『衝撃的な』
ある意味衝撃っちゃ衝撃
「か、『怪物殺し』だと・・・!」
俺が姿を現した時、バカ国王もとい爺さんのバカ孫が驚愕の表情を浮かべた。
「お、お前さんは・・・」
爺さんも驚いた表情である。
「話はぜーんぶ聞かせてもらったぜ星光王国の国王様?」
「なっ、いつからこの国にいたんだ!!」
「あれ?やっぱあんたじゃなかったのか」
「何の話だ!」
「いや、こっちの話」
俺たちに攻撃してきたやつがいたからさ、そいつが報告したり指示していたのはこいつじゃないかと思っていたのだが・・・・もしかしてこいつには何も知らされていないのか?まあ、いっか。
「古代魔導兵器『ゲイボルグ』ね・・・・なんか名前からしてすっごいやばそうな代物だな」
ゲイボルグって確か、地球の神話に出てきた銛のような武器だよな。クーフーリンとかいるのかな?それはそれで見てみたい。
「それにいつからと言っても・・数日前?」
「なんで疑問形だよ!!」
だって、鉱山にゴーレムで掘り進むのに結構時間かかったからな。時間間隔がおかしくなってそうでこわい。
「ま、とりあえずあんたが今回のスライム大量失踪事件の犯人と分かったぜ。野生のなら別にどうでもよかったかもしれんが、他の魔物使いのスライムまでってのはまずかったよな」
「しっかり録音しておきました」
カトレアが何やら小さいゴーレムを取り出したかと思うと、その上についてあったボタンのいくつかのうちいくつかを押した。
・・・・・一体いつになったら完全な本物のエリクサーが手に入るんだ?エリクサーを燃料とする古代魔道兵器が起動できないではないか!』
・・・・・燃料であるエリクサーを求め、高い金を支払って偽物だったり、エリクサーを生み出せるスライムとやらを求めて各地でスライムを捕獲し、強制的に戦闘させて進化させようとしているではないか!!それに、そのことが他の国々にばれぬように話そうとしたやつを始末したとかいうのもあるじゃろ!!』
『ええ、超強力な兵器の燃料になると知ったら絶対にほかの国々も求めますからね。地上の翼がなき者たちはごみのような存在と言っても過言・・・・・
「な、ま、な、なぜ余たちの声が・・・」
「カトレア、いつの間にそれを?」
「一応証拠は必要かと思いまして、ご主人のためにも録音しておきました」
カトレアが再生したのは鉱山内での会話、先ほどの爺さんとの会話だった。以前、使用したことがある小型録音専用ゴーレムを使っていたらしい。いつの間にだ?それに鉱山内部でのその会話の時は従魔用区間にいたよな?
「改良いたしまして、従魔用空間からでも可能になりました」
そういえばカトレアは常にゴーレムをより改良していくからな。そういった向上心はいいぞ。
「ま、これが十分な証拠になるな」
「くっ、まさかそんなことができるとは・・」
「まあ、古代魔導兵器云々は別にどうでもいい。何をしようが国の勝手だからな」
「「はあっ!?」」
爺さんとそのバカ孫は素っ頓狂な声を上げた。予想してなかったんだろうな。
「だが、他の国で勝手に動き回り、人の従魔を奪っていくことが俺には許せんのよ」
そこだけ本当に怒りがある。従魔は魔物使いにとっては家族同然でもある。その家族を奪っていくのはどうしても許せなかった。
抑えるが、怒りがわずかに漏れる。その気迫に周囲は少し圧倒された。
普段からそばにいるハクロたちもである。ゼロが心の底から怒りを抑えながらもわきでているを感じ取れたからだ。
「家族のような従魔をさっラトは許せない。かといって、お前のようなやつを殺すのはいろいろと問題がある」
「と、当然だろ、余はこの国の国王だぞ!!」
ゼロの怒りの気圧に少しシミができた星光王国の国王だったが、そこは国王。一応しっかりと返事するぐらいならできた。
「だかな、ようはばれなきゃいいんだよな?」
「ひっ!?」
速攻でその意味が分かったのだろう。死体がどうやってしゃべる?原形をとどめさえしなければ誰かもわからないよな。このせかいDNA検査とかはないからな。魔法はあるがそういった魔法はない。
「おい、シャンポン!こいつをどうにかしてくれ!!」
シャンポンっていうのかその禿頭のSPみたいな人は。
「いえ、無理ですね。さすがに私でもこの怪物殺しには勝てないでしょ?ですので・・・」
「へ?」
ぶちいっ!!
それは一瞬だった。シャンポンとかいうSPみたいな人が動いたかと思うと、あっという間に国王の首をもぎ取ったのだ。刃物がなかったとかそういうわけだろうが・・・。
あっけなく国王の命はそこで途切れた。
あまりにも唐突過ぎて俺たちはぽかんとしていた。誰が予想できただろうか?
