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マギステル  作者: ふう
学園都市編
9/14

黒い巨人




「魔力量は、23です」


 マヒロちゃんは、本当に何でもないことのように言った。


「魔力量23!?」


 初めに声を挙げたのはハイメ君だった。


「・・・どういうことだ?・・・学園都市アストルムには魔力量30からしか入れないはずだが・・・?」


 ハイメ君はいきなり怖い声と怖い顔を始めた。小さい声で「まさか本当にあいつの言ったことは・・・」と言ったのが聞こえた。今思うときっとスペンサーはいろいろなところで言いふらしてたんだと思う、でもあまりにも誰も相手にしないから、マヒロちゃんに直接言いに来たんだね。・・・スペンサー君・・・。


「どうなんだ、オギワラ。きちんと説明してもらおう」


「わたしの入学は、学園長によって保障されています」

「!・・・だから!なぜ入学が許されたのかと聞いているんだ!」


 ハイメ君がいらいらしながら言った。


「ま、まあまあ、フェリクス落ち着けよ、そんなに怖い顔してたらさ、オギワラさんも話せないよ!」

「む・・・」


 そこへ、イグニスが割って入った。


「えーと、オギワラさん、ごめんね?」


 イグニスは情けない顔でにへら、と笑った。それを見て私はなんだかとてもほっとした。イグニスはちょっとおばかだし、上手いことも言えないけど、周りの雰囲気を良くするような不思議な力を持っていると思う。


(大丈夫だ、イグニスだったら何とかしてくれる)


「かまいません。わたしが何故学園の基準を満たしていないのに、特別な措置をいただいてこの場にいるか、ということですよね」


 マヒロちゃんは、やっぱり感情の見えない瞳でハイメ君をしっかりと見た。


「それはわたしの能力によるからです。わたしの能力に魔力量は関係しません」


◇◇◇


「ふざけるな!お前は僕を馬鹿にしているのか!?」


 スペンサー君の怒鳴り声で私は回想から意識を戻した。スペンサー君はもう真っ赤になって怒鳴っていた。・・・マヒロちゃんは・・・相変わらず倉庫から用具を引き出す作業を続けていた。周りもこの異様な雰囲気に飲まれて手を出せないらしい。


「くそっ!!みんなして僕を馬鹿にして!せっかくこいつが嘘つきだって教えてあげたのに、この学園の馬鹿どもは誰もかれも・・・!!」


 スペンサー君はなんかもう、周りに八つ当たりし始めている。


「くそっくそっ!この学園のやつはみんな馬鹿ばっかりだ!お前もお前も!みんな馬鹿ばっかりだ!!」


 さすがに、まわりもイラつきだした。何人かの生徒が、スペンサー君を止めようと動き出したその時、


「こんな能無しに騙されて聖地アルス・マグナに招きいれるどころか、白翼親衛隊アルビオンに入れるなんて、当代のマギステルはとんだ能無しだな!!」


 次の瞬間、スペンサー君は地に倒れていた。私はいったい何が起きたのか分からなかった。


「ひ、ひいいい!!ば、化け物!!」


 スペンサー君の悲鳴がグラウンドに響き渡る。スペンサー君はなんとか逃げようともがくが、その胴体は黒い巨大な・・・鎧の人物によって拘束されていた。鎧の人物はスペンサー君の腹部に右足を載せた状態で停止している。


「ば、化け物め!はなせ!足をどけろ!!」


 スペンサー君は鎧の足を両手で叩いていたが、効果は無いようだった。私たちは突然現れた黒い鎧の人物に全く対処できていなかった。黒い鎧は、画用紙に落ちた黒いインクのように真黒で、その姿は禍々しかったが、何か恐ろしい心に直接響く美しさを感じた。


「不敬罪です」


 その時、真黒な鎧が震え、水面のようになった個所から溶けるように、マヒロちゃんが現れた。


「あの方への暴言は許されません」


 マヒロちゃんは、仁王立ちになりスペンサー君を見下ろした。その表情は肩まである艶やかな髪に隠されて全く伺えない。


「ひ、ひいいいい!な、なんだおまえ!おまえ、おまえ!いま、いま僕を僕を殺そうとしたな!!!!やめろ!くるな!くるなああああ!!」


 第3グラウンドには、スペンサー君の悲鳴だけが響いていた。禍々しいほど美しいその鎧は、日の光を全く反射していなかった。むしろ日の光を浴びてどんどん濃くなっているような・・・日の光を飲み込んでいるようにも感じられた。非日常的な光景と、スペンサー君の必死の悲鳴に、私たちは完全に飲み込まれていた。どうにかしなきゃと思うのだが、体が全く動かない。ただただ、目の前の光景に釘付けになった。誰か・・・誰か、誰か何か言ってほしい。誰か、助けてほしい・・・。


「ちょ!ど、これどういう状況よ・・・?」


 ああ、やっぱり、助けてくれるのはいつも君なんだね。イグニス・・・。


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