表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女の蛹  作者: カラクリカラクリ
1/30

森の中の小さなお家

目が覚めたとき、私は木々の覆い繁る鬱蒼とした森の中にいて、どうしてここにいるのか思いだそうとすると、不意に涼しげな声が思考を遮った。


「お目醒めのようだね、お嬢さん」


目を向ければ、幹に背中を預けて座る男の人が、目深に被ったハットの下から視線を投げる。

黒いハットに黒い礼服。

ネクタイまで揃いの黒で、男は咥えた煙草をベルトから提げた懐中時計のような携帯灰皿で揉み消すと、無造作に立ち上がった。


「あの、貴方」

「始めまして、お嬢さん。あんまり悠長に喋っている時間はないから、起きたならさっさと立ちあがって。歩きながら話そう」


差し出された手に反射的に掴まると、細身の身体の何処にそんな力があったのかと思うくらいの勢いで引き上げられて、慌てて地面に足をつく。


「走れとは云わないから、せめて速歩きくらいはしてくれるかな?」

「あ、あの」

「今は進むを先にして。あとからいくらでも質問に答えるから」


右手を掴んだまま歩きだした男に引きずられるように、お気に入りの真っ白なワンピースをぱたぱたと掃って、森の中を進むと、やがて木立の向こうに、ロッジのような家が見えた。


「わぁ、久しぶりだね」

「可愛いお嬢さんを連れてるね」


森の中の小さな家の前で薪を割っていたのは、幼い二人の少年で、そっくりの彼らは、親しげな様子で男を見上げてにこりと笑う。


「少し、暖炉の前を借りても良いかな」

「うん、いいよ」

「薪もたっぷりあるよ」


頷いた少年達に肩を竦めて、男は私をその小さなお家の中へ促した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