『昼に来ればよかったかもしれない・・・』
塔にとうとうやってきた・・・
くだらないかこれ。後でこの部分だけ消そうかな・・・?
実験塔に俺は夜中に忍び込んだ。昼間よりも夜中のほうが目立たないからな。
その分警備が厳しくなっているだろうが、「隠蔽2」のおかげで気づかれずに侵入した。念のために武器としてアルテミスの風の刃が出る手甲を装着している。万が一戦闘になったらいやだし、前にあった従魔たちが出られない状況になってもまずいからな。
塔は石造りのようだが、鑑定してみると老朽化防止の魔法が付与されている模様。この魔法、便利だな。後で使えないか試すか。
しかし・・・・やっぱ昼に忍び込めばよかったかな?この国魔道具が普及しているから夜中でも明かりがついているかと思ったらものすごく真っ暗なんですけど。学校で肝試ししている気分だよ。
『・・・・』
皆黙っているようだが、そういえばみんなホラーが苦手だっけ?モンスターが幽霊とかそういうものを怖がるのも変な話だが。
暗いが、星明りが窓から入ってきているので完全に真っ暗というわけでもない。そこそこ見えた。
中に入り込むとらせん階段と普通の階段が組み合わさった感じになっている。時折、階段自体が動いて行き先を変えているみたいだが何でだ?定期的なリズムで動くようになっているとか?
とりあえず、まずは上の階から調べることにした。
真夜中ということもあり、人の気配がほとんどない。というか、この状況だったらむしろあってほしい。何をしているか見れるからな。
「おじゃましま~す」
こっそりとそういい、塔内部の部屋の一つ一つに入った。扉には鍵がかかっていたが、カトレア・スラ太郎作「マスターキー」とかいうのを使用して開けた。まあ、悪用しないからいいとしよう。
最初に入った部屋はいきなりやばかった。ホルマリン漬けのようなものが多くあった。人間の脳みそのようなものがあり、結構危ない感じがある。だが、特にめぼしいものがない。
なお、この時点でハクロが気絶したらしい。アルテミスが従魔用空間から教えてくれた。
『どうも生首が液体の中で浮いているところを見たときにあぶく吹いて気絶しおった』
『く、首が・・・』
「あ~、人のじゃなくてモンスターのだったけど・・・」
ハクロが怖がる基準がいまいちわからんな。どうもいきなりくる感じが嫌なようだが・・・・。
次に入った部屋は、幾つかの魔道具の試作品らしきものが陳列されていた。
「あ、説明が書いてある」
『水虫に効く、風邪を治す、バカにつける薬を生み出す、超強力育毛剤を生み出す・・・』
地球だったらノーベル賞物になるようなものだな。全部「失敗作」と書いてあるからダメだったのだろうが。いくら魔道具でも無理なものは無理か。育毛剤の方はスラ太郎が作れるようだが。まあ、失敗作ばかりで特に何もないな。巨大な目玉の魔道具にはビビったけど。似たようなBOSSが出てくるゲームがあったな。
「次の部屋は・・・うわぁ」
壁や天井のあちこちに写真が貼られていた。カメラと同じようなものはこの世界には普通にある。だが、映っているものが問題だった。
この部屋の人は変態だったのだろうか。映っているのが風呂場のモノばかりで、男性しか映っていない。いや、女性とかだったらそれはそれで問題だけどさ、男性の裸ばかりで気持ち悪い・・・・。
この部屋の人は女性だったと信じたい。男性だったら・・・・。
見なかったことにして違う部屋へ。なんかもうさっきの部屋で恐怖心がほとんどなくなったよ。
「さて、ここは・・・!?」
危うく叫びそうになった。今度は壁や床、天井、窓にまでびっしり目があった。充血した目、見開かれた目、瞳孔が開いている物や閉じている目、まばたきして動いている目などがあって、ちょっと気が緩んでいたから不意くらって一気に冷や汗が出たよ!!
どうも目に関しての研究のようである。机に細かく記された資料があった。透視が可能になるのが最終目的なようだが・・・・この空間は目の圧力がすごい。目力なんて言葉あるけどまさにそれだ。
ここまで悪趣味な部屋にする必要があったのか?あ、資料にインパクトある部屋はこの部屋しかないと書いてある。いや、確かにあるけどさ・・・・。
目の圧力によって気が引き締められたので次の部屋へ。今度はまともな部屋でありますように・・・。
「さあ、どうだ!!」
その瞬間、俺は盛大に鼻血をふいて、気絶しかけた。あたりに飛び散った血はスラ太郎を出して掃除してもらった。だってね・・・今度の部屋はさっきの男の写真の部屋の真逆だったんだもん・・・。
血が一気に流れて貧血気味になりながらも、一部屋づつ確認し終えた。特に何もなかったので今度は下の方へ行くことにした。なお、先ほど鼻血をふきだした件については後で皆から説教があるらしい。不可抗力なんだが・・・・。
今度は下の階だ。地下にもいくよ。




