『第4島の鉱山にて』
ゴーレムって結構出番が多いんだよね。なかなか活用しやすい。
ゴーレムに乗り込んで、俺たちは鉱山内部のやや外側を突き進んでいた。普通に掘ったら空洞なんかで落っこちたりするからね。
どががががごごがががが!
「結構掘り進みにくいな」
なかなかドリルで掘り進めない。さっきから岩なんかにぶち当たりまくって時間がかかっていた。
『どうやら鉱山じゃから鉱石なんかに阻害されておるようじゃ』
『回転数減少確認・・・エネルギー消費が激しいようです』
形が似ているとはいえ、全動力が無限の◯ッター線とかで動いているわけじゃないからな。動力は魔石と水のハイブリッドという環境に優しい使用でゲッ〇ー線も一部使用みたいな感じだが、あくまで一部だからなぁ・・・。
水の方がなくなってきたようである。冷却水なんかにも使用しているから結構消費が激しいんだよな。普通の水じゃなくて,月の光を浴びて変質した「月光水」を使用しているから予備タンク分を考えると・・・。
「よし、このあたりで一旦内部に完全に入ってそこから徒歩で歩くぞ」
帰りの分も考えるとこの辺で稼働を停止させた方がいいからな。結構消費しているな。
俺たちはいったん鉱山内部にある空洞に出た。
そこから徒歩へ奥に入っていった。
「スラ太郎、どうだ?」
「チカクナッテキタ・・・」
スラ太郎を先頭に立たせ、そのあとをついていく。
「ふむ、このあたりはつい最近人が通った後があるようじゃな。足跡がまだ新しい」
今通っている坑道はどうやら今も使われているようである。
「コッチ・・・・ン?」
スラ太郎が急に歩みを止めた。
「どうしたんだ?」
「キコエナクナッタ・・・」
どうやら声が途切れたようである。
「もしかして死んでしまったのか?」
「チガウ・・・マダイキテイルケド・・・」
何やらよくわからない感じらしい。
歩みを早めていくと、でかい空洞に入った。
念のため慎重に気配を探りながら進むと、空洞の奥の方に何やらいくつかの点があった。
「あれは・・・スライムたちか?」
どうやらスライムたちのようである。だが、ピクリとも動いていない。
近づいてみてみると、全員体中が傷だらけだった。一応まだ息はあるようで、微妙に震えていた。
「この傷は・・・何かと戦った感じか?」
「体中から無理やり魔力が奪われておるな。強制的に何かと戦わされてここに寝ている感じじゃな」
体から無理やり魔力を・・・・・ん?
「黒魔石の時も似たようなことがあったよな」
昔、サイクロプスが魔力を奪われてた弱っていた時があった。そのあとのハグエェの件で黒魔石の実験で魔力が抜かれた個体らしかったと判明したが・・・。
「つまり、また黒魔石によるものか?」
だが、魔力を吸い取るタイプだったのはあの一件以来で、そのあと出てきたやつらは魔力を吸い取るなんてことはしなかったよな。
「・・・!?誰かきます!」
ハクロがあらかじめ周りに警戒のために張り巡らせた糸に何やら反応があったようである。かと言っても、あまりにもこの空間が広いので隠れられそうなところがない。
「ハクロ以外は従魔用空間へ!ハクロは天井に糸をかけて俺を抱えて天井に張り付くんだ!天井ならぎりぎりみられないだろうしな」
「了解!!」
ハクロ以外を従魔用空間に入れ、ハクロは天井に向かって蜘蛛の部分から糸を出して貼り付け、俺を抱えて天井にエレベータのごとく上った。天井に蜘蛛の巣を張り、くっつかない蜘蛛糸の上に乗った。ついでに久しぶりのスキル「隠蔽2」も使用しておいた。
天井に張り付くと同時に、誰かが入ってきた。
「・・それで、実験は順調か?」
「いえ、狙った通りにはうまくいきません。」
二人ほどの男性だ。翼が付いているところを見ると天空人のようである。片方の男は黒服でなんか前世の地球でいうSPのような見た目だ。剥げてつるつるだけど。スキンヘッドかな?
