎧なんかよりも軽くて丈夫だよ。
「そういえば、初めてその姿を見ることになるよな・・・」
この2人は次期国王となれるのだが、王宮での噂では第1王子と第1王女ともに似たような感じであり、ステータスやスキルに違いが余りないという。
違う点としては、軍備の縮小を唱えるのが第1王女、軍備を拡張して他の国への進出を唱えるのが第1王子という事らしい。
俺はこの国とは別の・・・一国と同じ扱いになるのでこの国の軍とか戦争にはかかわらないつもりである。なので、正直どっちがいいとか悪いとかはどうでもよかった。そちらの言い分も正しいからな。
そう考えている間に、馬車が王宮の門前に到着して停止する。
門前には国王と第2王女であるローズ、あとその他護衛が待っていた。俺はローズの近くにいた。ハクロたちは別の場所に待機させてある。
馬車の扉が開き、中にいた第1王子と第1王女が降りてきた。
「・・・うわぁ」
なにせ、2人の見た目がかなりそっくりだったのである。違うとすれば髪の長さが第1王女のほうが長く、着ているのがドレス、第1王子の着ているのが何故か和服だというぐらいであろう。
それ以外では身長や容姿が同じなんだよな・・・顔は中性的で整っているし・・・双子かよって言いたいぐらい似ていた。
二人とも馬車から降りると、そのまま国王の前まで進んだ。
「「お久しぶりです父上、妹よ」」
声まで似ているんだが・・・・。多分少し低い方が第1王子なのだろうな。
「うむ、3年ぶりだぞいダンデ、アマス」
「お久しぶりですお兄様、お姉さま」
国王たちも返事をする。
しかし・・・第1王子と第1王女両方とも中性的な顔立ちをしてはいるが、目のところとかが一応国王に似ているな。
「今回の留学で二人は何を学んだ?」
国王がいつもの顔ではなく、父親としての顔になっている。
「ワポーンでの文化、政治などを良く学びました」
「精神修行も学び、いくつかこの国にも取り入れられそうなものばかりで、いい刺激にもなりました」
「うむ、よく学んできておるようだぞい」
国王が二人の頭をなでる。2人ともうれしそうに笑った。
しかし・・・・国王の語尾の「ぞい」は遺伝していないんだな。ま、ローズにもないからおかしくはないか。
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「ぬうっ?」
「アルテミス、どうかしたのですか?」
王宮の離れた場所でその様子を見ていたアルテミスとカトレアだったが、アルテミスは何か感じたようであった。
「あの二人・・・・何かと従魔契約をしておらぬか?」
「魔物使いになっているのですか?」
「いや、なーんか同族というべきか?」
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王宮に入り、改めて王族一家での会話がなされた。
「お兄様、お姉様。こちらが私の将来の旦那様です」
ローズに手を引かれ、俺は紹介されていた。
「初めまして、ランクS冒険者魔物使いのゼロです」
一応ここで挨拶をしておくか。初対面だしな。
「ほお、妹の夫となるのか」
「こちらこそ、妹のことをよろしく頼みます」
手を互いにだし、握手を軽くかわす。そういえばこの人たちは一応義理の兄と姉になるんだよな・・・。
ローズは俺と結婚した場合、王族から抜けることになるのだが血縁関係はそのままだしな。
「しかし、私たちが恋人を作る前にローズが恋人を作るとは思わなかったわねぇ・・」
「僕にはいたよ。でも、あがり症が原因でフラれたんだよね・・・」
アマスがしみじみ言い、ダンテが落ち込む。そのあがり症でフラれたって悲しいな・・・。
「私も、あがりすぎてつい好きな人にアッパーを喰らわせちゃってそれが原因でフラれたものね・・・」
悲しい過去になるからやめてほしいな・・・。というか、何をどうしたらアッパーしたんだよ。
「今回の留学であがり症は克服したのかぞい?」
国王が尋ねると、二人ともしっかりと国王の方を見た。
「はい、ワポーンで様々な精神修行を行い、あがり症は克服いたしました」
「滝に打たれたり、滝登りをさせられたり、断食、座禅などで厳しく鍛えられました」
結構厳しそうだな・・・・って、滝登り?それ精神関係あるのかな?
