『怪物退治後の後始末』
やや解説口調
「ふう、何とかうまいこといったな」
消えた行く怪物を見ながら、俺は今空中から落下中だった。
「ゼロ様ー!!今受け止めますねー!!」
下を見ると、ハクロが両腕を広げていて、そのまま俺はハクロに受け止められた。ハクロよ、受け止めてくれるのはいいけどさ、その前についているもののせいで結構苦しいんだが。柔らかいけど圧迫感があるのだが。
「よっと、結構衝撃がありましたけど大丈夫でしたか?」
「ああ、エンチャントで身体強化してあるからな。全くダメージはない。それよりも・・」
「我なら大丈夫じゃよ」
ドラゴンの姿から人化し、いつものアルテミスの姿がそこにあった。
「翼をけがしたようだが大丈夫か?」
「問題ないわい。この程度ならすぐに治る」
アルテミスはそう言って元気そうなそぶりを見せた。若干腰のあたりを抑えてはいたが。
翼は多分大丈夫なんだろうけど、落下した時に腰から打ち付けていたような・・・。ま、後でスラ太郎に治してもらえばいいか。
「ご主人、無事でしたか」
いつの間にか近くまで走ってきていたスラ太郎とカトレアがいた。結構走るの早いな。
「ああ、ただもうちょっと勢いを弱められなかったか?結構きつかったんだが」
「もう使わないだろうし、いいのでしょうけど、また作るときの参考にしておきます」
今回の怪物退治の作戦はこうだった。
まず、アルテミスが怪物の気を引いている間に、俺たちは先回りをして近くに合った平原まで行く。
そしてそこにてカトレア、スラ太郎が協力して人間大砲を作った。それも、ただの人間大砲ではない。俺が自らにエンチャントで身体強化かけて、その手にカトレアとスラ太郎がが作った即席爆弾を持つ。
そのあと、あの怪物が大きく口を開けた瞬間に、俺は『ダセル』にて発射されて、怪物の口の中に飛び込み、奥に入る前に爆弾を投げてそこに火の魔法で着火して『シールド』で俺自身には影響ないように守って爆発させる。
爆発させた後、怪物の頭めがけて腹の中から高出力の光の光線を放った。しかも、威力を高めるために水の魔法でレンズのようなものを作り、そこを通して集中させたやつをだ。これも複合魔法の一種である。
外からだと効かない。だから腹の中に潜り込んで魔法を放ったのだ。
腹の中に爆弾を使ったのは内側なら攻撃が効くかどうか確かめるため。
効かなかった場合は最後まで残っていたトドメ用の「あるもの」を使うつもりだったんだが・・・ま、別の機会があったらそこで使うか。
怪物が消え、俺たちはモッセマンさんがいる場所まで戻った。
「モッセマンさん!!怪物は倒しましたよ!!」
「おおゼロ君!!この場所からでもあの怪物が出かかったおかげでその瞬間が見れたよ!!最後の魔法が特にきれいだったよ!!怪物の頭部が吹き飛んだのは結構グロかったけど」
ま、光魔法は見た目がきれいだけどその威力はえぐいからな。
「で、今回は皇帝は残ったのかい?」
「いえ、またあとかたもなく残っていませんでした」
あのバカ坊っちゃんの時は残っていたが、それ以降は怪物になった者は残っていない。おそらく完全に飲み込まれたかそうでないかの違いなのだろうか?
