『一芝居』
すっげぇえらく適当なような気もするが・・・・
SIDE 民衆
どかぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
「な、なんだ!?」
「城の方からだぞ!!」
いきなり爆発音が聞こえ、空に浮かぶこの島が揺れた。
そして、爆発音がした方を見ると第1島の奥の方にあった城から煙が出ていた。
「城から何か出てくるぞ!!」
「あれは現国王様!?」
煙から出てきた人物を見て、民衆はこの王国の国王だとわかった
「人民に告ぐ!余はこれより今の爆発の責任を取って王位を降りる!!」
「な!?なんだって!?」
「ふぁっ!?」
いきなりの国王の宣言により、民衆は驚いた。いきなり謎の爆発が起きたかと思ったら今度は国王が止めるというのだ。
「今の爆発は余が民の生活をより豊かにしようとした実験によるもの。だが、そのために余はこれまで数多のスライムを利用して行ってきた!そして、今の実験によってヤヴァイものが爆誕しかけたのである!」
あまりにも勢い良くしゃべるので民衆はその話についていくまで時間がかかった。
「何とか防げたものの、民衆を危険な目に合わせてしまうところであった!!その責任を取り、余は本日この瞬間より退位し、その償いのため世界各地に世のため人のための旅にである!!次の王位を継ぐ者は余の息子、アールベッド・セイコー・モッコにする!!ではさらば!!」
そういって国王が去ったあと、民衆はしばし頭の中を整理して、とりあえず「ああ、国王が変わるのね」という認識を持つことにしたのであった。
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「よし、これでごまかせたかな?」
「うまくいってますかね?」
今回、とりあえず国王の退位のみを目的とした芝居をうった。とりあえずスライムのことぐらいは暴露させて、国王様はどっかへ行ってしまったというシナリオだ。
爆発は単に俺の魔法の『ビックバン』で派手にしただけのものである。
国王の死体はなくなってはいるが、肖像画などをもとにしてまずは適当にカトレアに人形を作ってもらった。飛ぶ様子などはハクロの糸でアルテミスが吊るして、マリオネットのように動かして生きているように見せかけ、声は録音していた声で確認しながらスラ太郎の眷属のスライムの中で音が出せるものでやった。なお、途中から途切れ途切れになっていたのは大声で話させたから疲れたという物である。
この国の国民性は例えるなら流されるままらしく、こうやって一気に情報を与えてしまうと、最終的に自己解決してしまうようなのだ。
そのため、国王が退位するなんてぐらいにしか思っていないだろう。
「スライムを集めていた理由がエリクサーのことだとも、古代魔導兵器だとも思わないだろうしこれでいいかな?」
「たぶんな。バカ孫の息子はまだ3歳じゃが、成人するまでは儂が何とかまたこの国の国政にかかわるかのぉ」
一応、城内では関係者に秘密にするようにお話させてもらっているしね。ばれたら国が不利益になることを理解してくれてよかったよ。元国王の爺さんのいう事は素直に聞いてくれたしな。爺さんの人徳すげぇ・・・。そういやあの国王、子供いたんだな・・・ってことはこの爺さん今何歳?
「ま、とりあえずこれで今回の件は終了だろうな。これ以上俺たちは関われないし、後はこの国に何とかしてもらうしかないですが・・・いいですか?」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、構わんよ。これ以上は迷惑はかけられんしのぅ」
なお、古代魔導兵器とやらはカトレアに頼んでエリクサーを燃料として動く部分だけうまく取り除いてもらった。全体でやっと1つの兵器になるらしく、部品だけじゃ稼働しないからね。この島々に影響しない範囲でやってもらったよ。
「この金属・・ゴーレムの改良に使えそうですね・・・」
カトレアがすごい目を輝かせていた。まあ、これで一応またこの兵器を使おうとしても部品がなくなっているから動かせないし、悪用もできないだろう。
「そういえば・・・」
「どうしたハクロ?」
ふと、ハクロが何かに気が付いたようにあたりを見渡した。
「いえ、先ほどからタヨさんの姿が見えないなと」
言われてみて気が付く。そういえばいないような・・・。
「みんなタヨを最後にどこで見た!!」
「私は人形に着せる服を作ったときですかね?」
「飛んで空からつりさげる時点ではおったぞ」
「人形を作っているときはいた・・・」
「ンー、スライムノミンナヲカイシュウシテイルトキニハイタヨ」
スラ太郎には今回の被害者であるスライムたちの収納をお願いしていたのである。
「タヨはここにいるのなのー!!」
タヨの声が空から響いた。
「た、タヨっ!?」
その姿を見た瞬間、全員驚いた。
さなぎだったあの白い塊の姿から、羽がきれいな巨大な蝶になっていたのである。
「そうか、羽化していたんだな」
にしては羽が渇くのが早いな。というか、でかっ!!
翅を含めたサイズは確実にアルテミスほどのサイズがあった。あれだけの大きな体、いったいあのさなぎのどこに入っていたの!?
「じーちゃん、タヨ大きくなったよ~なの!!」
喜んでいるのかわずかに放電していた。そういや電気を出すんでしたね。
「ほっ、一応自身の体から出る電撃はコントロールできているようじゃの」
アルテミスが胸をなでおろした。というか、でっかくなったなタヨ。
「そうかそうか、よかったのぉ」
爺さんも喜んでいるようである。ある意味孫が成長したようなもんだからうれしいんだろう。
こうして、成虫となったタヨに乗った爺さんたちに見送られ、俺たちは王都へ戻るのであった・・・。
というか今更ながら気が付いたけどね、タヨさ、どこから話していたんだろう・・・。さなぎ時代は口がないわけだし、今の蝶の姿だって口そのままだし。
ま、帰ったらこの黒魔石を解析しますかね。何か発見があればいいんだけどな。
ちなみに、後日談としてタヨのことを調べ直してみるとやっぱし希少種の中でもとびっきりレアな奴だった。「ジャイアント雷蝶」っていうものらしい。そのままじゃねーかと全員叫んだのであった。




