たぶん陰謀
魔法学園都市に落とされた爆弾によって燃え広がった火は、当分鎮火することはなかった。オギワラさんはあちらこちらに引っ張りだこで休み時間ともなると他クラスの奴が教室の外から興味津々にオギワラさんを見てる。
・・・なんていうか、悪気はないと思うんだけどさ、そろそろその珍獣扱いやめてあげないかな?
「だってそうじゃないといつまでたっても実行委員会に誘えないじゃないかああああ」
俺は机に突っ伏した。ちなみに今は昼食の時間である。
「イグ坊、途中まで良いこと言ってんのにねー」
「黙れ、エミル。お前には俺の苦労なんて分からないんだよおおおおお!!」
エミール・イーデンスタム、こいつは俺の中等部からの悪友の一人である。
「そんなにそのインチョーさんって怖いわけぇ?」
「怖いってレベルではない。超怖い。まだされてないけど睨まれたら石化効果ありそう」
ふーん、ってお前興味ないだろ!・・・くっそー、他人事だと思って・・・!
「そんなに怖くないわよ~、面倒見の良い先輩じゃない」
ユリッタがやってきた。
・・・ふ、ユリよ。おぬしは甘いな、修業が足らぬ・・・。甘いマスクの下の爛々とした目に気づかぬとは・・・!奴はあれだぞ!狙った獲物は逃さない系の女子だぞ!
「だいたい!お前なんだって俺が誘う前にM部に入ってんだよ!」
「そんなの、ヨンウンが先に誘ってきたんだもの。それに私、イグニスも入るだなんて思わなかったわ」
くそ・・・ヨンウンのやつめ、わざと言わなかったな・・・。
「もー、じれったいわね。委員長に伸ばしてもらった期限、今日までなんでしょ?今日の放課後から委員会始まるんだから、どっちにしろ早く声かけなさいよ」
「ぐぬぬ・・・」
「ちょーどいいとこにオギワラさんは来たみたいだよ~」
二人からの早く行って来いという視線が痛い・・・うううあの人ごみ押し分けて話しかけるのか・・・。気が重いがここで逃げたら俺は二人からヘタレ野郎との称号を貰ってしまうことになる・・・!
「オギワラさん!」
俺は人混みをかき分けて彼女のもとへとたどり着く。こうなりゃやけだ、やけくそだ。
「放課後、俺と付き合ってください!!」
途端、周囲のざわめきが増す。ん?なぜだ。視界の端でユリッタとエミルが頭痛が痛いような顔して・・・ん?
◇◇◇
ともかくあの後、クラスのみんなやオギワラさんに弁解して弁解して弁解して・・・最終的にユリッタとエミルの協力を得て事態は収拾した。ユリッタはともかく、エミルは収拾させる気があるのかどうか怪しかったが・・・。
・・・というわけで、今は俺の席の隣にオギワラさんがいる状況である。何故かって?あのあとオギワラさんはOKしてくれたんだよ!もちろんオギワラさんは今日が委員会は活動初日と知っていて本来の意味でのOKだったのだが、場の混乱に一役買ったことは言うまでもない。ユリッタがその誤解を理解して解釈してくれたから良いものの、危うく俺も混乱してしまうところだったぜ・・・。
あー・・・話はどこまで言ったかな?・・・そう!つまりオギワラさんが何故俺の隣にいるかって今がその放課後でここが委員会室で、今は委員長が来るまでの待ち時間だからなのさ!
ついでに俺の右隣はユリッタだ!こいつさっきからなんか怖い!俺が今平静を失ってるのは、委員長怖しが7割、あとの3割はお前だ!ユリッタ!
「みんなそろってるかなー?」
ぎゃあああ委員長だあああああ
「うんうん、そろってるようだねー!・・・イグニス君もちゃんと一人連れてきたんだねー!えらいえらい!」
うん・・・最初に俺を見た一瞬、目が笑ってなかったね。俺が約束破ったらどうなってたかよく分かりました。
「じゃあ今日からみんなよろしくねー!今期の実行委員は総勢60名!新入生が多く入ってくれました~パチパチ~」
委員長はそう言っておもむろに取り出したクラッカーを鳴らした。・・・新入生が多いのは毎年のことじゃないのか?むしろ新入生以外は逃げていくのではないのか・・・?といった疑問は思っても声に出さない。でも委員長はこっち見た。あの人絶対読心術使えると思う。
「今日はね~活動内容に入る前に皆さんにお知らせがありまーす!今年から我が4大魔法学園対抗運動祭実行委員会から魔術武道会へ有志メンバーによるパーティを送り込みたいと思いまーす!ちなみにメンバーはこちらで書類提出しておきました~」
な、なんだってええええええ!!てかもうそれ有志じゃないし!
「名前を読み上げまーす。まず3年生からね~。私、リン・リーウェンですよろしく!以上。次2年生該当者なし、以上。次1年生、フェリクス・ハイメ、ホン・ヨンスン、ユリッタ・カッシネッリ、マヒロ・オギワラ、イグニス・パトリア、以上!」
あ、これ陰謀だ。