『夏祭り 夜の部3』
そーらーにー♪きぇてーえーったー♪うちあーげー・・・・
ほかの国からのギルドも出店しているので、俺とローズはその店を見に行った。
「うわぁ、さすが魔道王国のギルドの店。様々な魔道具が多いな」
「この値段でこれだけの魔道具ですか」
『魔道王国マジカーン』からのギルドが出店していたのは生活に役立つような手軽な魔道具の販売店であった。
「うーん、カトレアの場合ゴーレムに近いものだけど、ここの魔道具はそれにも劣らぬレベルのものが多いな」
「マッサージチェアなんてありますね」
さすが魔導王国、かなりいいものを出しているな。
「せっかくだし幾つか買うか・・・って、アルテミスとカトレアが今いないから大きなものは買えないな」
「ご主人、呼びましたか?」
「へ?」
振り返ると、そこにはカトレアがいた。彼女も魔道具には興味があったため来ていたようである。
「あ、カトレアさん」
「・・・ああ、ご主人の未来の奥方でしたね。お久しぶりです」
なぜかカトレアとワゼだけがローズのことを奥方と呼ぶんだよね。なんでかね?
カトレアの後方をみると、カトレアに目を奪われているような男たちの姿が見えた。そして、一緒にいる彼女やおくさんに足を踏まれ、腹を殴られ、頬をはたかれる方が多く続出している。
まあ、無理ないと思うけど・・・何か対策が必要だな。カトレアのスキル「傾国の美女」うんぬんよりも彼女自身が美しい見た目をしているからな。
「ああそうだ、カトレア、このマッサージチェア買いたいけど空間収納しておいてくれないかな?」
「了解ですよ」
マッサージチェアを俺たちは買い、カトレアに収納してもらった。ほんとその空間収納って結構便利だよね。使える人が少ないようだからなぁ・・・。
幾つかの魔道具を購入し、カトレアに収納してもらい、そこでまた分かれて進んだ。
「あの魔道具を家に設置すれば結構便利になるな」
「私も将来的に住む家ですもんね」
俺と結婚した場合、ローズは王宮から出ていく。なので、ローズが住むことになるのは間違いないが、今のところ結婚は20歳になったあたりを予定しているので今16歳だからあと4年ほど後である。彼女が来る前に家の改装なんかもしないとな。地下室がものすごい迷宮になっていたら困るから整理とかしないと・・・。
もうすぐ祭りの終わりを告げる花火の時間となった。
花火の前だが、いったんここでローズとはお別れである。まだ第2王女としての仕事とかがあるからね。第1皇子とかの仕事じゃないのかと言いたいけど、第1皇子も第1王女もこういった公の場に出ることがほとんどない。というか、あったことすらないような・・・・。
「兄も姉もどちらもあがり症らしいですからね。その性格を矯正中のようですが・・・」
それって王位とか継ぐ時に大丈夫か?なんでもこの二人のどちらが王座に就くのかの派閥争いがあるそうだが、その肝心の二人がそういう状況とは・・・・。
ちなみに、ローズはその争いには含まれていない。争いに巻き込んだら俺が怒ることを貴族の皆さんはわかっていらっしゃるそうで。ローズ自身もそういう事には興味がないようだしね。
花火の時間の数分前にハクロたちがあらかじめ決めておいた場所に集合してきた。
「結構楽しんできました!」
「オモシロカッタヨー!」
ハクロとスラ太郎は二人で屋台制覇してきたそうで、お面なんかをつけている。綿菓子のようなものや、うちわ、そしていくつかの食べ物と、かなり満喫していたようである。従魔の主である俺あての領収書がしっかり大量に持たされてはいたが。スラ太郎の方にはほとんどない。どうやら孫感覚でおごってくれた方々が多かったそうな。スラ太郎・・・無垢な笑顔で人々におごらせるなんて怖ろしい子・・・!
「げぷ、まだ苦しいのじゃ・・・」
腹いっぱい食べてきたアルテミスも戻ってきた。今年やっと初めて優勝できたようである。食べた量を聞くのは違った意味で恐ろしくて聞けなかったが・・・・。というか、あまりお腹膨れていないんだよね。どこにそれだけ多くの量の食べ物が入ったのか・・・・?空間収納は禁止なんだよな。
あと、カトレアとリーゼの二人も戻ってきた。カトレアの方は空間収納にいろいろ入れているから身軽で、リーゼはコンサートしてきたから満足気な顔である。全員楽しんでいたなぁ・・・。
「そろそろ花火の時間ですね」
ちなみに、数年前までは「花火」ではなく「魔火」という名称であった。だが、いつの間にか名称が変わっているから不思議なものである。
今年はカトレアの木の椅子を使用して見るのだ。
まず、カトレアが自分が座っている木の椅子を横方向に延ばし、その上に俺たちが座る。ハクロの場合は蜘蛛の胴体部分を乗せる・・・かな?
次に、全員が座ったらそのまま上の方へ木を伸ばしていく。例えるなら、ジブ〇の木の生長シーン並の速度で上に伸び、ちょうどいいところで止まった。なお、花火を見た後は逆に縮める。
「お!」
そして数分後、花火がうちあがり始めた。
その光景を見て、俺たちはきれいだなと思うと同時に夏の終わりが近づいてきたということをかみしめるのであった・・・・。
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花火が打ち上げられた後の魔道王国ギルドの店の一室にて、男は本国の自分の上司に連絡をしていた。魔道王国では既に電話のようなものが開発されているのである。
「では、あの魔道具は拒否したと」
「ええ、自分は所有者のいう事しか聞かないという返事でした」
「ううむ、調べてみれば魔道具の更なる未来が切り開け、あの保守派のジジイどもも黙らせることができるようなものができるのかもしれんがな」
(お前はくそ剥げ親父だろうが。人のことを言えるのかこの中年は)
内心そう思い、文句を口にした。男としては保守派と改革派の争いにうんざりしていた。男は改革派寄りだが、こんな醜い争いなんかするよりももっと世の中のためになるようなことをすればいいじゃんと思っていた。
そして、あの魔道具である少女にも若干好意を抱いていた。見た目的にストライクであるが、魔道具で、誰かの所有物というのは惜しいとさえ思えた。まあ、無理やり奪い取るのは犯罪だとしっかりわかっているのでそのようなことはしなかったが。
「そういえば最近、保守派の方で妙な実験が行われているようだ。売上金である程度の魔道具の材料となるものを買ってさっさと本国に戻って来い」
「わかりました」
通信を切った後、男は思う。なぜこんな魔道王国に自分はいるのだろうかと。
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