『2度目のダンジョン探索2』
ダンジョンの広さって、実は結構アバウトなところもある。
順調に俺たちはダンジョンを進んでいたが、少し疲れてきたので休憩することにした。
その場でカトレアに木を生やしてもらい、簡単なテーブルと椅子を作ってそこでお菓子をアルテミスに出してもらった。
「やっぱこの階層は広いのぉ。10階までのものとは広さが違うわ」
「まだ15階層ですもんねー」
「ヒローイ!」
「歩き疲れてきましたよご主人」
あれ?カトレアって歩いているのか?木の椅子に座りながら移動しているよね?
とにもかくにも、時間的にはダンジョンに入ってそろそろ夕方ごろになってきたようである。時間が分かるのは時計を買っていたからね。この世界中途半端だけどそれなりには発達しているみたいだからなぁ。
「そうだな、せめてあと1階層進んでから地上に帰還しようか」
「そうですね。ダンジョン内ってなぜか結構汚れてきますからね」
「お主は途中でこけたからじゃろ。そんなに足がありながらつまずいて見事な転び方じゃったわい」
「それを言わないでくださいよ!!そんなんならアルテミスだって途中で・・・・あれ?」
何か言い返そうとしたハクロがふと、進行方向であるダンジョンの奥の方を振り向いた。
「ん?どうしたんだハクロ?」
「何か聞こえませんか?」
「ん?確かに何か聞こえるのぉ」
どれどれ、耳を澄ませてみるか・・・。
・・・ォォ・・・・
・・タ・・・・・
・・・・ヒィエェ・・
・・・・助けてくれよぉぉぉぉ・・・
「悲鳴!?」
「誰かが助けを求めてこちらに走ってきているようです!!」
その声が聞こえた奥の方を見ると、何人かの冒険者と思われる集団が走ってきていた。
「あ!!お前らも早く逃げろ!!」
「早く逃げねぇとやつにやられるぞ!!」
俺達に気が付いた冒険者たちは口々にそう叫んできた。
冒険者たちはかなり必死になって逃げているようだった。よく見ると返り血を浴びたようなものがいた。
「どうしたんですか一体!?」
冒険者たちに合わせて俺たちも走り出した。
「俺たちはこの先の階層にあるフロアで金を採っていたんだ!!そしたら急にあいつらが襲ってきて」
「あいつらって?」
「主殿!!あれを!!」
アルテミスのは何が来たのか分かったようだった。
アルテミスが指さす方向を見ると、何かのモンスターの群れが押し寄せてきていた。
「『イノウシシマウシ』の群れ!?」
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「イノウシシマウシ」
見た目が、頭は牛、体はイノシシ、足は馬のようなモンスター。群れで行動し、気性が荒くすぐに襲い掛かってくる獰猛性がある。その最大の特徴としては、破壊力抜群の突進で岩を粉砕してしまう。その突進の危険度によりランクはC。ついでに、焼いて食べるとかなりおいしい食材になる(命がけだが)。
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「ああ、あいつらが急に襲ってきやがったんだ!!」
「でも、あいつらはこの階層にはいないはずなんだよ!!」
走りながら確認してみると、確かにあのモンスターたちは24階層から出てくるもので、この階層に合出ないはずらしい。
「そのうえあのモンスターたちがしつこく追いかけてきて逃げきれねぇんだよ!!」
結構足に来ているように見えた。かなり走ってきたんだろう。
「転送室は使わなかったのか?」
「そ、それがそこまでの地図をなくしちまって」
なるほど、だから現在進行形で逃げ切れていないのか。
「アルテミス!!この先確か天井が高い部屋があったよな!!そこで人化を解除してあいつらを丸焼きにしてやれ!!」
「わかったのじゃ!!」
「な!?もしかしてそこの走っている女って人間じゃないのか!?」
「あ!!あの美しいアラクネは確か怪物殺しが従魔にしているっていう」
今頃気が付いたのかよ!!
とりあえず、俺達プラス逃げてきた冒険者たちは何とか天井が高くなっている場所にまで来た。
「ここで人化解除してやれ!!」
「人化解除!!」
アルテミスがそう叫んだとたん、一気にその体はドラゴンの姿になった。
「で、でけぇ・・・これがドラゴンか」
冒険者の一人が驚いてはいるが無視だ。それよりも迫ってきたモンスターたちを相手にする必要性がある。
「アルテミス!!できるだけ焦がすなよ!!」
「ちょっと難しいが・・・威力最小『ファイヤー・ブーストブレス』!!」
アルテミスがいつもより火力を落とした炎をはき、追いかけてきていたイノウシシマウシの群れは一気に炎に包まれた・・・。
「いい匂いだな」
「うまそうですね」
「火力制御できたのじゃ」
俺たちの目の前にはおいしそうに焼けたイノウシシマウシの群れがあった。
「た、助かったぜ怪物殺しとその従魔のドラゴンのねーちゃんよ!!」
「お前たちは俺たちの命の恩人だぜ!!」
冒険者たちにも感謝された。
「しかし、このモンスターたちってここよりもっと深いところのやつだよな。なんでこの階層にまで?」
「それは俺達にもわからねぇ。ただ、いつものように金を掘っていたら急に襲ってきたんだ」
「ふむ、なんか妙じゃの」
「どうしたんだアルテミス?」
「いや、このモンスターたちは今我が焼いたじゃろ?」
「そうだよね。おいしく焼けたよね」
「今見てみて分かったのじゃが、こいつらの皮膚少し見てみい」
「ん?」
言われてその焼けている肌をよく見ると、明らかに今焼けたばかりのものではないようなやけどの跡がいくつかあった。
「これは誰かが炎系の魔法、もしくは我のようなブレスで焼いたものじゃ。こ奴らが襲ってきたのはそれが原因じゃろ。何者かに焼かれてパニックになって、それで何とか逃げてきてお主たちに八つ当たりをしたってとこじゃな」
「しかし、俺達には魔法を仕えるやつはいないぜ。なんせ筋肉集団『マッスルズ』というグループ名で組んでいるほど鍛えているもので構成していて、誰も魔法なんて使えなかったんだよな」
「と、なると誰が一体こいつらを焼いたのじゃ・・・?」
どことなく、重い空気がその場を漂ったのであった・・・・。
いったい誰が、何のためにこのモンスターたちを倒さずに焼いたんだ?
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「おお!!私でもこんだけの威力の火魔法が使えたぞ!!さすが黒魔石だな!!」
「しかし、あのモンスターたちを倒し切らなくてよかったんですか?」
「まあ、別の冒険者たちが倒すだろうしな。構わんよ。それよりも次はあのモンスター相手に・・・・」
ダンジョン26階層にて、まるで新しいおもちゃを手に入れたかのようにモンスター相手に魔法を使う人影があった・・・。
ちなみにこの後、このモンスターたちの肉はアルテミスの空間収納にしまいました。




