贈り物
上の姉が本を読む声がずっと聴こえている。
ぶわっと風が吹いて、気がつけば場面が変わった。
町外れの図書館に少年と少女。
良く似ていても、私を私が見間違うはずがない。
あれは私。
そして。
「小さな瓶を、貰ったんだわ」
お土産だと、小さな瓶を手渡した彼に、私は勘違いだと首を振った。
私ではなく、彼女に渡したいのだと思ったからだ。
けれど彼は、そのまま私に押し付けてにこりと笑った。
その、幼く人好きのする笑顔に憧れている女の子が幾人もいることを私は知っていた。
だからこそ、貰ってはいけなかったことも解っていたのに、私はそれを貰ってしまった。
私を見てくれる人がいることが本当に嬉しくて。
けれど、当然のように彼女は横からそれを掠め取り、周りの女の子にはいつの間にか私が彼から贈り物を受けとったことが知れ渡っていて、針鼠のように鎧を纏った少女達からの止むことない攻撃に、私は心から疲れきっていた。
私の力無い様子に気付いたのはやはり上の姉で、珍しく私一人に本を読んできかせてあげると私をあの丘に連れ出したのだ。
「それから、」
家からの声に答えた上の姉が場を外して、私は聴こえてきたあの声に誘われて、足を踏み外した。
Tell me,what your name?
This world welcome to you.