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うちは代々そういう家系2

作者: ばんがい

この国の城の地下には、ある一族が管理する特殊な牢獄があるらしい。

そこにいる囚人たちは一生牢から出ることを許されず一人でも脱獄されれば国家存亡の危機に陥るほどの凶悪犯らしい。

牢獄の事は城内でも機密事項で、安易に探ろうとする者はその迂闊さを命でつぐなうことになるそうだ。

‐王城七不思議より‐



どーも、王子の元婚約者です。

城にまつわる7不思議に住んでいます。

王子の婚約者に選ばれた時も突然だったけど、そこから牢獄へほうり込まれるまでもあっという間だったな。まぁこの牢獄を管理している一族っていうのもうちのことだし、むしろ働かなくて良いならラクし放題なんじゃない?



と、そんなことを最初は考えていたなぁと思い出しながら今私は黙々と刑務作業をしている。

ここでの刑務作業は大体が食べ物関係だ。

本日の刑務作業は落花生の殻向き。

さっきからずっと落花生を向いて殻と実とにそれぞれ分けている。

割る、入れる、割る、入れる、割る、入れる、入れる、入れる。

うわ、なんで今ゴミまで入れちゃったんだろ。

黙々と手を動かしていると、遠くからコツコツと足音が聞こえてきた。

そのコツコツは私の牢屋の前まできてピタリと止まる。

目を向けると牢屋の向こう側に長い髪を後ろでまとめた長身の女性が立っていた。

身長や髪の色は似ていないが、目つきの鋭いところが私とよく似ている。

この女性こそが、この牢獄の責任者で看守長のマリアさん。私の実の叔母だ。


「叔母さん、今日の分は全部終わってるよ」

私の軽い口調を聞いたマリアさんが、持っている鉄の棒で鉄格子を叩き、ガシャンという大きな音を鳴り響かせた。空気が震えて私にまで振動がビリビリと伝わってくる。

いつも持っている鉄の棒は護身用らしいが、こうやって鉄格子を叩くのにもっぱら使われている。

少なくとも私が牢屋の中でおとなしくしているうちは頭に振り下ろされることなど無いと信じたい。


「マリア看守長、本日の刑務作業終了しております」


「無駄口を叩かずにさっさと渡しな」

口調を改めると同時に敬礼までしてみたが、叔母さんは眉ひとつ動かさない。

どうやらウケなかったようだ。

私は今日の成果が入った二つの器を食事の受け取り口から鉄格子の向こう側へと押し出す。

叔母さんは器を受けとって、カツカツとあっという間に去って行った。


ちなみにこの作業の内容は直接今日の夕食の材料になる。

おそらく獄中の仲間たちも何かしらの手伝いをさせられていることだろう。

これをさぼったところで特に罰則はない。

しかし夕食のメニューが一品減るので皆からはたいそう恨まれるんだ。


ん?また足音が戻ってくる。

戻ってきた叔母さんは、渡した器の代わりに丸イスを一つ持っていた。どうしたんだろ?


「今は休憩中、次にあんたらの夕食運ぶまで仕事無しだよ」

叔母さんが牢屋の正面にイスを置いてそこに座るとニヤリと笑った。

「そういえばあんた随分仕事が早くなったじゃないか。あれだけできれば夕食もちょっとは豪華になるだろうさ」

やった、褒められた。


そこから牢屋越しに色々な話をした。叔母さんの話はかなり面白いし、叔母さんも私の話に結構笑ってくれる。

「叔母さんって休憩の時以外は口数が少ないよね。なんで?」

「別に、ただ公私混同をしたくないのさ。あんたにとってここは自宅みたいなもんかもしれないけど、私にとっちゃここは職場であって家じゃないんでね」

なるほど、さすが叔母さん。プロだわ。


「でもさ、休憩中っていっても私は囚人なわけでしょ。公私混同っていうなら、普通牢獄ってこんな風にお喋りしてて良いの?」

私の質問で叔母さんは眉間にこれでもかというほどシワを寄せた。

うわ、舌打ちまでしたよ。仕事中の無表情どこいった。


「ちっ、よそはよそ、うちはうちだよ」

えー、叔母さんそのセリフは牢獄じゃなくてむしろ実家でよく聞くやつでしょ。

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― 新着の感想 ―
[一言] おばさん、サイコー。 結婚してるのかなあ? 一族が、しぶとく生き残ってこれたのは なんか、あるんだろうなぁ。 裏設定ありますか?
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