『恐怖の屋敷』
ハクロがどうしてこうなった。
「おじゃまします」
ぎぎぎいぃぃっと音を立て、扉を開いて俺たちは屋敷の中に入った。
内部はあちこちに誇りが積もり、蜘蛛の巣がちらほらかかっている。
「長いこと手入れされていないな・・・・・」
「黒魔石があったのは屋敷の1階の書斎のようじゃが・・・」
メタドンさんから受け取った資料を見ながら全員で入った。なお、ハクロは従魔用空間に入っている。
『蜘蛛の巣がありますけど・・・普通の蜘蛛ですね』
平気なふりしているが・・・声が少し震えているぞ。
ばたん!
「!?」
『ひっ!?』
いきなり扉が閉じた。突然の事なのでハクロが悲鳴を上げる。
「ただの風じゃな」
アルテミスが冷静に状況判断するが、ハクロの感じからして完全にビビっているようである。
『怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない・・・・』
必死過ぎて物凄く怖いんだが。呪詛のように言い続けているんだけど、ハクロ・・・お前モンスターだよね?モンスターにも幽霊みたいなのがいるんだが・・・。
ハクロの年齢は1000歳以上だが、ここまでビビりだとどうやって生き延びてきたのか気になる。いや、昔肝試しがあったけど、あの時の経験が原因でここまでビビりになったのか?
屋敷の中を進み、書斎の部屋を発見した。
「この部屋に黒魔石があったんだな」
「そうらしいのぅ。我らが調査するためにこの屋敷移住の鍵は開いているようじゃが・・・・」
『早く調べて、ダンジョンがあったらすぐに制覇して帰りましょうよ!!』
うん、ハクロが完全にびびって・・・ん?そういえば。
「ハクロ、お前のスキルに『聖光』ってあったよな」
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「聖光」・・・聖なる光を常にまとった状態になる。墓場などに行くと完全浄化させてしまう。また、アンデッド系モンスターが触れてもあっという間に天へ逝かせてしまう
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ハクロがここにいる時点でこの屋敷になんかいたとしても、浄化しているのでは・・・・。
『でも、怖いものは怖いんです!!』
「そこまでかよ・・・・」
ハクロの称号に「真性のビビり」とかつきそうだな・・・・・。
書斎をの戸開けると、わずかに血の匂いが漂った。
「確かに血の匂いがするな・・・」
「ただ、これ普通の血の匂いではないような感じじゃな・・・こう、モンスターの血というか」
「モンスターの血・・・それもアンデッド系ですかね?」
血の匂いでわかるのかよ。モンスターの嗅覚ってどうなっているんだ?
「アンデッド系モンスターがいるならハクロの出番だな。出てこい、ハクロ」
問答無用でハクロを出す。
「ううっ、怖いですよ・・・」
「まあまあ、ハクロのスキルがあるからアンデッド系モンスターだったら平気だって」
涙目でハクロが訴えるような顔をするが、何とかなだめる。
書斎の奥の方へ進んで、結局何もなかった。
「結局何もないな」
「黒魔石による異変はないようじゃな」
そのあと手分けして屋敷中の部屋を調べてみたが、異常が見られなかった。なお、暗くなってきたのでスラ太郎の眷属の「ライトスライム」を分裂させてそれぞれに1体持ってもらって光源代わりにした。結構このスライム便利だな・・・・。
「黒魔石で異変がないとは・・・・」
「地下の方に何かあるかもしれんぞ?」
話によると、地面に黒魔石の霧が浸み込んだっていうしな。地面をゴーレムで掘って調べてみようか。
ちなみに、ハクロは手近にいたリーゼをぬいぐるみを抱くようにだきしめていた。
リーゼは別に嫌がってはいないようだが、見た目が姉を抱きしめる妹みたいに見える・・・。
年齢としてはハクロが年上だけど。まあ、俺に抱きしめに来なかったのは良かったような・・・。胸を押し付けられるからね。身長差的に頭にきてこちらが違う意味でドキドキするし。
何もないようなので、屋敷から出ることにした。
「あれ?」
扉を開けようとしたのだが・・・・。
「どうしたんじゃ主殿?」
「あかないんだけど・・・」
全員で押してみたり、引っぱってみたりしたが全くあかない。
「どうなっているんだ・・・・?」
「・・・あ、もしかして」
ハクロが何か気が付いたようである。
「ゼロ様、黒魔石ってダンジョン化させる以外もありましたよね」
「ああ、あのデンジャラスボックスみたいにモンスター化・・・・って」
「もしかしたら、この屋敷そのものが今モンスターになっているのでは・・・?」
その場を静寂が包む。その可能性は十分にあり得た。
ただの箱が黒魔石を保管していただけでモンスター化していた。
そして、この廃墟と化している屋敷も黒魔石の影響を受けてモンスターと化していたら・・・。
どうやらまずい状況になったようであった・・・・・。
なんかこういう映画ってなかったかな?