閑話 宿にて その2
何気にこの閑話シリーズ化しそう。
ギルドからもう何曲かアンコールをされたが、もう休みたかったので切り上げ、宿に着いた。
「まさかアンコールがかなりあるとはな」
「この都市中の人が集まっていたんじゃないでしょうか?」
「まあ、さっさと風呂に入ってさっぱりしたいのぉ。沼地だったから汚れたのじゃ」
「フーロ、フーロ」
「私はあまり汚れませんでしたが」
そう言えばカトレアは木の椅子に座りながら進んでいたから、足に泥がはねなかったんだな。ハクロも糸を渡って移動してたし。
「?」
「リーゼどうしたんだ?」
「あ、そうか。リーゼはダンジョン生まれじゃから風呂を知らんのじゃな」
「それって人生、いやモンスター生の半分は損してますよ⁉︎」
「⁉︎」
ハクロがなんか勢いよく言ったらリーゼの顔が驚いたようになっていた。
そりゃそうか。ダンジョン内には風呂がないからな。リーゼがいたのは沼地だったし、心地よい風呂を知らないんだろう。
「そういえばさ、リーゼって風呂に入って大丈夫かな?」
一応、下半身魚だから煮物になりそうなんだが。
「モンスターじゃから魚とは違って多分じゃが、大丈夫じゃろ。そもそもセイレーンは本来は海に住むモンスター。海には海底火山などの影響で温泉のようにあったかくなっておる場所があるからな。そこにもモンスターはある程度いると聞く」
「じゃあ、風呂に入っても大丈夫なんだな?」
「ダメじゃったら水風呂にでもいいじゃろう」
とりあえず、俺は男湯、アルテミス達は従魔用の風呂に分かれた。ちなみに、覗き魔対策が前の120倍にされているようだが、今回こそは命知らず野郎共はいないだろう。あの晒し者にされた奴らがいたしな。
風呂から上がった後、急になぜか宿屋の人が増えた気がした。
「おばちゃん、なんか人が増えていませんか?」
気になったので、この宿屋の主人のおばちゃんに聞いた。
「ああ、増えたよ。ざっと30人ぐらいかね」
「団体客でも入ったのですか?」
いつの間にか風呂から上がってきたハクロが横にいた。
「ハクロちゃん、それが違うのよ。なんか本当に急に泊まるとかいう人ばかりで、今は満室状態なのよ」
「そうなんですかー、不思議ですね」
このおばちゃんすごいな。すごい普通にハクロに話しているな。というか慣れすぎだろ。
「おばちゃん!ここに怪物殺しが泊まっているんだよね!」
なんかいきなり俺のことを言ってきたんだが。
「というか、今すぐ横にいるよ」
「え、って本当にいた!アラクネを連れてるし間違いないぞ‼︎」
「おおっ!そうか!」
「怪物殺しがいたか‼︎」
できるだけその名で読んでほしくないんだが。なんか人聞き悪く感じるんだよな。
「俺が確かに怪物殺しのゼロだが、なんで俺目当てなんだ?」
ま、一応気になったし聞いてみるか。
「なあ、お前さ、セイレーンを従魔にしてギルドで少し歌わせていただろ!」
「もう一度聞きたいから俺たちゃ追いかけて来たんだよ!」
「頼む!セイレーンの歌声をせめてもう一曲だけ聴かせてくれ‼︎」
全員土下座して頼んできたんだが。ああ、リーゼ目当てだったのか。
「ハクロ、リーゼは?」
「それがですね・・・」
ん?何かあったのか?
「リーゼが風呂に入った途端に、気に入りましたようで中々風呂から上がってこなくて、ゼロ様になんとか上がるように言ってもらえないかと私だけが上がってきていたんでした」
それを早く言えよ。
リーゼを上らせるため、従魔用の風呂に向かうと既に着替えていたアルテミス達がいた。
「主殿、リーゼが・・・」
アルテミスが申し訳なさそうに後ろを指差すと、そこには風呂に浸かりすぎてのぼせて目を回していたリーゼの姿があった。
「うわぁ、茹ってるよ」
「カトレアが木の根で引き上げて、スラ太郎のスライムの『アイススライム』で冷やして居るところじゃ」
よく見ると枕になってるアイススライムがいた。
「おーい、リーゼ大丈夫か?」
「×」
指を使って「×」か。
「今度からあんまり長風呂するなよ」
「〇」
しかしこれじゃあ、今日はもう寝かせたほうがよさそうだな・・・・。
リーゼをカトレアが作った簡易水槽に入れて、そのまま従魔用空間お腹に入れて寝かせたのであった。
リーゼの歌を目当てにしていた冒険者たちは、明らかにがっかりしていたけどそのリーゼが風呂でのぼせたからと説明したらみんな納得してくれたよ。
「まぁ、無理に歌ってもらう必要がないもんな」
「元気になったら聞かせてほしいな」
「そうそう!元気なほうがいいよ!!」
「「「そっちの方が可愛いしな」」」
なんかすでにリーゼファンクラブができているようだった。ハクロたちに続いてか・・・・。王都に戻ったときにもなんかできそうだなこりゃ。
ちなみに翌日、無事復活しました。
「でも長風呂は禁止だからな」
「〇」




