『スラパシー?』
ちょっと挑戦。
第1島にて、俺たちは調査を開始した。
だが、口封じがあったぐらいだから慎重にしなければならない。
そのため、店や道端で適当にそれとなく話しかけたりして情報を集めた。
「これといったものがないな」
「なんか最近物価が高くなったとかですね」
「水虫が流行った、『空クジラ』というモンスターが最近このあたりの空を通過した、『ハーピー』の群れが襲撃してきてロリコンどもがさらわれていった、ぐらいしかないのぉ」
「その最後のやつは結構な事件なのでは?」
とはいっても、この島にいる天空人たちに聞いてもロリコンどもがさらわれていったぐらいしかないのだ。
「これはもしかすると国民にはほとんど知らされていないのかもな。国費を使用して何かしているぐらいの意識しかないなこりゃ」
重税とかがかけられていれば国民が何かしらの暴動を起こした可能性がある。しかし、この星光王国では重税とかはなく、普通に第5島などで隠居する人がいるように老後の保障などがしっかり整備されていて、前世の日本よりは確実に安定した国であった。
「国費を多く使用して何かを買っているらしいとかはわかっているが、別に税金がいつも通りだし、そこまで気にはしていないと言ったところか・・・・」
完全に手詰まりである。
「しょうがない、とりあえず宿をとっていったんそこで休むか」
別にそこまで急いでいるわけじゃないしな。宿をとるのは、あの爺さんたちには余り世話になりすぎちゃいけないしね。
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「ふぇ~、空の湯って結構気持ち着いですね~」
宿の従魔用の風呂にて、ハクロはしっかりと肩まで湯に浸かっていた。
ふつう、彼女の体格からして宿に肩まで湯に浸かれるところはあんまりない。だが、ここ星光王国の宿では、空を飛ぶモンスターは大型のものが多いのでそれらがゆっくり浸かれるようにと、宿の主人がわざわざ湯の深さを深くしているのだ。そのため、ハクロは肩までしっかり浸かれていた。
「我らは湯の中に完全に浮かぶことにはなるがのぉ」
「私は木の椅子を縦に延ばせば調節できる・・・」
その分、他のアルテミスなどにとっては浸かりにくくなっていたが。
「・・・・ン?」
同じように体を湯の中に入れていたスラ太郎が急に頭の触角がたち、何かを察知したような表情になった。
「どうしたんじゃスラ太郎?」
「ンー?ナンカヨバレテル?」
ざぱあっつ
「イッテミルー!!」
「あ、スラ太郎!!」
スラ太郎は勢いよく湯からあがり、そのままトテテと駆けだした。
「こりゃ待つんじゃスラ太郎!しっかり身体を拭かぬとスライムの体に湯が混じるじゃろ!」
「そうですよ!それに勝手に駆けださないでくださいよ!」
「待ってスラ太郎・・・」
ハクロたちも慌てて湯からあがり、スラ太郎を追いかけた。
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「あー、いい湯だった」
俺は風呂からあがって宿の部屋にてつい買ってしまった牛乳に似た飲み物を飲んでいた。
ここの宿はどうも和風な感じで、なんとなく旅館っぽい。
がらっつ!
「ゼロ様!スラ太郎が勝手に風呂から駆け出しました!」
「主殿!スラ太郎がどこかへ走っていったのじゃ!」
「ご主人!捕まえようとしたのだけれどもスラ太郎の体が滑ってうまく捕まえられなくて・・」
「おい、お前ら一体何・・・ってなんで服着てないんだよ!!」
「「「あ」」」
いきなり戸が開いたかと思うと、全裸のハクロたちの姿があったのだ。それぞれまだ体をよく吹いていなかったのか水が付いており、タオルすら巻いてなかった。つまり、風呂からあがってずっと・・・・。
「み、見ないでください!!」
「見るな!」
「見ないで!」
服を着ていないことに赤面し、それぞれから糸、手のひら、木の根の攻撃を受け、俺は宙を舞ったのであった・・・。
これって別に俺が悪いわけじゃないよな・・・・。
「で、スラ太郎が勝手にどこかへ走っていったと」
「そうです、いきなり何か感じたらしく、そのまま湯からあがって」
「抑えようとしたのじゃが、いつもより体がぬめって糸や、手や、木の根じゃ抑えられなかったのじゃ」
「そのまま慌てて部屋に入ってしまったわけで」
とりあえず、落ち着いて話すことにした。なお、全員の頭にはげんこつ1発入っている。こっちは何もしていなかったからな。裸を見た?んなもん攻撃された衝撃で記憶が吹っ飛んだよ。
「スラ太郎が勝手にか・・・今までこんなことがあったかな?」
記憶にある限り、スラ太郎はここまで自分勝手な行動はしていなかったはずだ。
「なにやらスラ太郎の頭の触角がいきなり反応しておったな」
「何かを感じて、それに引き寄せられた?」
「というより、自分から行った感じですかね・・・」
「そういえば、この間のスライムクラブ全巻読破中に、『スライムは言葉を話さないものが多いが、それは仲間の間で念話みたいなことを行っているようである』って記事が確かありました」
スライムクラブはスライムに関しては信用できる情報だな。
「つまり、テレパシーならぬスラパシーみたいのをスラ太郎が感じ取って、それに向かったと」
だが、追いかけようにもどこにいるかわからん。スラ太郎の足の速さはけっこう速いからな。某RPGのメタル系のやつ並みか?
「召喚を使えばいいと思うんじゃが」
「あ、その手があったか」
魔物使いなのに、その手段をすっかり忘れていた。
召喚は本来は従魔用空間から出す際に使用するものだが、離れた場所にいる従魔を召喚できるはずだったな。
「来い!スラ太郎!」
いつものように、召喚すると、スラ太郎が目の前に出た。
「!?」
どうやら驚いているようである。そりゃ走っている途中だったら驚くわな。
こうしてまずは事情を聞くことにしたのであった・・・・。
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「あの、怪物殺しの報告をしていたやつが、いきなり鼻血吹いて倒れました」
「何があったんだ?」
「どうやらその、怪物殺しの従魔の裸を見てしまったとか」
「・・・美しい女性に見えるやつばかりだもんな。なんてうらやまし、ゲフンッ、けしからん!女の見張りに交代させて、その鼻血を吹き出した奴は例のモノの餌にでもしておけ!!」
「わかりました」
さて、スラ太郎はいったい何を感じたのか?




