第七話 目覚め
今回から本格的に魔法登場です。
ネーミングに困りますね…どうぞ。
んん〜…
いつもの様に手探りで目覚まし時計を探した。
中々見つからない。ただ宙を仰ぐだけだった。
目を開けてみると目の前には黒い何かが..
ってそうだ。そうだったんだ。。
もういつものような平坦な毎日じゃないんだ。
有り得ない事だって起こりうる。
寝ぼけている頭に理解させる。
考えている内に、頭の上から声が響いてきた。
「起きたか」
相棒だ、なんだよ黒い何かって…
「んん〜おはよう」
体を起こしながら挨拶を返した。
相棒も次いで起き上がってくる。
「よく眠れたか?」
「うん、大丈夫…そういえば今日は夢を見なかったな…」
「ん?」
「昨日まで最近ずっと夢を見てたんだ。その内容が、誰かが自分を助けようとしていて、自分は絶望的な状況下にいる…そう、まさに昨日のイガルムに助けられた時と一緒でさ」
「そうだったのか...」
相棒だし話すべきだなと思い、夢のことを打ちあけた。
にしてもなんで今日は夢を見なかったんだろう。
いや、見たい訳ではないんだけど。
「もしかしたらなんだが、それが偶然でないのならば、「予知夢」だろうな。それを見る素質があるのかもしれん」
「予知夢か…」
「仮に、また何か気掛かりになるような夢を見たら教えてくれぬか。何かしら手掛かりになるだろうからな」
「分かった」
素質…か、良いのか悪いのか…。
役に立つと良いんだけど、悪夢は見たくないな…。
「他に何か不安な事はないか?遠慮はいらぬからな」
「…特には無いかな…ただ…皆が生きてるかななんて…」
「…仲間か。絶望的だろうが、可能性がない訳ではないだろうな。昨日と話が食い違うし、勝手な推測に過ぎないが、お前と同じようなケースで生きているかもしれん」
「そっか…だったらいいな…」
可能性が0じゃない。それは自分に取っては救いになった。不安に拭う為にそう言ってるだけかもしれない。
でも、きっと大丈夫。きっと…
「そうだ、イガルムってなんか言いづらいというかなというか、字をとってルムって呼んでもいいかな」
「む?別に構わぬが」
「じゃ、そう呼ぶね。ルム」
「ああ」
言いづらいというよりは馴れ合いを深めたかった。了承してくれてよかった。
「さて、飯でも食べるか」
「そうだね」
「よし、捕りにいくぞ」
「え?あ、うん」
この世界にスーパーやコンビニなんかあるはずもない。
考えれば当然だった。
相棒は背を向けて翼を広げ、乗るように促している。
昨日のように乗ってみる。前より少し顔に体を近くして。
「落ちんようにな」
相棒の声と同時に、身体は宙に浮いた。
思ったより風が強くて、身を低くする。
地平線から淡い光が見え始めた。太陽だ。
「綺麗だな...」
景色に感動して無意識の内に自分はそう言っていた。
「気分はどうだ?」
心を読んだように相棒が問いかけてくる。自分は正直に返した。
「最高だね...」
「この程度の事で安らいでくれるならば嬉しい物だ。
さて、そろそろつくぞ」
後ろを向くと渓谷はもうかなり遠くだ。早い...
速度が収まりゆっくりと降下して着地した。
背中から降りて周囲を見渡す。
どうやら近くに森があるみたいだ。
「この森には獣が多くてな。
大体はこの森で捕っている。
狩猟の仕方だが、ん...?」
相棒が目を細め何かを見ている。
その方向を見ると..虎?違う、昨日の狼と同じ種類だ。起きたばかりなのかよれよれしつつ歩いている。こっちには気付いていないらしい。
「ちょうどいいところにいるな
よし、やり方を実践して見せてやろう」
そう言うと相棒は姿勢を低くし前脚を突き出し、
「ファルジ!」
相棒が何かを言った。
相棒の姿はない。どこだーー?
ーーーー見つけた。
さっきの狼の居たところに相棒はいた。口に狼を咥えて...
そのまま口に入れ、数回動かして飲み込んでいた。
------今やったのはな、魔法を使って標的に接近し、爪で損傷させ動きを封じたのだ。
自分はぼーっと眺めていた。頭が光景を受け付けてないのが分かった。
------すまない、慣れていない光景だったかもしれんな...
自分ははっとして、言葉を返す。
------ううん、起こりうらないこことが起きるのは分かってるよ...
少し驚いただけだから。
自然の世界では当然の事。弱肉強食なんだと思い込ませた。
------ふむ、そうか。腹は減っとらんのか?
------あんま減ってないし、大丈夫。遠慮してる訳じゃないよ。
------そ、そうか。ならいいんだが、、そうだ、お前の適正を調べていなかったな。
------え?
