『サクサクと』
サクサクいけるかな
ダンジョンに潜って早4時間、俺たちは思ったよりも早く10階層のボスモンスターの部屋の前についていた。ここまで魔道具の収穫はなかったけどな。
「魔道具が1個も出ないままもうボスモンスターか」
「確か11階層以降からのようですね」
「じゃが、あのセイヌマカがいけたのは15階層までのようじゃ。そこから群れで襲ってくるモンスターが増えたらしいからのぉ。いくらランクSとはいえ、ここの基準でいうと低いし、群れは一人では対処しにくいしのぉ」
まあ、その分最初はサクサク進めるようだけどね。
「ここのボスモンスターは『ロックゴーレム』だっけな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ロックゴーレム」
全身が岩でできたゴーレムの1種。たかが岩と侮れず、自ら転がって体当たりを仕掛けてくる。また、いくら破壊しても核となっているらしい体内にある魔石を壊さない限りいくらでも復活する。ランクはC。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「カトレアがおるからのぉ、ゴーレムなんて珍しくもなくなったわい」
まあ、いろいろ作っているもんな。
ボスモンスター部屋の中に入ると、そこには1体のゴーレムがいた。全身が岩でおおわれていて、頭部の目にあたる部分は光っているように見えた。
「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
俺たちの侵入に気が付いたのか、こちらに向かって駆け、いや、転がってきた。
「ホントに転がってきたな」
「じゃが、軌道が単純だから読みやすいのぉ」
全員簡単に避けた。
ドッゴォォォォォォォン!!
そのまま壁にゴーレムが激突し、砕ける。だが、すぐに再生した。
「再生力だけはすごいのぉ」
「ですが、今ので核の位置はわかりました。的確に砕けます」
カトレはさすがゴーレム制作のプロというべきか、核の位置が分かったようである。
「それじゃ、もう倒してしまえ」
「了解ですご主人」
カトレアは足を少し動かしたかと思うと、いきなり地中から鋭く先がとがった木の根が飛び出て、再びこちらに転がろうとしたゴーレムの胴体を貫いた。
その瞬間、ゴーレムの目の光が消えて崩れて動かなくなった。
「やりました」
「この攻撃法やっぱりなんか寒気がしますね・・・」
まだあれがトラウマなのかよハクロ。
「お、次の階層への階段が出たな」
11階層に俺たちは降りて行ったのであった・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宗教国ギルドにて・・・・
「はぁ?冒険者をまーたあのダンジョンに入れてほしいやと?」
「そうだ、我らが神の「害」となる人物を殺すためにはどうしても武器が必要なのだ」
モウカリは神殿から派遣されてきた使いの者とかいうやつと交渉させられていた。
(めんどくさいな・・・・そもそも今はゼロはんがこっそり潜りこんでいるというのに)
ゼロと交渉してしばらくは冒険者をダンジョンに入れないようにしている。そもそも神殿との交渉自体が反吐が出るほど嫌だった。
「うちらになーんの利益があるっちゅうねん。だいたい何時も魔道具なんかはあんたらがすべて持っていくさかいに、こちとらやる気も出ないんや」
「そちらは冒険者を鍛えられるではないか」
「死んだら元も子もないやろ?そもそもあんさん方には確かSランク冒険者グループがいたとちゃいまんすか?」
「そいつらは先日「害」の排除に出かけたが、全員失敗したようで戻ってこない。そのため、その害に対抗する力が我らにはほしいのだ」
一応、メタドンからの手紙でそいつらはすでにゼロたちがぶっ倒したのは知っている。
(「害」とゼロはんのことをいっているのやろうけど、なんでそもそも急に敵視し始めたんやろうか?)
ゼロが冒険者として名前を挙げてきたのは何年か前に有った、王都にでた怪物を倒した時からである。そのときにはこのギルドでもその名前はでていた。美しいアラクネを引き連れている以外にも、ドラゴンを従魔にするだの、などのうわさがあった。なのに、なぜ急にこうしてゼロを「害」としたのか?
「ちょっと聞きますけどなぁ、その「害」でしたっけ?なんで「害」なんやろうか?」
「神が決めたことだ」
「それは誰が聞いているんや?」
「我らが神官殿が神の声を聞き、それを告げるのだ」
その神官が超怪しい。
「そういや、この国の宗教がその神官になったときから変わってますなぁ。人種差別とかひどいがな」
「我らが神が、我々人間をもっとも上の存在と認めたからだ」
その使いの者の目はどことなく狂気を感じさせた。
その目を見て、モウカリは少し寒気がした。
(どう考えても何かがおかしいやろ。そこまで盲信的なんやのは・・・。ん?「盲信」か。もしかしたら)
「一応つまんないことを聞きやすけどな、その神官、常日頃から肌身離さずしているものがないでっしゃろか?」
「神官は常に神にお祈りしておられる。そんなことを言われてもわからん」
(ちっ、もしかしたらと思ったんやけどな・・・まあ、ゼロはんが戻ってきたら相談してみるか。その前にあのくそ剥げ親父にも聞いてみるかな。いやだけどあいつならこういったことはわかるだろうし)
モウカリの頭には、ある一つの考えが浮かんでいたのだ。ここまで信者が盲信的になる理由が・・・・。
「で、冒険者はどうするのだ」
「あー、じゃあ一応派遣しまっせ。ただ今回は12階層までにしておくんな。ちょっとこちとら依頼もあるようだかんね」
「なるほど、まあ12階層なら魔道具も出ている。わかった。そこまでにしておこう」
(12階層ぐらいなら、うちの冒険者たちが着くころにはもうゼロはんが突破しているやろうからな)
交渉を終え、使いの者が帰った後、モウカリは信者がなぜ盲信的になっているのかの理由を探らせるべく、嫌々ながらもこういったことには詳しい奴に連絡するのであった。
盲信的な理由か・・・・




