『王都防衛2』
今回は敵側視点ですよ。
「なんだあれは?」
わたしの名前はガルバン・ゾン・デュエット。ウィーキッドネス帝国軍、先行突撃部部隊長ゾン領を収める貴族の次男だ。
今回、我が帝国は20年以上前に締結された停戦条約を破り、グライトス王国を我が手中にという皇帝陛下の意思により戦争を行うことにした。
この度の戦いで、私はここで十分な戦績を手に入れ、次期当主候補である我が愚兄よりも目立ち、私が当主になろうと思い、この部隊に入った。私が部隊長なのは、我が槍の腕が認められたものらしい。
ここまでの行軍は非常に楽なものであった。本来なら山を越え、一年もかかる王国の首都である王都までの道のりがたった数日しかかからなかったのだ。
これも、我が帝国魔導部隊が転送魔法陣とやらを改良したおかげである。
だが、王都を目の前にして私は困惑していた。
我が軍の進行方向に明らかに怪しい屋敷が目立つようにそびえていたのである。
見た目としては普通の貴族の屋敷のようだが、こんな道端にあること自体がおかしいのだ。
「隊長!あの屋敷を迂回して進みますか?」
我が部隊のミョ二副隊長が聞いてきた。
「いや待て。もしかしたら罠かもしれん」
「罠というとあの屋敷自体が罠では?」
「いや、あの屋敷周辺の地面が罠ということだ。我々が警戒して迂回するのを見越して仕掛けてあるのかもしれん」
「では、どういたしましょうか?」
「決まっておる。屋敷をぶち抜いて直進するのが1番だ」
「なるほど、さすが隊長!」
ふん、大方あの屋敷自体が見せかけの板で、周りに落とし穴などがあるに決まっている。誰が仕掛けたかは分からないが惜しかったな。私以外なら簡単に引っかかっただろうに。
「全軍!あの屋敷を直進してぶち抜いて進め‼︎」
「「「「オーーーッ‼︎」」」」
勢いをつけ、私たちは屋敷の中を直進して突き当たりに出くわした。
「あの壁をぶち抜いて進めー!」
「「「「オーーーッ‼︎」」」」
勢いで壁をぶち抜いた私たちはそのまま突き進もうとしたとたん。
ズブッ
何かを踏んづけた音がした。
足元をみると、沼地のようだった。
「な、沼地だと⁉︎あの屋敷の裏にあったのか!」
「隊長‼︎大変です‼︎勢いをつけたばかりに後ろから次々と兵が押し寄せ」
言い終わる前に、私たちは後ろから勢いで出てきた兵士たちに押し倒され、沼地に前から倒れこんだ。
「ブハッ‼︎死ぬかと思った‼︎」
「大変ですか隊長⁉︎」
「大丈夫だ!それより部隊の状況はどうなっている!!」
「それがみんなこの沼地にずぶずぶはまって身動きが取れなくなっています!!」
くそっつ!!まさかこんな罠があったとは。
沼地から何とか抜け出したかったが、かなり泥がまとわりついてなかなか抜け・・・・ん?
「なんだこの泥・・・動いていやがる!?」
泥が動いていた。よく見ると、少しずつだがゆっくりと重力にさからって上ってきているのだ!!
「ただの泥じゃない!?」
「あっ!これは多分『マッドスライム』です!!」
「なんでそんなことが分かるんだ!!」
「この前発売された最新号の月間『スライムクラブ』を読んだからです!!」
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「マッドスライム」
沼地に生息し、その沼地に適応したスライム。スライムの中では珍しく透明性がないため、普段は普通の泥にしか見えない。また、集団で集まって新たな沼地を生み出すこともある。ランクはC。
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「くっ、ねばねばして身動きが取れん!!」
「隊長!!確かこのスライムの弱点は炎の魔法です!!」
「魔法なんか使えるか!!」
「ですよね!!」
くそ、この戦争で功績をあげるという私の野望が・・・・。
マッドスライムが作り出した沼地に沈み込んでいきながら、ガルバン・ゾン・デュエットはその意識が薄れていったのであった・・・。
今回主人公出てこなかったな。




