『悪女なギルドマスター』
悪女ってこういうのだっけ?違っていたらごめんなさい。
「そう、あなたがSランク冒険者魔物使いのゼロね」
現在、俺はホークアイのギルドの執務室にて、ここのギルドマスターと話をしている。
部屋の中は案外普通で、来客用のソファーに座らせてもらっているのだが・・・。
「私はここのギルドマスター、元冒険者の異名だと『妖艶花』レイアよ」
「・・・あのレイアさん」
「なにかしら?」
「なんでソファーが二つあるのに俺の隣に座って話すんですかね・・・・・」
異名通り確かに美しい見た目だとわかる。銀髪金眼、肌は白色、耳と尻尾は銀色。美しさの方向性はカトレアのような感じであるのでカトレアがいてある程度の耐性はついているが。
だが、なんで俺の隣に座るんですかね・・・・。
「ゼロ様から離れてくださいよ」
ハクロが睨む。ちゃんと本人かどうか確認するために全員出したのだが・・・・。
というか、皆の雰囲気が怖い。背後に般若や虎、龍、鬼なんかが見えるのだが・・・・。
アルテミスはドラゴンだから背後のが龍に見えてもおかしくはないが・・・。
「あら?従魔が主に近づく女性に嫉妬?なかなかかわいいわね」
「な、な、嫉妬ではありませんよ!!」
思わぬ一言に、ハクロは思いっきり顔を真っ赤にした。湯気でているぞ。
「冗談よ冗談。従魔に愛されているっていいわねぇ」
「大事な家族でもありますから」
こちらはできるだけ冷静に返す。魅惑的だが、美しさの方向性がカトレアよりなので少し慣れているんだよ!・・・完全ではないが。
「ふふふふ、良い男ね」
そう流し目のような目線を向ける。
従魔全員がその瞬間普段は見ないような表情で怒っている。モンスターだというのを普段は忘れそうになるが、こうして怒っているときの迫力は確実に命を落としかねないレベルである。超怖い。
だが、レイアさんは動じずに俺に近寄る。そのたびに物凄い怒りの波動が周囲に放たれた。
悪女って感じの人だ。この人確実にハクロたちをからかって遊んでいるよ。
「ま、この辺でふざけるのはよしまして本題に入るわね」
「早く入ってくださいよ!!」
「流石に我も何かムカつくのじゃ」
「ムカーッ!!」
「面白くありませんね」
「(#´-ω-`)」
『皆怖いぜよ・・・』
ライアだけは普通におびえているようだ。板だけど顔があればものすごく青い顔をしていただろうな。
とにもかくにも、今回の指名依頼の件を話すことに。
「・・・なるほど、その板があの屋敷の一部で、モンスターだったわけね」
「はい、そうなんです」
説明し始めたら物凄いまじめな表情を作って真剣に聞いてくれたよ。なんだってさっきのようなことを・・・。
「その文字しか出てない板がそれだと」
「はい」
ライアを手渡してみてもらう。このギルドマスタはーはどうやら元凄腕の冒険者だったようだから何かあっても対処できるらしい。
「ふうん、モンスターだけどインテリジェンスウェポンに近い感じね」
『拙者はもとはでかいモンスターだったのだぜよ!!』
「あの屋敷なら見ているからわかるわ。でも、サイズが物凄く小さくなっているわねぇ・・」
一応、屋敷を壊してしまってはいたが別によかったそうだ。解体業者に頼む手間が省けたと喜ばれたぐらいだ。
「でも、ほんとに黒魔石とかいう物の影響でモンスターが生まれるのね・・・」
「生まれるというよりは、変化してできたという感じに近いですけどね」
無から生まれてなく、何かをベースにしてモンスターになっているって感じだよな。
「まあ、この子があなたの従魔になっているのならもうこの問題はいいわ。指名依頼はこれで完了とメタドンちゃんに伝えておくわね」
「め、メタドンさんを『ちゃん』付け・・・」
吹き出したくなった。メタドンさんこの人にそんなふうに呼ばれていたの!?
