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少女の蛹  作者: カラクリカラクリ
20/30

花嫁衣裳

私は走った。

枝が腕や顔を引っ掻いても、葉が眼前を遮っても、走り続けた。

立ち止まればもう、動けなくなることは必須だと知っていたからだ。

けれど、蔦が私の足を引っ掛けて、地面に膝をつかせたせいで、私の足は止まってしまった。

ひざ小僧の痛みが、今更引っ掻き傷の痛みも一緒に連れてきて、私はもう我慢できずに泣き出してしまう。

私はいつの間にか、あの男を心から信用していた。


「カメかと思ったら女の子だねぇ。何で泣いてるの?」

「哀しいからデショ」


唐突に落ちてきた声に顔を上げる前に、ひょいと身体が宙に浮く。


「っ」


目の前には道化師の顔。

横から覗き込む兎耳の生えた少年がにこりと笑って私を見つめた。


「可愛いから、泣いてると勿体ないよ」

「ちっとも、慰めになってまセンヨ」

「花嫁衣装がくすんじゃうし」

「白い服が全て花嫁衣装だと思っタラ、大間違いデスヨ、貴方」

「お茶と美味しいお菓子でも食べて元気だしてね」


ちっとも噛み合わない会話に呆然としていると、唐突に眼前にティーカップとビスキュイが差し出されて、何かを答える前に、どさりと椅子に落とされた。

そこには大きな机があって、溢れんばかりに並べられたティーカップの群れが出迎える。


「その兎は、あまり賛同できることは云いまセンガ、お腹が空くと、哀しいのは賛成デス。ヨウコソ、お茶会ヘ」


茶目っ気たっぷりに頭を下げた道化師の向かいで、少年は既に席についてビスキュイと紅茶に手を伸ばしていた。



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