閑話 花見
一応、季節はこの物語の中に合わせています。
「おー、相変わらずきれいに咲き誇っているなー」
「年中ずっと咲き誇っていますからね」
俺たちは今、以前卒業試験の時に咲かせた魔桜のところに来ていた。今の季節が春ということもあり、本日王都では花見があちこちで開催されていた。
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『魔桜』
魔力を糧として育ち、そそがれる魔力が多いほど早く成長し、薄く光り輝く花を咲かせる一種のモンスターともいえる植物。地球のソメイヨシノに見た目は似ているが、かなりの巨木になり、その桜の花びらの色は青色だが魔力の質によってその色彩は異なる。魔石はないが、一応モンスターみたいなものと言われるのは、切り倒した時にその巨木が残らず、その場に甘い超巨大なサクランボが一つ残されるからである。その実はポーションの材料にもなり、かなりの効果が付くらしい。
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淡い青色の花びらが舞い、どことなく幻想的な雰囲気である。
以前この場所はスラム街の空いていた一角であった。
だが、スラム街は年々改善されて縮小してきており、今ではこの魔桜の周囲は芝生だらけになっていた。
この王都の観光名所になっているので、他にもこの魔桜を見ている人が数多くいた。
「にしても、この大量の花びらが年中舞っているならどこかにたまりそうなものだが?」
「この魔桜の花びらは集められて、なにかしらの加工がされて入浴剤などになっていますよ」
一応この魔桜を咲かせたのは俺だが・・・まあ、いっか。
よく見るとちらほら小さなほかの魔桜もあった。
「あれは子魔桜じゃな。魔桜の子供みたいなもので、少しずつ増えていくのじゃ」
つくしのようなものだろうか?あれもいつの間にか増えていくからな。いや、元は一本の魔桜だから少し違うか?
「1体見かけたら30体はいる」・・・・・それはGか。正式名称は口に出すのもおぞましいな。そういえば、この世界では一度も見かけないな・・・もしかしてダンジョン限定モンスターとして巨大な、いや、考えるのはよそう。誰も幸せにはならないからな。
ちなみに、子魔桜の生息域は王都少しづつ拡大しているそうな。・・・・侵略されてきてないか?
とりあえず、空いている場所にシートを敷いて花見をすることにした。
「弁当はワゼが用意したものがあるんだよな」
「これじゃな」
アルテミスが空間収納から取り出したのは重箱だった。しかもかなりの量。
「・・・ものすごい多いな」
まあ、全員の食欲から考えると食べきれるだろうがこの量を作ったワゼがすごいな。
開けてみると、ものすごく豪華だった。
「おー!」
「おいしそうですよね!」
「いや、おいしいのじゃ!」
「ウマー!」
「色合いもきれいです」
「〇」
全員に好評である。ワゼの料理は完璧だなぁ・・・・。
花びら散る中で食べるのはなかなか風流であった。周りでも同じようにしている者や、飲み会に発展している者、昼寝している者などさまざまであった。
あ、一応飲み物はあるけど酒はない。年齢的に考えるとハクロ、アルテミス、カトレアは飲める。だが、俺とスラ太郎とリーゼはアウト。モンスターに年齢制限があるのかはまあ、今いち知らないけどね。
「それにしても、ご主人がこの場にいることにこの魔桜も喜んでいるようですよ」
カトレアがそうつぶやいた。植物系モンスターだから魔桜の言っていることが分かるのだろうか。
まあ、わかるような気がする。なんとなくうれしいとか言った感じだもんな。
「~♪」
リーゼが歌い出した。その歌声は上機嫌でかなり楽しんでいるようだった。
周りの人たちもリーゼの歌に聞き入り、楽しみ、その花見は夕暮れ時まで続くのであった・・・・。
次回から新章。
それにしても、この主人公たち成長してきたな・・・・。




