『依頼の達成報告しに行く途中3』
前回の続きからだよ
「私はウィーキッドネス帝国第1王女のゼル・ウィーキッドネス・ルーナスよ」
そう彼女は言った。いやもう堂々と言われても、なんかどう反応していいのやら。
「それに目的を教えてあげるわ。今回この国に馬車で来た理由は、あなたと一度話してみたかったのよ」
「俺の勧誘とかなのですか?」
「それは一応目的としてはあったんでけど、単に今こうして二人っきりで話してみたかっただけよ」
なんかもう、いろいろばれたから完全に開き直っていないか?
「でもなんかタイミングがよさすぎませんか?」
こうして王都に向かっている時に偶然出会うってのはないはずだ。
「私はね、実はずっとあなたのことに興味があったのよ。あなたが卒業試験とやらで、魔桜を咲かせるときに膨大な魔力を持った人間がいると私の従魔からの報告を受けた時からね」
「それって、結構前ですよね?1年ぐらい前の」
「そうよ。そして、私は飛行魔法を持っているから一度、城から飛んできて見に行ってきてみたときにあなたが王都に現れた怪物を倒す姿も見ていたわ」
「あのときにもいたの!?」
全く気が付かなかった。あのやじ馬たちの中にいたら目立ちそうな容姿をしているのに、気が付かなかったのだ。
「ああ、野次馬たちに紛れていたわけじゃないわ。その時のあなたの真上のはるか上空からよ。視力を魔法で強化してみていたの」
なんだろう。この人絶対今鑑定したら「ストーカー」の表記がありそうなんだけど。
「で、その時にさらに興味をもってこう話してみたいと思ったわけ。王女としてではなくて、一個人のただのルーナスとしてね。それでね、その従魔に何とか考えてもらってこうして話せるような状況にならないかなって頼んだのよ」
「そうか、それであの不自然な怪しい指名依頼があったというわけか」
なんかやっとつながった気がした。
「そうよ、それで依頼主として偽って話そうとしたのだけど、あっさりばれちゃってね、どうしようかと思っていたら今回のモンスターの件があったわけよ。それで、しばらく港にいて、あなたがそこを立つ前に先回りをして待っていて、偶然を装って話そうとしたらあの盗賊たちに襲われたってわけよ。私は魔法が使えるけど、攻撃系は苦手ですからね」
なんかもう全部話したなこの人。結構あっさりした性格だよなほんと。
「こうして話してみて感じたけど、あなた魔法使いとしてやっていかないのが不思議なぐらいに魔力が多いわね。この魔力量だけでもあなたの従魔たちを超えているんじゃないの?」
す、鋭い。これまで魔力を感知できていたのがアルテミスぐらいだったから油断していたけど、この人ももしかして魔力を感知できるのか?
「そうかもしれないけど、それでも俺は魔物使いでやっていくつもりだよ。気楽に従魔たちと過ごしていきたいからね」
「そう・・・でも、あれだけの強さを持つ従魔たちを連れているのに国を奪い取ろうとか、攻めようとか思わないわけ?」
「思わないよ。そんなめんどくさいこと誰がするんだよ。自分で国を作るならまだしも、わざわざ国を攻めるとかそういう事は興味ないよ」
「え?それ本当に言っているの?}
「本当だよ」
そればっかりは本当にそう思っている。
「俺はただの魔物使いの冒険者として従魔たちと依頼を受けながら過ごしていきたいんだ。そういったことなんてしなくても、彼女らがいるからいいんだよ。俺が国を相手取るときがあるとすれば、こっちにまで被害が来るときかな?」
そういった時、ルーナスさんは驚いたような顔をした。なんかアルテミスのときみたいだな。こういった話をするのは。
「そう・・・心からそう思っているわけね。なるほど、あなたと実際に話してみると本当に面白いわね。強大な力を持ちながらも、そんな欲がないなんていいわね」
ルーナスさんはどことなく心から喜んでいるように思えた。
「あ、そういえばルーナスさんはウィーキッドネスの王女でしたよね。今度その国がこの王国に戦争を仕掛けようしているのをと聞きましたが、ルーナスさんは何か知っていませんか?」
「うーん、仮にもその国の皇女が話すのはまずいかもしれないけどいいわ、教えてあげる。確かに帝国はこの国に戦争を仕掛けるつもりよ。遅くとも、だいたい2年後ぐらいかしらね」
「やっぱりそうか・・・その情報、ありがとうございます」
「一応こっちが答えたのだからこっちから質問していいかしら?」
「いいですけど」
「あなたはその戦争が始まったら参戦するの?」
「一応参戦します。この国には愛着が一応ありますので。ですが、極力争うのは避けたいんです。従魔たちと戦争に行くのは嫌ですからね」
「そう、わかったわ。あなたが参戦するかもしれないというなら、皇帝である足クサの父に伝えておきますわ。戦争したら負ける確率が高いとね。あなたの従魔たちは、いや、あなた自身も強いですからね」
帝国との皇女の話も終わり、俺たちは皇女たちと別れ、王都に向かうのであった・・・。
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(冒険者魔物使いのゼロか・・・・心からの本心のようだし、いい人のようね。ある意味自由で、優しくて、面白い人・・・)
第1帝国皇女である自分とは違い、冒険者としての自由を求めるそのゼロの心にルーナスは憧れに近い感情を抱くのであった・・・。
いつからこの皇女様がゼロに目を付け始めたかは、『卒業試験8』あたりから読んでみてね!!
なんか途中からまじめな感じになってしまったなぁ。




