明日になれば
コーヒーを用意して読めばコーヒーが美味しく飲めます
「宗真!」
私は癌になり入院し始めた加藤実穂。
大好きな彼氏の陽馬崇真はいつもお見舞いに来てくれる。私は宗真がいたから今の自分がいるんだと思う。
そういえばもう少しで年が明けるなぁ。
もう少し頑張れば癌は完治すると医者に言われた。
だから年が明けたら宗真と二人で幸せになろう。
「加藤さん。検査行きますよ。」
見慣れない看護婦が来た。宗真は手を振って病室を出て行った。残されたのは病室の戸が閉まる音だけ。
車椅子に乗って違う部屋に移動した。
違う病室でレントゲンを撮ってまた違う部屋に戻って来た。
そこには医者がいてため息をついてこういった。
「癌の細胞が巨大化してますね。薬を増やしましょう。」
医者の言葉は強かった。癌が大きくなっていると言う事を聞いて一ヶ月。
薬の副作用が始まった。
「実穂…。髪…。」
宗真がお見舞いに来てくれた。
やはり髪が抜けているのに気付いたのか。
「こんなの実穂じゃない!」
宗真…!ごめんなさい私が癌になったから。宗真。本当にこんなの実穂じゃないね。
実穂も幸せになりたいよ。
苦しいよ、楽になりたいよ。
「実穂…。別れよう。」
えっ!?
「嫌だよ!別れたくない!宗真!私頑張るから。」
宗真は大声出して言った。
「何を頑張るんだよ!何も出来ないお前がよ!弱い人間はベッドの上で腐り死ねばいいんだよ!」
初めて見たよ。宗真のそんな姿。ずっとそう思ってたんだ。
涙が溢れてくるよ。
もう誰も近付かないで。死にたい…。二人なら何でも乗越えられたんじゃないの?癌…あなたの事を一生恨んでやる…!医者からの外泊許可が出た。
久し振りのご飯はおいしかった。
学校に行った。友達といろんな事を話した。廊下を歩いていると同じクラスの菊田が話し掛けて来た。
「実穂。元気か?」
気安く話し掛けてくる。でも私は死ぬんだ。だから話し掛けないで…。
適当に廊下をほっつき歩いてると宗真がいた。
「そ…宗真!!」
宗真は私の存在に気付いたのか。こっちにきた。
「治ったのか?」
話し掛けてくる。
「治ってない!外泊許可をもらっただけ。」宗真…。懐かしい。
好きだよ。今でも。
宗真は髪の毛をクシャクシャにした。
「こないだはごめん…。また戻ろう?」
その言葉信じていいの?うれしいよ。
また戻ろう。私に生きる奇跡を与えてくれた。単純かもしれないけど好きだよ。「今年も実穂が生きていけますように」
宗真がミニ神社セットを買って来てくれた。私はそこで初詣をした。宗真が手に軽いキスをした。
温かいキスを…。何回も…。
具合が悪くて吐いてしまった。頭が痛い。
宗真にメールをした。『宗真具合良くないー。頭痛い。助けて〜。』送信ボタンを押した。
暇だなァ!ダルいし。携帯で遊ぼ♪
携帯を出してゲームを始めた。
頭痛い。ゲームをやめた。取りあえず寝よう。白いベッドの上で私は昼寝をした。起きたら宗真がいた。宗真は
「大丈夫か?」と話し掛けてくれた。宗真はやっぱり優しいね。生きたい…。宗真がいてくれたら明日も生きようと思えるんだ。宗真…大好きだよ。
「実穂。アイス買って来たぞ〜。」
アイス…。懐かしい。この頃病院食しか食べてないな。
「ありがとう。」
苺のアイスを手に取ってスプーンで食べた。
「美味しい!」
甘くてさっぱりしてて切ない味だね。よく味わっておこう。
「宗真ァ!助けて…。宗真…宗真…はぁはぁ…。」
ある夜苦しくて苦しくてうなされた。
「実穂ちゃん?!」
看護婦が入ってきた。苦しい。楽にして。神様は幸せな人を傷付けるんだね。痛い。
ねぇ宗真…。死んでしまうかもしれない。その時は天国から宗真を見守る。苦しい日々から開放される。いい事じゃない。宗真は許してくれますか?こんな弱い私を。
生きていてよかった事は?
わからない。でも実穂は精一杯生きた。
死にたくない。
「み〜ほ!」
宗真がいる。死ななかったんだ。よかった。うれしい。花がある。堂々と咲く一輪の百合。実穂はその花に『明未来』と名付けた。読み方は『めいらい』。宗真はクスクス笑う。楽しい。
「ねぇ宗真…。あのね私が死んだら百合をお供えしてね。」そう言うと宗真は泣いた。
「実穂は死なない。死なせねぇ!」
宗真…。私強いよ。死んだりしないから。
生きたい…。生きるよ。
温かい涙がポツリと手に落ちた。
花の通り明るい未来があるから。
後何年生きれるかなぁ。不意に思った。
多分明日死ぬ。
なんて暗い事考えない。2007.08.19
私は永遠の眠りについた。
宗真は一人。
私は天国で宗真を見守る。
あの約束を信じて…。
次回作もお楽しみ下さい。