「で、これからどうします?帝国側は皇帝がいなくなったので交渉ができないのでは?」
「そこが問題なんだよね・・・」
「その心配はございませんわ」
「「え?」」
いきなり聞こえてきた方に顔を向けると、そこには以前会った人がいた。
「ルーナスさん!?なんでここに!?」
そこには、今回城では全く見かけなかったウィーキッドネス帝国第1王女、ゼル・ウィーキッドネス・ルーナスさんがいた。
「え!?まさか帝国の王女様かい!?」
そういやモッセマンさんは初めて会うんだっけ。
「そちらの方は初めましてですわね。私はウィーキッドネス帝国第1王女、ゼル・ウィーキッドネス・ルーナスです。普通にルーナスさんとでも呼んでください」
この王女、結構フランクだよな。
「ルーナスさん、心配はないってどういうことですか?」
「あの怪物は父、皇帝だったのでしょう?それが死んだということは、その葬式や、あの皇帝が怪物化した時に出た被害の整理、復興などで、今この国は戦争している暇がなくなるはずなのですよ。なので、すぐにでも停戦条約を代理の者が受けるとお思いに・・・あ、来ましたわ」
いると、帝国の城壁から誰かがこちらに来た。やけにやせた感じの人である。
「すいません、ルーナス様。この人たちが王国からの交渉人でよろしいのでしょうか?」
「ええ、そうですよ」
「では、交渉人お方は少しこちらに来てください」
「モッセマンさん行ってください、俺は少しルーナスさんと話します」
「お、じゃあ交渉してくるな」
モッセマンさんが帝国の代理の人と交渉しに行っている間に、俺はこの場で少し聞こうと思った。
「なあ、ルーナスさん。今回城の中にはいなかったようだけどどこに行ってたんだ?」
「中庭にずっとこもってましたよ?」
「え?」
あの遭難者が出るとか言われたあそこにか?
「あそこは拡張魔法を繰り返し過ぎて迷宮のようになっていますけれど、実は結構単純な構造になっていまして、そのことさえわかれば迷いませんわ」
え?そんなに単純になっているの?
「で、そこで久しぶりに私の従魔とお茶を飲んでいたら、あの怪物が現れて、聞こえた声で父、皇帝だとわかったのです」
なるほど、それであの怪物が皇帝だとわかっていたのか。というか、その従魔はいずこに?
「そして、そのあと怪物が投げた城であなたたちが城の下敷きになってしまったと思いまして、従魔にその城を壊してもらったところ、地面に穴が開いていまして、そこから何とか脱出したのだとわかりました」
あの時、カトレアの機転がなかったら完全につぶされていたんだよな・・・。
「そして、従魔に空から探してもらって、あなたたちが怪物を倒そうとしているのを見つけて、後は今の通りです」
というかさ、その従魔結局どこにいるの?
尋ねようとしたとき、早くも交渉を終わらせたのかモッセマンさんが戻ってきた。
「ゼロ君、交渉が終わって無事に停戦条約及び捕虜の引き渡しなどが決まったよ」
「あ、決まったんですか」
「だけど、今回の怪物のことがあるから早めに国に戻って報告したほうがいい」
「じゃあ、さっさと王都に戻りますか」
「あ、言い忘れていたのだけれども、新皇帝が決まったらそちらに知らせますってこともお伝えしておいてくださいね。私が成るつもりですけれどね」
あ、そういえばこの人一応継承権があるのか。
とりあえず、さっさと俺たちは国に戻ることにしたのであった。
しかし、あの黒魔石・・・・あの仮面の男が関係しているよな。いったい黒魔石って本当になんなんだ?
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ゼロたちが帝国から馬車で去っていくのをずっと見ていた仮面の男がまだ城壁の上にいた。その傍らにはメイド服を着てはいるがボロボロになったもう一人の人もいた。
「結局何も変わりなしか・・・。今回のことで目覚めると思ったんだけどな」
「そっちはのんびり見ていたのでしょうけど、こちらはあの足クサ男が怪物化した際に崩れてきたがれきにつぶされかけて、出るのに本当に苦労しましたよ」
「あはははは、僕らは人間じゃないからその程度じゃつぶされないでしょ」
「いや、人間だったときの感覚がまだあるんですよ!!恐怖心ぐらいはありますって!!」
そんなやり取りをしながら、その二つの影は残る一人が戻ってくるまでそこにいたのであった・・・」
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