大切な物でした、、、
「ふざけるな」
朝目覚めれば会社の遅刻時間
アイロンで整えてないシワだらけなシャツに着替える。
トーストでチンしたパンを右手に、鞄を左手にいざ出勤。
パン、、、
お前はいつも忙しいとき
手軽に食べれてさらに美味しくいてくれる。
最友といえる朝食のお前を見捨てることはきっとないだろう。
いや、、、この俺が見捨てない!
扉の前。
右手にパン、左手に鞄
「ばかやろう」
鞄を置いた。
扉を開けた。
コイツは完食するまで見捨てない。
俺とお前は朝のベストコンビだ!
雨だ、、、
右手にパン、左手に鞄
、、、
、、、、、、
、、、、、、、、、
ごめん
=最友も
この日は忘れろ
明日食べる=
傘をとる
最友を見捨ててまでコイツを取るべきだったのか?
傘よ、、、
なぜお前はこんなにも不便なんだ!
俺が走れば傘は風の抵抗を受けて
重くなる。
ハッキリいう。
パンがいた!
未練たらしいがいたんだこの手にアイツが!
俺はお前に頼らなければいけぬのが情けない、、、
風が吹いた
強い風が、、、
飛沫の雨が止み、目を開ける。
「なんてことだ」
傘がバンザイしている。
そうかお前も俺と離れたかったんだな、、、
けど
「ばかやろう」
お前泣いてんじゃねぇか。
山門芝居しても無駄だ。
どれだけ俺が酷くても
お前は俺の力になりたかったんだよな?
なのに俺は、、、
「ごめん」
全部俺が悪かった
だからこんなところで終わらないでくれ!
傘は応答しなかった。
ただ山門芝居がバレたことに動揺し
バンザイしたまま硬直している。
俺は歩みを止めてはいけない。
お前の分のためにも戦うんだ。
その時、あの傘が捨てられた子犬に見えた。
「さよなら」
なぁメガネ
お前とこれまで何を共に見てきたのだろうか。
パンの残骸
傘の亡骸
俺は正直怖い。
なのにお前は俺から離れない。
まるで現実を受け止めろというように。
だからお前のお陰で逃げずにいられるんだな。
俺は人差し指と中指でメガネの位置を直そうとした。
すると向かい側の人と肩が接触してしまった。
2本指でメガネにドロップキック
「あぁ、、ああぁ」
霞む霞む
「霞むぞぉ!!」
安定しない足運び
メガネ、、、どこだメガネ!
そしてドブの溝にハマり片方の革靴を流す
「靴ぅぅぅ!!!」
小さい頃から代わるパートナー。
それでも最後まで使いこなしてきた
なのに!
28㎝の船
いざ大海原へ!、、、
こんなに遅刻してしまっては、上司から連絡が来ているだろう。
仕方ない、、、
今日は大きい熱が出たと言おう。
携帯の電池が無かった、、、
俺は涙を流した
「俺だって充電切れだ」
ばかやろう!
弱音を吐いたらもうダメだ。
行くんだ。
歩け!
俺の足!
遅刻しなければ
遅刻しなければ、、、
パンも傘もメガネも靴も!!!
失うことはなかった!
気づけば、、、
周りのそれすらも
俺には、、、
大切な物でした
……………
目を覚ました。
「、、、夢」
一瞬のこと過ぎて夢が思い出せない。
時計を見た
「ふざけるな」
朝目覚めれば会社の遅刻時間
雨が静かに嘲笑う、、、