『リーゼ コンサート3』
珍しく黒魔石が出ない章である
コンサート当日、俺たちは会場の裏楽屋にいた。
「リーゼ、緊張はしていないか?」
「〇」
緊張はしていないようである。どっちかというと俺の方が緊張しているんだよな。あれか、状態異常に緊張が含まれていてそれがないという事なのか?
「ゼロさん、リーゼさんの舞台のセットが終わりました」
「お、ゼルゲさん、ごくろうさまです」
「それで、ここ数日リーゼさんが狙われていたという話は聞いていましたが大丈夫でしたか?」
「ええ、あの毒ガス以降は音沙汰有りません。ですが、それなら今日のコンサート狙って襲撃してくる可能性があります」
「その可能性は確かにありますが、一応会場の警備は万全にしていますので」
「『絶対安全、絶対安心』なんて言葉はこの世の中有りませんからね。ですがまあ、もう大丈夫かと」
「どういうことですか?」
「それはですね・・・・」
『それでは、今日のコンサートにて歌っていただく方の登場です!!盛大な拍手にてどうぞ!!』
司会はモッセマンである。この人、多種多様な司会を務めているんだよなぁ。
と、そんなことを思いながら、俺はステージすぐ近くの超特等席にて見ながら思っていた。
そして、その声と同時にステージの中央が開き、そこから水槽に入ったリーゼが出てきた。
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「よし、一斉に襲い掛かれ!!」
ステージから少し離れた観客席にて、横にいる荒くれどもに指示を出す人物がいた。キシリの部下である。
彼は、この日のためにできるだけ多くの荒くれ者たちを集めてこのステージに突撃させて滅茶苦茶にしようとしていた
だが、指示を出したはずなのに誰も動かない。
「どうしたんだお前ら・・・!?」
横を見ると、荒くれどもの姿が消えていた。
「な、どこにいっ!?」
慌てて探そうと立ち上がった瞬間、首に何かが絡まって締め上げられた。そして、そのまま意識を失ったのであった・・・。
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「遅いねぇ、あいつら」
キシリは自分の事務所の机にて報告を待っていた。
今日行われるコンサートにて、襲撃して滅茶苦茶にするための指示を出しに行った部下を待っていたのである。
コンコン
「お、きたか」
ドアをノックする音がしたので成功したのかと思い満面の不気味な笑みを浮かべるキシリ。
だが、数秒後その顔は絶望に染まった。
報告しに来た部下だけのはずが、その部下は簀巻きにされていて、その横には、
「か、『怪物殺し』・・・!!」
ゼロの姿があった。そして、その後ろにはアルテミス、ハクロ、カトレア、スラ太郎、そしてリーゼの姿があった。
「よっ!初めましてだなおばはん。まあ、そっちは俺のことを知っているだろうがな」
「な、なんでお前がこの事務所に来たんだ!!私が何かしたっていうのかい!!」
「ええ、ぜーーーーーんぶ知っていますよ。毒ガスや、今日のコンサートでの襲撃の企みなどをね。何もかもすっかりあなたのその簀巻きになった部下が吐きましたよ」
キシリは蒼白になった。だが、今ならまだ打つ手がある。
「し、知らないよ!!その部下が勝手にいろいろやったんだよ!!」
「つまり、自分は一切かかわっていないと」
「ああ、そうだよ!!」
「じゃあ、これはどう説明つけるんだ?」
ゼロが手で合図すると、カトレアが一体の小さなゴーレムを出し、その背中にあるボタンを押した。
すると、そのゴーレムから音声が流れ始めた。
・・・『なら、直接会場を襲撃するのはどうだ?そしたらコンサートも滅茶苦茶になり、泣きついてすがってくるだろうね』
『では、なるべく足が付かないようにいたしますのでやってみせます』
「なっ!?」
「これはあんたの声じゃないのか?」
それは間違いなく自分だとキシリはわった。
実は、あの毒ガス事件のあとゼロはカトレアに音が録音できるゴーレムの制作を頼んだ。そして、スラ太郎の眷属の中で体が小さくて潜入しやすい『ミニスライム』にもたせてこっそりとここに忍び込ませていたのだ。
「で、これでもう何も言えないな?」
「ぐっ・・・」
「俺の家族に手を出そうとしたその行為、ここで落とし前をつけてもらうぜ」
「ひっ、ぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
その日、リーゼのコンサートが成功した裏である事務所がつぶされ、さらに数多くの不正が暴かれて、一人のおばはんが刑に処されたのであった・・・・。
後日談
リーゼのコンサートは大成功し、そのあとまたコンサートが開かれる予定ができたのはまた別の話である・・・。




