『爺さんの正体』
爺さん参上!!
「おや、これはこれはお爺様、久しぶりですね」
「このバカ孫が!一体何を考えてやっているんじゃ!!」
爺さんがたいそうご怒りの様子なのに、その爺さんの孫らしき人物は全く動じてはいない様子。
「今は余が、アールベッド・セイコー・カムスこの国の国王なんですよ?先代国王にはとやかく言えないでしょ?」
先代国王!?あの爺さんそうだったの!?
人は見かけによらないというが、あまりにも意外過ぎた。人当たりがよさそうな感じでなんか好々爺って感じだったしな。
「ん?でもそしたら孫じゃなくて爺さんの子供が国王のような?」
「何か理由があるのでしょうかね・・?」
こっそりつぶやきながらその様子を俺たちは見ていた。
「我が子に王座を譲ろうとしたら急死し、そのためその子である孫のお前に王位を継がせたのに、何を考えて王国の負の遺産である古代魔導兵器『ゲイボルグ』を作動させようとしているのじゃ!!」
「負の遺産という割には、なんで残っているんですか?だから使いたいんでしょ?」
「あれがこの国の島々が空に浮くための動力源となっておるからじゃ!!取り外して壊せんわい!!この島々から動力がなくなったら下にある大地に墜落して被害がでかくなるんじゃぞ!!」
・・・うわ、なんかいますごい重要なことを聞いたような気がする。というか、その魔導兵器って燃料ないと動かないのでは?動力源ってことはそれ自体も何かエネルギーを発しているのだろうか?
「エリクサーを燃料として使用して初めてこの島々が本当の姿となるのに、何を言っておられるんですか?」
「今この平和な国で何でそんなことをする必要があるんじゃ!!」
「甘いですよお爺様。最近、王国に怪物が出現したり、帝国が王国に戦争を仕掛けたり、宗教国で騒乱が起きたりとしています。この国にだって守るだけの戦力は必要でしょ?」
それ全部俺が何とかしちゃったやつだ。しかも何年か前のものもあるし。
「それに、『怪物殺し』とかいう冒険者もいる。彼はランクS相当のモンスターを何体も引き連れているというではないですか。この国を攻め落とすことだって可能ですよ」
そんなつもりは全くないんだが・・・。なんかむかつくな。
「かといって、古代魔導兵器はやりすぎじゃ!!」
「うっさいですねー、これが老害と呼ばれる老人でしょうか?」
「違うわい!!それに、燃料であるエリクサーを求め、高い金を支払って偽物だったり、エリクサーを生み出せるスライムとやらを求めて各地でスライムを捕獲し、強制的に戦闘させて進化させようとしているではないか!!。それに、そのことが他の国々にばれぬように話そうとしたやつを始末したとかいうのもあるじゃろ!!」
「ええ、超強力な兵器の燃料になると知ったら絶対にほかの国々も求めますからね。地上の翼がなき者たちはごみのような存在と言っても過言でないほどそういったことには貪欲ですからね」
ひどい人だな。ム〇カかよ。
「とにもかくにも、お爺様にばれては仕方がありませんね。ここで黙って見過ごすか、それとも今死ぬかどちらかを選びなさい!」
そう言い放つと、その孫とやらが爺さんに向けて魔法を放とうとした。というか、言っている間にそうするって選ばせる気もないなあれ。
「やめるなのー!!」
「うおっと!?」
やっと事態が飲み込めたらしいタヨが孫に体当たりを仕掛けた。だが、SPのような人が素早くその孫を肩に担いで避けた。
うん、SPのようなあんたの存在すっかり忘れてたわ。
「こ、このモンスターめが!!この国王である余に対して無礼を働きかけおって!!我が炎よ焼き尽くせ『ファイヤーボール』!!」
激高したバカ孫はタヨに向かって炎の魔法を放った。初級魔法のようだが、威力が妙に高い感じがした。
「させるかよ!!『フォール・ウォーター』!!」
素早く俺は水魔法を発動させた。この魔法はその名のとおり、水が落ちてくる魔法である。
タヨに届く寸前、水魔法によって炎魔法が掻き消えた。
「なっ!?誰だ一体!!」
「俺だよ。この国の国王さん」
「か、『怪物殺し』!?」
俺を見た瞬間、バカ孫は驚いたような顔をした。
ん?そういえば毒のトゲなんかはなっていたやつがいたってことは俺の存在に気が付いたやつがいるはずだよな?こいつがその親玉かと思ったら、俺がここにいることが分からなかったようだから違うのか?
つまり、このバカ国王は俺のことに気が付いてなかったならば、誰があの毒のトゲみたいなのを放ってきたんだ?他にもしかして黒幕が・・・・