相談
「ねえ真惟、聞いてる?」
電話の相手は由梨、俺の幼馴染の大輔の彼女だ。
「聞いてるよ、大輔の奴がどうしたって」
「だからぁ……あいつ浮気してるみたいなの」
「……嘘だろ。お前ら、いつも仲いいじゃん」
「そうなんだけど……」
由梨の声のトーンが下がる。
「何か証拠でもあるのか?」
「友だちがね、街であいつが知らない女の子と歩いてるの見たって……」
「見間違いじゃないのか?」
「そうだと思いたかったんだけど、あたしも心配になって大輔の携帯を……」
「見たのか?」
大きく頷く由梨。
「良くないってわかってたけど、我慢できなくて」
「それで……」
「メールを読んだら『マイ』って女の子と頻繁にやり取りしてるみたいなの。しかも内容が『愛してる』とか『会えないのが寂しい』とかで……ね、決定的でしょ」
「あいつ、パスワードとかかけてないの?」
「そういうとこ、いいかげんなのよ」
「ふうん。で、俺にどうして欲しい訳」
「それとなく大輔に聞いてほしいの、その女のこと」
「いいけど、期待するなよ」
「お願い。あんただけが頼りなんだから」
由梨からの通話が切れたあと、俺はすぐに大輔に電話をかける。
「大輔? 俺だけど」
「何だ、真惟か」
「何だじゃないぞ。お前、馬鹿だろ」
「は?」
「由梨にバレバレだぞ。なんでパスかけないんだよ?」
「え、あいつ俺の携帯見たのか……マズイな」
「とにかく、今日も遊ぶつもりだったけど、今から会えるか?」
「大丈夫だ」
「じゃ、いつもの場所で」
「ああ、後でな……マイ」
通話を終え、ふと振り返ると鏡に映る自分の姿が見えた。
女の子にしか見えない格好の俺の姿が……。