「ふふふ、さすがに驚いたような顔をしていますね怪物殺しのゼロさん」
「・・・あまりにも予想外すぎるんだが」
やっと何とか現実に戻ってこれたよ。
「なんでそんなろくでなしの模範的な国王の首をいきなりもぎ取ったんだ?切るとかの方法がないわけじゃないだろ?」
「ツッコムのそこですか!?もう少しこう、『はあっ!?』とか、『な、なんでだ!?』みたいな藩王があっていいはずでしょうが!!」
「いや、もうインパクトが強すぎて・・・」
さすがにツッコミしきれないからな。どっちかというと俺はボケ担当みたいな感じだし。
「ん?お主、今気が付いたが女か?変装のためにそんな禿げ頭にしたのかのぉ?」
「特殊メイクなんですけど!?わざわざ頭剃らないでしょ!!」
え、こいつ女だったの?そういや声がなんか高い。
と、思っている間にそのSPみたいなやつは自分の顔掴んだかと思うと、一気に引きはがして本当の姿をさらけ出した。うわっ、どこぞの3世みたいなかんじだな。
「ふっふっふっふっふ、これが私の正体よ!!」
高らかに言ったその女は、なぜかメイド服を着ていた。
「メイド?」
「あ!!帝国にいたメイドの一人です!!」
ハクロはどうやら分かったらしい。って、なんでわかったんだ?
「なあ、なんで帝国にいたメイドだと?」
「だってこの娘だけ着ていたメイド服が独特的だったですもん!!いつか作ってみようかと思って観察はしていたんです!!」
そうだったのか。というか、だれに着せるつもりだったんだろう・・・自分でとか?
「それもありますが、私はこのバカな国王を利用して古代魔導兵器『ゲイボルグ』を稼働させ、ちょっとある場所を吹き飛ばそうとして画策していたんですよ」
「ある場所?」
というか、黒幕はこいつだったのか。そういや、こいつだけ驚いていなかったもんな。俺の情報をあらかじめ知っていたと考えると不自然じゃないな。それにしてはべらべらしゃべっていくな。
「まあ、その場所は別にいいとして、ついでに怪物殺しのあなたを殺そうとした点は謝りますよ。あれはただあなたの能力を図るためでしたので。あと、ひとつ言わせてもらうならそこにいる美女ともいえるお姉さま方の裸を見たのがうらやましかったとかじゃないですからね」
ん?もしかしてこいつ・・・いや、考えるのをやめとくか。ハクロたちのあられもない姿思い出しそうになったからな。
「まあ、ここまで完全にばれてしまったので、この際すっきりとするためにこの国王の首をもぎ取ったわけですよ。天空人とはいえ、人間とあまり強度に大差はないですからね」
その言葉を深く考えるなら、以前にも人の首をもぎ取ったことがあるのだろうか?
「ま、ゲイボルグはあきらめまして、その代わり・・・・」
何かを懐から取り出した。
「それは・・・・!?」
「ええ、もうお判りでしょうけど『黒魔石』です。魔力吸収改良型のです」
それは前にも見たことがある黒魔石だった。
「これとこの先ほどの国王の首を引き渡しますからこの場は見逃してくれませんか?」
「取引というわけか・・・・・」
先ほどの身のこなし方などからして強い。そう確信はできる。ハクロの糸などで拘束できたとしても、黒魔石で怪物化されても困るな。
「・・・わかった。その代わり、一つ聞きたいことがあるがいいか?」
「いいでしょう」
一応判断し、取引を応じることにした。黒魔石のデータはほしいからな。それに、怪物化されたら確実に厄介だし。
「黒魔石を扱っている中に仮面の男はいなかったか?」
前にダンジョン都市で結局逃げたやつだ。
「いますよ。最近慢性疲労がたまりまして休養中ですけど。温泉に最近はいりに行ってやっと回復したようですが」
「・・・苦労していたんだなあの仮面の男」
黒魔石だけにブラックな企業にでも勤めているのか?
「では、こちらをどうぞ」
黒魔石と生首を受け取った後、メイド服の女はそのまま素早く詠唱したかと思うと姿を消した。転送魔法のようである。
「さて、爺さん、この生首どうしよう・・・」
取引した後、俺たちは爺さんとともにその生首の扱いに困るのであった・・・。
生首だけでも持っていってほしかったかも。
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「へえっ、黒魔石渡しちゃったんだ」
「ええ、さすがに賢明で取引に応じてくれましたしね」
「よく帰ってこれたYO」
星光王国の真下にあった大地の草原に、三人の人がいた。仮面と、メイド服と、語尾が治ってないやつである。
「今回の怒りの気迫はすさまじくて、平気そうな顔をしていましたけど内心ガクブルでしたよ」
「大変だったねぇ」
「結局その古代魔導兵器は手に入らなかったんだROU?」
「ですが、ちょっと報告にうらやましいのがありまして、危うく「あのお方」の可能性があるゼロさんを殺しかけましたよ」
「・・・・なにがあったんだい?」
しばし沈黙が漂うのであった。
黒魔石もどうしようか・・・・初めて手に取ってみたとはいえ、なんか怖いな。




