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閑話 魔道王国の夜

隅々まで探すことは意外にも難しいことである。

 魔道王国実験塔・・・・ゼロたちが忍び込んだこの場所だが、じつは隠し部屋があった。だが、ゼロたちはその存在に気が付いておらず、ゼロたちが王国に戻った夜であった。


 その秘密の部屋にて、二人の人物がいた。一人は屈強な体つきをして、鋭そうな眼付きの男性で、戦士風に見えるがこれでもれっきとした魔法使いのゴルモル。もう一人は対照的にヒョロヒョロなからだつきの、魔法使いチィマ。彼らはそれぞれ革新派と保守派の指導者であった。この日、この時間、彼らはそれぞれの幹部に少し出かけてくるといい、この部屋にて密談をしているのだった。


 この二つの派閥は争っている。だが、実は彼らがそうなるように煽動しているだけで、彼らがこの両方の派閥を自分の手足のように操っていただけであった。


彼らがなぜ、互いに敵同士となる派閥を作り、争っているのか。それは、あることが理由だった。


「魔道爆弾『ボマム』の実験が終わった。王国にて火災などの被害を出せた。誰にも気がつかれずに、ごく自然にできたよ」

「こちらもアンデッド兵を作ることに成功した。そちらの派閥の死人だったがな」

「ああ、別にいいですよ。どうせ我々二人の野望をかなえるためでしょう。今いる自分の派閥の人の命なんて軽いですよ」

「そうだな。気にすることでもなかったな」


 互いに高らかに笑いあう。そう、この二人にとっては保守派と革新派は隠れ蓑でしかなかった。


 この二つの派閥の激突によって出てくる死人たちを利用して、さらに、それぞれ互いに魔道具の情報を交換させてより、今やっている研究を互いに補い合いながら進めようとしているのであった。


 そして、その研究をする目的とは・・・。


「これでやっと魔導兵器とアンデッド兵ができたな」

「ええ、これで研究はお互いに完成いたしました。」

「「やっと次の段階へ行ける」」


 二人は互いに声を合わせた。この研究の終了により、いくらでもアンデッド兵と魔導兵器の量産ができるようになったからだ。


「この二つをうまく使い、まずは今こちらの管轄の革新派をつぶしてくれ」

「で、何人か生き残らせて今度はそちらが私たちの保守派に逆襲を仕掛ける」

「そして、これにより死体が大幅に増え」

「それらをアンデッド兵とする」

「それを繰り返して最終的には」

「我々二人とその兵と魔導兵器で両派閥をつぶす」


 この二人にとって研究が完成した今、互いが所属している派閥はもはや二人の野望には邪魔である。


「つぶし終えた後は・・・・」

「転送魔法陣で、まずは手近なグライトス王国を狙いましょう」


 この二人の野望は、世界をわがものにする・・・世界征服だった。幼稚なように聞こえるが、アンデッドで死なないような兵士たちと、強力な魔導兵器がある今、不可能でないように思われた。



「ただ、怪物殺しがその王国にいるようなので、王国からいったん離れさせないといけませんな」

「そのためのえさがこれだな」


 そういって、ゴルモルが取り出したのは一つの箱。この箱の中には先日捕まえた仮面の男たちから奪った黒魔石30個が入っていた。彼らはこれまでの間に、この黒魔石が怪物を創り出していたことに気が付いていた。


「アンデッド兵にこれを持たせ、わざと全部暴走させ怪物を王都から離れた場所に・・・いや、作戦変更するか」

「というと?」


 ないやらゴルモルは思いついたようである。当初の予定では、怪物殺しの対策としてアンデッド兵を増やしてから戦うつもりだった。だが、この黒魔石を手にいれたので今度はこの黒魔石を使用して、アンデッド兵を怪物化させて、その対処に追われているすきに王国から片付けようとした。


 だが、ここで思いついた。


「30体分にしてばらけさせるつもりだったが、これを何とか1つにまとめて暴走できないだろうか?1体でも大変だったようだから、一気にその力を増した怪物なら」

「怪物殺しを倒せるかもしれないですか・・・・ええ、結構いい方法かもしれませんな。魔石と似た構造なので、それを合成する方法を応用すれば可能かもしれません」


 名案だとばかりに二人はうなづきあった。だが、このとき彼らは気が付いていなかった。


「まあ、完成させるのに数日はかかるでしょう。魔導兵器の量産のあいまにでもすすめますよ」

「では、こちらはアンデッド兵の作成に取り掛かろう。幸いにしてまだ死体は先日のクーデターであまっているからな」


 チィマが懐に黒魔石をしまい、二人がそろって部屋から出ようとした時だった。


「ん?扉が開かんな」

「はて、鍵もかかっていないし、一応この扉は外から抑えることもできるが、この部屋の存在を知っているのは我々二人のはず・・・・」



 扉が開かない。それどころか、体がだんだん重くなってきた。


「ぐっつ・・・・なんだこの倦怠感は・・・?」

「ま、魔力が吸われていっているような・・・・吸われる?」


 その言葉で二人ともある可能性を思い立った。


 チィマが懐から黒魔石を取り出すと、黒魔石すべてが濁ったような・・・いや、元から黒色なのでわわかりにくいが、濁っているとはっきりわかる不気味な光を放っていた。


「な・・・!?」

「黒魔石がかってに反応して我々のま・・」


 それ以上言うことはできなかった。急激な魔力切れにより、二人はそのまま気絶した。


 そして倒れ込んだ後、黒魔石すべてから黒い靄が発生して、二人を包み込んでいった。



 そのまま黒い塊となり、脈動しながらその部屋にとどまった。まるで、何か得体のしれない怪物が生まれる卵のように・・・・。



黒魔石、いや、二人だったものというべきだろうか。それは静かに脈動しなら、孵る時を待った・・・。


・・・どっくん  どっくん  どっくん  どっく・・・・・・

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