『たまにはこういうのが多いんです』
ギルドにある依頼だって、たまには偏るんですよ。
ソウサカント島へ慰安旅行に行ってしばらくたち、季節は夏にはいろうとしていた。
一国と同じ扱いになったといっても、まあたいした生活の変化はない。いまだに様々な書類の処理などがあるけどな。
一応、冒険者としての仕事もできる。だが、他の国からの指名依頼を受けさせられるようにもなっていた。理由としては、今のうちにほかの国とも国づきあいみたいなことをしておけとか言うようなものらしい。
まあ、そんなにないけどな。国が頼むレベルの指名依頼なんてそうそうないし。
そんなこんなで現在、俺たちはギルドで依頼を探しているのであった。今のところ、稼ぐ方法が依頼達成報酬と、服屋に売れるハクロの糸、カトレアの特許権による利益、リーゼコンサートのチケット及びグッズの売り上げの一部だからな。
稼げていることは稼げているのだが、やっぱ冒険者として働きたいじゃん。正直そこまでお金を使うわけでもないので、孤児院などに寄付したりしているしな。
「うーん、どちらの依頼を受けるべきか・・・・」
今手にしている依頼は『サイクロプスの目玉×20個採取』と『ギガントスライム討伐』である。
「ギガントスライムですか・・・・スラ太郎の眷属になってしまって討伐できなくなりそうですよね」
スラ太郎の前だと、スライムの中には眷属化しようとするのが出るみたいだからな。このギガントスライムはどうやら王都から少し遠い村の近くにある森に出たらしい。
「かといって、目玉を20個はのぉ・・・」
このメンバーだとサイクロプスを倒せるが、目玉20個持つのはさすがにちょっと・・・。
かといって、他にある依頼が今日はゲテモノが多くて、今あるこの依頼がまだましな方である。
『ヘドロスライムの体液採取』、『オークの生首×59』、『コカトリスの心臓』などなぜかえぐいものばかり。あ、ヘドロスライムはスラ太郎の眷属にはいない模様。
「まだましなのがこれだからな」
「なんだか今日は結構グロい感じなのが多い・・・」
なんとなく魔女が大釜でかき混ぜそうなイメージのものばかりだよ。魔法はこの世界にあるし、魔法使いがいるから実際そんな光景もあるようだしな。
というか、王都の奥の方にある薬屋のばあさんがまさにそんな感じで薬を調合しているんだっけな。結構効くという噂だけどさ、調合風景が昔の魔女のイメージそのものである。俺たちの場合はスラ太郎がいるから薬の心配はないけどね。
「しかし、なかなかえぐいのぅ。『トロールの脳みそ採取』、『ゴブリンの手足を新鮮なうちに採取』、『スケルトンの骨集め』・・・・・まともそうな依頼がないのぉ」
そのせいかは知らないけど、今日はギルドにいる冒険者たちの数が少なかった。いくらモンスターをぶった斬ることができても、そんなものを集めたくはないだろうからな・・・。
とりあえず、今日は『ギガントスライム討伐』の依頼を受けることにした。
だいたいカトレアの馬車で向かって1時間ほどの村の近くの森か・・・。
「ギガントスライム」
スライムの中で100体以上のスライムが合体し新たに生まれたモンスター。どこぞやのキングスライムのような王冠はかぶってなく、口も目もないただののっぺらぼうのような巨大なスライムである。しかし、その巨体を生かして動物などを取り込んで消化し、おのれの栄養源とする。好物は人の衣服らしく、人そのものを溶かすことができるが、真っ先に服から溶かすので急いで救出すれば服が溶けるだけの被害に収まる。
動きは巨体の割には素早く、押しつぶしたり、飲み込んだりする戦い方をする。ランクはB。