「そういえば父上にお話ししておきたいことが」
「私たちは厳しい精神修行の末、従魔をそれぞれ得ました」
「なんと・・・・従魔をかぞい!?」
国王が驚いた顔をした。ローズがこそっと俺に耳うちしてくる。
(お兄様とお姉様には一応魔物使いの才能はあったんですよ。でも、そういうわけだかモンスターが従魔にならなくて結局魔物使いにはなっていなかったんですよ)
スライムすら従魔にならなかった二人に従魔ができたのは驚くことらしい。
「その従魔を見せてくれないかぞい?」
「いいですよ。出てこい、ウォン!!」
「出てきて、ランスロ!!」
二人が召喚して出てきたのは・・・・。
「きゅうう!!」
「くぇぇぇぇぇっつ!!」
日本の東洋龍ともいえるようなモンスターだった。それぞれ小さいが、二匹ともだいたい全長が2mほどであろうか?アルテミスの身長ぐらいか。
しかし・・・顔がゆるキャラのようなつぶらな瞳でなんか可愛い。
ダンテのウォンは全体が黄色の龍。アマスのランスロは緑色の龍だった。
「おお、かわいらしい従魔だぞい」
「この二匹はどうやら兄弟のようで」
「それぞれが従魔になったのよ」
それぞれが従魔の頭をなでると二匹ともうれしそうにしていた。
「なんてモンスターですか?」
ローズが興味津々で聞く。
「いやぁ、従魔にしたのはいいんだけど」
「モンスターの種類がわからなくて」
「あ、俺わかりますよ」
鑑定使用したらなんのモンスターかは一発でわかった。
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名前:『ウォン』
種族:ジャパルサンダードラゴン
年齢:3歳
MP:890
ATK:3456
DF:567
スキル :「雷龍帝の眷族」「サンダーブレス」
称号:「雷龍帝の遠い血縁者」
名前:『ランスロ』
種族:ジャパルウッドドラゴン
年齢:3歳
MP:890
ATK:245
DF:1000
スキル :「木龍帝の眷族」「森の息吹」
称号:「木龍帝の遠い血縁者」
「ジャパルドラゴン」
龍帝たちの遠い親戚にあたり、それぞれの龍帝の眷族でもあるドラゴン。しかし、血が物凄く薄いためそこまで強いわけではないが、それでもドラゴンなのでそれなりに強い。生息地によって姿と属性が変化するらしく、どの属性のドラゴンになるかは生まれてからの条件によって決まる。ランクは幼龍時にはBランクだが、最終的にはSランクまで成長する可能性を秘めている。人化の術は1000歳前後で取得する。
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「とんでもない奴らの眷族かよ・・・」
龍帝って氷龍帝とかのせいでイメージが・・・・・。
「あー、やっぱ同族だったのじゃな」
「あ、アルテミス」
いつのまにかアルテミスが部屋に入ってきていた。おい、一応周囲の警戒をしていたよな。
「きゅう・・・?きゅううつ!?」
「くえっつ・・・くぇぇぇぇぇっつ!?」
アルテミスの姿を見た途端、二匹とも急に驚いたような顔をして素早く2人から離れると、アルテミスの前に飛んできて敬礼のようなことをしてきた。
「ん?人化しているとはいえ、我がエンシェントドラゴンということをわかったのか」
「きゅう!!」
「くぇぇ!」
アルテミスが尋ねると、二匹ともうなずいた。しかも物凄く真剣にである。
その様子を見て、ダンテとアマスは驚いている様子だった。
「二匹ともがあんなに真剣になるなんて」
「彼女は一体だれ?」
「あ、旦那様の従魔ですよ」
ローズが軽くそういったのを聞き、二人は驚いた。
「え、え?従魔ってことはモンスターよね?」
「身長が高いけど人にしか見えないんだけど」
こちらに迫って聞いてきたよ。
「あー、アルテミスは今は人の姿をしているけど、エンシェントドラゴンなんだよね・・・」
そういえば、エンシェントドラゴンってドラゴンの中で最上位クラスだった。あの二匹もドラゴンとしての格上の相手だと気が付いて慌てたのだろうか?
説明に少々時間がかかり、何とか納得してもらったころには舞踏会が始まる20分前であった・・・・。
この二匹がこの後どうかかわることやら・・・・。
なぜか途中で意気投合したようで、アルテミスとその二匹は話し始めた。
「くえ、くえっつ、くええ」
「ほー、滝行でそんないたずらをしたのかのぅ」
「きゅっつ、きゅーっつ」
「それはお主が悪いじゃろうが」
「「「通じている!?」」」