従魔たちも何やら今の言葉はツボだったようで、皆笑いをこらえているようであった。
『(笑)』
ライア、お前は文字通り顔に浮き出ているぞ。板だからそこが顔かはわからんが。
「にしても、これであなたへに依頼は完了したけど・・・もう少しこの国に留まってみない?」
「いえ、さっさと帰りたいので」
「残念」
やっと報告が終わり、その部屋から出たのであった・・・。
「・・・・なんぞこれ」
部屋から出て、ギルドの受付のあたりに戻るとあたりには泡吹いて倒れていたり、股間から染みが出ていて気絶している冒険者たちが大勢いた。
この状況なのに、ギルド職員たちは顔色変えずに無視して仕事をしていた。
「なにがあったんですか?」
気になったので、先ほど執務室に案内してくれていた受付に戻っていた受付嬢に聞いてみた。
「それがね、なーんか物凄い圧力がいきなり来てね、心が弱い人たちが皆あんな状態になっちゃったのよ。なんだったのかは不明だけど、私たちでもギリギリだったのよ」
・・・・すいません、それ俺の従魔たちが原因です。あの怒りのオーラが原因です。
この国は実力主義、つまりはこの程度で気絶しているのは弱いようだから救助はしないそうだ。
ごめんなさいと心で手を合わせながら俺たちはギルドから出ていったのであった。
・・・さっさと帰るか。
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ゼロが出ていったとの執務室にて・・・・。
「ふふふふ、なかなかいい男じゃない。でも、すでにあれだけの可愛い子がいるのは残念だわ」
「・・・年齢をいくつだと思っているんだこのババア」
「永遠の18歳よ」
レイアと、もう一人の人物がその場にいた。
「はあっ、昔からずっと変わらないよな」
「それはこっちのセリフよ、ひいひいひい省略してのおじいちゃん」
「それを言われるとどこか心にぐさりと刺さるんだが・・・・」
「見た目が青年ですものね。で、おじいちゃんの方は何の用事でここに来たの?」
「俺の孫のひ孫の省略しての子孫を見に来ただけだ」
そのもう一人の人物は威張るように言った。
「私を見に来たんでしょ」
「そういう事だ。未来永劫子供たちを見守るのが俺だからな」
「おじいちゃんの妻の面影があるのかしら?」
「んー、しゃべり方が語尾を『じゃ』といっていたカルミアに似ているな。少し違うが」
レイアの姿を見ながら、その人物はそう答えた。
そこで互いに笑いあったが、すぐにお互いにまじめな表情になった。
「そうなのね・・・。そういえば、おじいちゃんはあの魔物使いに何か感じるものはあった?」
「まあな、確実にあいつは・・・・・・・」
その言葉が告げられた後、レイアは予測していたかのような顔をした。
「やっぱりそうなのね。超長生きの鬼神であるおじいちゃんがそういうなら間違いないわね・・・」
「だが、そこまで警戒することはないだろう。あの魔物使いは俺と同じように野心はないようだしな」
「なら安心だわ。この事実は、いつかあの魔物使い自身が身をもって知るだろうし私たちだけの秘密にしましょう」
「ま、俺はどうせこの世界にはもう手出しするつもりはないしな。見守っておくよ」
そういうと、その人物は徐々に体が消えるかのように薄れていった。
「俺はこの世界でいろいろやったけど、もうこの世界に手出しはしないからな。それじゃ、次の子孫のところに行くな」
「おじいちゃんも不老不死だがなんだが知らないけど、また元気でね」
「ああ、また来るかもしれないし、来ないかもしれないがそのときは連絡するよ」
「それじゃ、ばいばいラルおじいちゃん・・・」
「そのおじいちゃんというのはいい加減やめてほしいんだけどな・・・・」
そう苦笑しながらも、その人物はその場から消えたのであった・・。
「ふう、帰ったわね」
レイアは少し落ち着く。自分のひいひい以下省略のじいちゃんはものすごくプレッシャーがかかる。大好きなおじいちゃんだけど、見た目が昔から変わっていない青年の姿で、彼女の好みの姿でもあるため戸惑ってしまうところを抑えているのであった。
なお、レイアは彼氏いない歴が今年で〇〇年である。原因は妖艶な見た目であるがゆえに、逆に男たちから神聖視されてしまっているからだそうだ・・・・・。
最後の方に登場した人物・・・・別の話のネタばれになりかねませんけど、その話の・・・・。
まあ、この人物が今後また出るかは不明です。
彼は何者にも縛られないような自由な人物ですからね。




