第八話 決意
更新モチベ上がってるので結構サクサクでした。
今回は色々チャレンジしてみました。
それではどうぞ〜。
「決めた、強くなる。迷惑かけるわけにはいかないから」
相棒に言った。自分の中で思っておくだけじゃそのままになるから戒める為に。
でも返答は、意外なものだった。
「強くなる、か。目標を持つのはいいことだ。…だがな雄太、勘違いしないでほしい。契約を結んだのだぞ?相棒だ。迷惑なんて承知の上だし、そんな風に思っているつもりはない、気にしないでいいんだ」
「ルム…ありがとう」
相棒の優しさに、自分は満たされていった。
「流石にお腹減っちゃったな。魔法使ったからかな」
「ははっ、そうだな。とはいえ、今は殺生は嫌だろう。森の中に入って果実でも食べるか?」
「そうしよう」
「魔法にも限度があるし、近いから歩くか」
「うん」
森の方に歩みを進める。
だが異変が起こった。
数歩歩いたところで視界が傾いた。足がふらついている。
「うっ・・・」
ついにはバランスを崩して、後ろへ身体が落ち始めた。倒れる…
「大丈夫か!」
相棒が手で身体を支えてくれていた。
「ごめん…めまいかな…」
「身体がまだ力に追いついていないな…無理したな。歩くのはきついだろう。背中に乗るといい」
「うん、ありがとう…」
相棒は手で自分の胴体を掴み持ち上げ、背中に乗せる。
朝なのに瞼が重くて、目を閉じてしまった。眠たい。
されてばかりじゃいけない。
相棒とはいえ頼りきりじゃいけない。強くならないと…
自分は思い直したと同時に、眠りに落ちてしまった。
「眠ってしまったか…」
森に向け歩きながら背中で眠る雄太を見つつ、独り言を呟く。
起こしてしまわんよう、ゆっくり歩くか。
落ちないように背中に手をまわして、優しく掴む。
雄太からすれば、色んな事があり過ぎただろうな…相当疲労が溜まっているだろう…お疲れ様だ。雄太。
むぅ、まだ弱い子供だ…我が護らねば。
相棒を失うわけにはいかん、何より孤独は苦しいからな…戻るわけにはいかない。
雄太は強くなると言った。雄太が決心を固めたのならば、我も持たなければならん。
護ってみせるぞ…必ずだ。
イガルムは歩きながら、相棒の事を気にかけつつ、自分も決心を固めていた。
それから少し歩き、木の実のある場所に着いた。
…起こすか。
「起きるんだ雄太。着いたぞ」
雄太を掴み地面に下ろし、頬を撫でてやった。
「ふぅん〜」
喉を鳴らして気持ち良さそうに眠る雄太。
…卑怯だ、起こせなくなるだろう、愛らしい……全く我もだめだな。
自分の事を少し自責する。
・・・起こさねばな。
「起きろ雄太、雄太!」
肩を弱めに叩く。
雄太が目を開けて、体を起こした。
「ん〜寝ちゃってたね」
「いきなりあんな魔法を扱えば仕方あるまいな。さて、採るか」
低めの木になっている木の枝目掛けて爪を掲げ、切り裂いた。
果実が落ちる。
落ちた木の実を拾い、雄太に渡す。
「これは中々うまいぞ、水分もかなり取れる」
雄太が少し匂いを嗅ぎ、口に頬張った。
「凄く美味しいね、これ…林檎みたいな食感に桃みたいな味がする…」
林檎、桃?以前いた世界にあった食べ物なのか?
色々と疑問が湧いたが、今は置いといてまたいずれ聞くことにしよう。
「もう少し食べたい」
雄太の率直な要求に、我は応じた。
「ああ、好きなだけ食べるといい」
木の枝を切り裂き落ちた果実を、かき集め雄太の前に置いた。
うまそうに食べる雄太の顔に、喜びを覚えた。
「ふぇ…食べた食べた」
満足げに我を雄太が見つめてくる。
人間には持つと片手が塞がってしまうような大きさなのに、5つも食べるとはな…相当腹が減っていたんだろう。昨日もまともに食べていなかったしな。
「よく食べたな、雄太
残りは我が食べてもいいか?」
「うん、いいよ」
残った果実を鷲掴みにして、口に流し込み丸呑みした。
味を楽しんだり大きなものは噛まなければならないが、腹を満たすには噛まず丸呑みするのが一番なのだ。
「さて、腹を満たしたところで、これからどうしようか」
軽く話しかけたつもりだったが、雄太が重い顔で我を見ていた。
「…一度戻りたいんだ。前の世界に、もしかしたら生きているかもしれないし…確かめたい」
「むぅ…ダメだと言っても聞かんだろうな…確かに可能性は無いわけではない。だが、何があるか分からん。危険覚悟だが、それでも行くか?」
重い顔をしている時点で何となく察しはついていたが…だが相棒の頼みだ、聞かねばならない。
「分かってる…でも、可能性を捨てたくないんだ」
「そうだな、行くか、少し待ってな」
魔法を唱えるか…
「ゲータルワルトムーズ…!」
金属音が鳴り響き、辺りを白い煙が包みこんだ。魔法が行使できたようだ。
「私に乗れ、雄太。何があるかわからん…気をつけるんだぞ」
「うん、ルムもね」
「ああ…」
雄太が背中に乗る。準備は整った。可能性が、残っていればいいが…
足に力を入れ走り出す。一気に加速し、煙の中に入った。
はい、相棒ドラゴンのイガルム視点を中盤から入れてみました。
次もちょっとチャレンジします(笑)
それでは~。