もう片方は来ている服の質が違った。明らかにいいのを着ているようであり、ダッサイ感じだった。こちらのほうが背が高く、金髪でナルシストと言っても過言ないような見た目と雰囲気だった。
「はあっ、エリクサーを生成できるスライムには進化していないようだね」
「スライムにはいまだに未知の事が多いため、どれに進化すれば可能なのかはまだ・・・」
どうやら天井にいる俺たちには気が付いていないようであった。しかし、この話は・・・・。
「一体いつになったら完全な本物のエリクサーが手に入るんだ?エリクサーを燃料とする古代魔道兵器が起動できないではないか!」
古代魔導兵器?そんなものがあるのか。というか、ずいぶんなものを燃料にしているな・・・。
「生成できるスライムに進化させようと、スライムたちを極限まで追いつめて、この坑道に巣くうモンスターと戦わせてはいるものの、『黒鉄スライム』、『ストーンスライム』などになってまして」
「かといって外で大ぴらに戦わせるわけにはいかない。逃げられる可能性があるから、出口が一つしかないこの坑道をさまよわせているのにな」
なるほど、だんだん話が読めてきたぞ。スライムたちを極限状態にして進化を促し、エリクサーを生成できるスライムに進化させようとしているんだな。だが、どのスライムがどう進化するのかはよくわかっていないから各地からスライムを集めてこうしてここで戦わせて・・・・。
「こうして余が様子を見る限り、全く変化はしていないようだな」
「今のスライムたちはどうやら『切り裂きパペット』と戦いまして、疲れて休憩しているようです」
「休憩させずにもっと戦わせればより極限になると思うが」
「そこまで極限状態にしすぎると、死んでしましますからね。ある程度は余裕を持たせてます。まあ、この前手に入れた『黒魔石』とやらで魔力を限界まで奪っていますがね」
やっぱり「黒魔石」か。どうやら中途半端なスパルタだな。
「もっとスライムどもをこの鉱山に投入しろ!どんどん進化を促せ!!」
「はっ!!」
いったん気がつかれないようにその場をこっそり離れ、 ゴーレムで地上に出た。
「思ったよりも大ごとだな」
「エリクサーを燃料とした古代魔導兵器ですか・・・」
「そういえば、昔聞いた事があったのぉ」
どうやらアルテミスは聞いたことがあるようである。だてに長生きしていないな。
「なんでも、ある国で開発された魔導兵器で、たった1発で国を消滅させられるものだったはずじゃ。たしか名前は・・・なんじゃったかな?忘れてしまったが、数発撃ったところで燃料のエリクサーがなくなって動かなくなったと聞く。燃料の時点でわかっておったことじゃがのぉ。
エリクサーは存在している数も超少ない。さらに、偽物も出回っているのだ。普通に人でもできる生成方法自体も材料が難しすぎるらしい。
「それゆえ、体内で生成できるスライムに進化させようとしておるようじゃ」
仮に、スライムたちを救い出したとしても黒魔石やその古代魔導兵器の問題が残る。結構ややこしい事態のようである。
「そもそもあの男たちは何者だったんだ?」
どう考えてもこの国の重要人物っぽいんだよな・・・。
その正体を探るべく、俺たちは坑道の出口付近に行き、待ち伏せた。こちらの方が早く地上に出れているからな。
しばらく待つと、坑道から二人が出てきた。
「さて、次のスライム投入で今度こそ「このバカ孫が!!」ん?」
ん?なんか聞いたことがある声が聞こえたぞ?
空から下ので見ると、そこにはたいそうお怒りの様子の爺さんと、何かよくわかっていないらしい白い塊のさなぎのタヨの姿があった。
って、爺さんの孫?全然似てねぇ・・・・。
似てねぇ・・・爺さんとはこれっぽちも似てねぇ・・・・。本当に孫なのか?