------魔法だ。誰にでも扱える物に特徴があってな。
得意な物もあれば、不得意も、全て並々に扱えるが、得意な物には及ばない、など様々だ。
------なるほど...
自分が言い終わる内に相棒が目の前まで来ている。得意じゃないのにこんなに早いのか...
相棒の強さに、自分は絶句した。
相棒が自分の頭に手を乗せる。
「目を閉じてみろ..何が見える?」
言われた通りに、自分は目を閉じた。
「赤色。。かな」
「詳しく言うと?濃いとか淡いとか」
「うーん...濃い、、血みたいな」
・・・返事がない。どうしたんだろう?と目を開け顔を見る。
かなり驚いた顔をしていた。
「どうしたの?」
「...お前は凄いな、これ程強力な魔法に目覚めるとは」
「え?」
「血の色なのだろう?」
「うん」
「血魔法が得意のようだな..扱える者は少ないはずだ。まさか血魔法だとはな...」
「そんなに凄いの?」
初めてみる相棒の姿に、自分は興味をそそられた。
「ああ、扱いこそ難しいが、万能故場所を選ばない。
私が得意なのは、氷魔法、回復魔法、情報魔法なんだがな」
「3つ...」
「血魔法に比べれば簡単だ。私が得意からかもしれないがな。・・・使ってみるか、魔法を」
相棒はそう言って、もう一度頭に手を乗せる。
(ライジ?)
頭の中に響いてきた。魔法の名前かな...?その他にも、言葉では言い表せない何かが流れ込んできている気がする..さっきの色に近い。
「魔法だ、血魔法の基本になる。私は使えないが、得意ならば扱えるはずだ」
「やってみるよ」
「やり方は簡単だ、魔法を唱える時、その魔法をイメージする。と言ったところだ」
「分かった」
相棒から少し離れて、言われた通りにやってみる。
イメージを膨らませる、色が浮かんだ。唱える。
「ライジ!」
気づいた時には、手に何かを握っていた。赤い...剣?
物凄く軽い。木の枝でも握っているみたいだ。
「凄いな..一発で行使するとは」
「できた…」
「丁度あそこに獲物がいるな
倒してみろ」
「わかった」
「血魔法は使い手次第だ。その魔法は血魔法の中でこそ下位だが、扱い方次第でどんな形にも変えられる。…かといって無理はするなよ」
「うん」
狼とは100m近く離れている。あっちは気づいていないみたいだ。奇襲すれば仕留められる。
そう作戦をたてた。
ーーーー我はここで見守っておこう、頑張るんだ。
ーーーーやってみるよ。
どんな形にも変えられる…ならばきっとさっきイガルムが使ってた魔法だって使えるはず。
頭の中にイメージする。血の色が浮かんだ。唱える。
「ライジ!」
足が軽くなった、走り出す・・・速い。
気づけば狼は目の前だ。
狼も自分に気づいた。今だ、剣で…
向かってくる狼に突き刺さった。
狼は横へ倒れ込む。
ーーーーよくやったな、剣を出した状況でかつ加速魔法に変化させるとは…
ーーーーなんとか…やれた…
気づけば手から剣は消え、相棒はすぐそばにきていた。
「…食ってもいいか?」
「あ、うん」
相棒は口を開けて狼を掴むと口の中に入れ噛む。なんとも言えない骨の音が頭に響いてきた。
不快な音に聞こえた。頭が受け付けていない。
いや、違う。
自分は考えれば、直接命を奪ったんだ。
「...え」
気づいた時には頬を大粒の涙が伝っていた。次に心が虚無感に駆られた。自分はその場に座り込んでしまった。涙が止まらない…。
「雄太…どうした…」
相棒が優しく問いかけてくる。
「うっ…分かってるんだ…なのに、止まらないよ…分かってる…分かってるさ、どんな有り得ない事でも起きる、常識が通用しないって事は、でも…涙が…」
「すまない…」
「…ル、ルム!?」
相棒は姿勢を低くして、優しく自分抱きしめてきた。
「我が雄太の事を理解出来ていないばかりに、お前を驚かせるような事ばかりし、ついにはさせてしまった。全く不器用だな私は…許してくれ…」
ここまで考えてくれてるんだ…ルム…。
「ルムは悪くないよ、自分に経験させようとしただけ…ごめんね…弱くてさ」
「本当に、すまない・・・」
お互いの欠点を自分から言い合い、少し仲が深まった気がする。
強くならないと…この世界では生きていけない。
決心した。強くなってみせる…相棒に迷惑をかけるわけにはいかない。
どうだったでしょうか。
結構中途半端に終わってしまった気が自分はしてます(なんとかしろ
続きが考えられなかったです...次回のお楽しみということで(え