『冒険者学校の一日特別講師 1』
この話は書いてみたかった。
毎年恒例の王都の夏祭りがだんだん近づいてきたころ、俺は今冒険者学校の教壇に立っていた。
「えーっと、Bランク冒険者魔物使いのゼロです。今日1日特別講師をいたしますのでよろしく」
教壇にて、挨拶するとあちこちからひそひそ声が聞こえた。
「あれがたった数日でこの学校を卒業した人か・・」
「従魔たちの姿が見えないけど、従魔用空間にいるのかな?」
「怪物殺しのような異名がほしい・・」
「なかなかいい男ですね・・・」
「早くスラ太郎ちゃんを見たい・・」
なんかいろいろおかしいのがあるような・・・。
なぜ、俺が今こうして冒険者用学校の1日特別講師をしているのかというと、話は昨日にさかのぼる・・・
昨日、ギルドにて何か簡単な依頼でもと探していた時だった。
「おやゼロ君、久しぶりだね」
「あれ?モッセマンさんではないですか」
ギルドにてたまたま冒険者用学校の校長であるモッセマンさんに会ったのである。
「なんでモッセマンさんがここに?」
モッセマンさんは一応、校長であるからそんなに学校からでないし、ギルドにいること自体が珍しかった。
「もしかして、冒険者用学校の先生となってくれる人を探してですかね?」
ハクロのその質問はどうやら当たっていたようであった。
「そうだよ。たまにはこうしてギルドにて探しているんだよ。まあ、最近の新入生のレベルからできるだけ高ランクの人を探しているんだけどね」
どうやら、最近の新入生のレベルは俺が在学した時よりも上がっているらしい。
「なにせ、ゼロ君の影響のせいか冒険者希望の人が増えたからね。人を探しているのさ。人手不足になって来たからね」
どうやら魔物使いの数も増えていたようである。なぜかスライムの従魔ばかりになっているらしいが、ソレでもそれなりに育てられているという。
「そうそう、ついでにゼロ君も先生をやってみないかい?」
「先生ですか・・・、でも俺ってほとんど教わることなく卒業しましたよね?」
一応、卒業までの最短記録保持者になっているようである。
「いや、魔物使いのクラスにて1日だけ勤めてほしいんだよ。そこでさ、魔物使いの厳しさを教えてほしいんだよね。何せ、従魔がスライムばかりなのに自分は強いと思うような人が増えちゃったからね。あ、べつにスライムを馬鹿にはしていないよ!!素晴らしい無限の可能性を秘めたモンスターだと思っているからね!!」
この人、学者バカというよりスライム馬鹿になってきたな・・・。その原因が俺のスラ太郎の進化によるもののような気がしてちょっとなんとも言えなくなるなぁ・・。
まあ、別に断るようなものでもなかったし、こうして引き受けたわけなんだが・・・。
「先生!!僕たちのスライム軍団どうですか!!」
「こちらのスライムたちもどうよ!!」
「こっちなんて珍しいタイプのスライムだぞ!!」
なんだこのスライムだらけの状況は!?
一応、今どんな従魔がいるのかを知りたかったから、みんなに従魔を全員出してもらったのだ。
そしたら、今いる生徒は36人ほどだったのだがこのうち35人ほとんどが必ず1体はスライムを持っている状況だった。俺の時は一応コボルとなんかもいたのに、ほとんどスライムだらけだよ。残る一人はスライムではなくて、『ハンドマン』という珍しいモンスターだったのが驚きだけど。
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『ハンドマン』
捨てられた手袋がモンスター化したちょっと珍しいモンスター。元が手袋なだけに手だけのモンスターではあるが、剣や杖などを持たせて攻撃できる。特徴としては、右手なら剣を扱い剣技を覚え、左手なら杖を扱い魔法を覚えるという。たいていは片手しかいないが、稀に両手で1つのハンドマンがおり、そのハンドマンは『ダブルハンドマン』と呼ばれる希少種である。ただし、剣や魔法が使えるからとは言ってもなぜか武闘系はいないという。ランクはDだが、過去に育てまくってSとなったものがいるらしい。
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「えっと、なぜみんなスライムばかり従魔にしているのかな?」
あまりに多すぎるので、気になったから聞いてみた。
「えっとですね、先生が持っている従魔のスラ太郎に憧れたのもありますが」
「これを読んだからさ!」
生徒の大半が何かを高々と掲げた。
「『スライムクラブ』か」
「そうだよ!!ちなみに今月は増刊号でさらにいっぱいいるの!!」
「様々な種類がいるから全部見てみたいんだよな」
「しかもスライムでも強いのはいるしな」
このスライムだらけになっている元凶はモッセマンかよ!!
この日、俺は改めて「スライムクラブ」の恐ろしさを知ったのであった・・・。
まだ続くよ




