測定に関するエトセトラ2
「・・・まぁ、いいですわぁ。では次オギワラさん!お願いね!」
・・・ん?オギワラさん?・・・そ、そういえばオギワラさん、どこにいったんだろうう?なんか序盤からほぼ喋ってないし、本人には悪いんだけど、いまいち影が薄いんだよね・・・
「・・・ずっとここにいますよ」
「おうあっ」
振り返ると真黒な黒い瞳が俺を見返していた。つるりとした瞳には何の感情も見えない。・・・声には出してないんだけどなぁ、俺ってそんなに分かりやすいかな・・・
「ご、ごめんね・・・」
「いえ、謝る必要はありません」
オギワラさんは立ち上がると魔石水晶の方へ歩いて行った。
「・・・白翼親衛隊か・・・」
フェリクスが呟く。
「・・・世界に最も影響力のある人物を守る者だった者の実力、とくと見極めることにしよう・・・」
フェリクスも委員長もユリもヨンスンも、オギワラさんに注目している・・・。なんだか俺もどきどきしてきたぞ・・・。ごくり、と誰かの唾を飲み込む音が聞こえた。
オギワラさんはやっぱりこの雰囲気なんて介さないように魔石水晶に魔力を流した。徐々に魔石水晶は闇色に染まっていく。
「オギワラさんの属性は闇、とても珍しいわね。今現在、学園都市に居る闇魔術師は大学の教授にひとりしかいないと聞くわぁ・・・」
そんな珍しいのか・・・
「名前は荻原真尋、出身国は二ホン、属性は闇、得意魔法は補助魔法。魔力量は・・・」
「・・・え?」
◇◇◇
「みなさん、おはようございます。昨日から本格的に授業が始まりましたね。今日は実技の授業が1,2限にあります。体操服に着替えて第3グラウンドに集合してくださいね」
日直の号令とともに朝の会は終わった。女子は更衣室に移動する。
「あー、そういえばそうだったなー」
「なに、イグ坊、わすれてたの~」
「ふふふん、体操服はいつでも置いてある!」
「・・・洗濯してるんだよね?」
失礼な奴だ。
「え、洗ってるんだよね?ねぇ、聞こえてる?ねぇ」
「・・・今日はね」
「・・・俺お前が崖から落ちそうでも掴めないわ」
「お前・・・なんて薄情なやつなんだ・・・!!みんな聞いてくれ・・・!こいつは友達見捨てるようなやつなんだ・・・!」
「ちょ、人聞き悪いこと言うな!」
「ちょっと、あなたたち」
わいわいとしていたクラスの雰囲気が固まる。
「無駄口叩かないで早く着替えなさい。用具の準備、女子にさせる気?」
そう言ってジャージを着始めるのは、アリーナ・オスミニナ。
「はい・・・」
そう言ってそそくさと着替えを進める男たち。
アリーナ・オスミニナ。顎で切りそろえられた青髪、眼鏡の奥に揺らめく琥珀色の瞳を持つ美人、そうアリーナ・オスミニナは、れっきとした男である。
そう・・・だれが美女、と言った・・・?
アリーナ・オスミニナ、彼はれっきとした男だが、声は声変りを忘れたようなメゾソプラノ、口調は女口調・・・その彼が同じ場所で着替えをしていると、なんだかとてもいたたまれなくなるのだ・・・
結局そのあと、俺たちは無言で着替えを続けた。そして一人、またひとりとそそくさと教室を後にした。俺たちはふざけていて着替えが終わるのが一番遅かった。・・・そのことを数分後に後悔することになるとは、この時思ってもみなかった。