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不死身の元魔王ヴィルヘルミナ~吸血鬼は千年の戦場を見届ける~【改稿版】  作者: Takahiro
第一章 ポメレニア辺境伯領 1252年

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吸血鬼というモノ

「奴らです。前と同じく、北から来ましたな」

「そうか。じゃあ行ってくるよ。朗報を期待していてね」

「え、ええ」

「それと、余計な手出しは無用だよ」


 ヴィルヘルミナは気楽な様子で手を振りながら、吸血鬼が現れた方面に向かった。


 カールはヴィルヘルミナの言葉を信じ、どうしようもなくなるまでは戦わないよう村人たちに通達した。吸血鬼の群れは何の抵抗も受けず、村の土塁の内側に侵入し、そして彼女と鉢合わせた。


「やあ、君達。何をしているのかな?」


 全部で十五人ほどだろうか。堂々と歩みを進める吸血鬼の集団の前に、彼女はたった一人で立ち塞がったのだ。


「何だお前? 死にたいのか?」

「殺していいっすか、親分?」

「いや、待て」


 群れの真ん中から吸血鬼のリーダーと思わしき男が出てきた。いかにも山賊の頭領というべき汚らしい身なり、厳つい体格に、巨大な斧を背負っている。だが、その肌は宮殿に引きこもっている貴族のように白く、髪は金髪に近い。


「お前、吸血鬼だな?」

「気配だけで分かるとは。まあ私を知ってるほど古参ではないようだけど」


 吸血鬼の頭領はヴィルヘルミナの言葉に引っかかったようだが、気に留める様子はなかった。


「……まあいい。で? 吸血鬼が吸血鬼の邪魔をするのか?」


 男が尋ねると、吸血鬼ヴィルヘルミナは不愉快そうに眉を顰めた。


「無力な人間を襲って喰い殺すなんて、君達には名誉というものがないのかな? 君達は吸血鬼の恥さらしだ」


 ――まったく、無駄に戦争なんてしてるから、こういう連中が跳梁跋扈するんだ。


「名誉だと? 吸血鬼は人間が食糧ってだけだ。人間が野で獣を狩るように、吸血鬼は人間を狩る。ただそれだけの話だろ」

「なるほど。そういう認識なのであれば、話し合いに意味はなさそうだ。私は、君達の敵だ」


 宣戦を告げると、ヴィルヘルミナは右腕を前に突き出した。彼女の右手の中に剣の柄が現れたと思うと、瞬く間に煌めく刀身が形を成した。彼女の手には美しい剣が握られている。


「ほう……」

「さあ。殺し合おうじゃないか」

「いいだろう。だが、殺し合う前に名前くらいは教えてくれてもいいだろ? 俺はヘルムート。見ての通り、こいつらの頭目だ」

「私はヴィルヘルミナ。君達みたいなバカが嫌いで、まともな人間を愛している吸血鬼だ」

「そうか。んじゃ、殺せ」


 ヘルムートが冷たい声で言い放つと、すぐさま二人の吸血鬼が彼の背後から飛び出した。錆びついた斧を振り上げた吸血鬼が、掛け声も上げずヴィルヘルミナに飛びかかる。


 ――よく統制されている。とは言え、この程度は敵じゃないけど。


 敵の斧が頭をかち割る寸前、ヴィルヘルミナは右手に握られた剣を一閃させた。次の瞬間、二人の吸血鬼は胸から上と下に分割された。真っ二つになった吸血鬼の肉塊が地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


「おや、こんな程度で死んだのか。つまらないな」

「ほう……」


 ヘルムートは驚いたように目を見開いたが、それ以上の反応は示さない。興味深げにヴィルヘルミナを観察していた。


「吸血鬼の膂力なら、身体を真っ二つにする程度、大したことじゃねえ。それより、心臓を精確に切断しているな。お前やっぱり、ただ者じゃねぇな」

「ああ。そうでもなければ、この数を相手に喧嘩を売ったりしないよ」

「ははっ。面白いじゃねぇか。んじゃ、次の手だ」


 ヘルムートが右手を挙げた。何かの合図だろう。そしてその手を振り下ろすと、次の瞬間、ヴィルヘルミナの右肩が吹き飛んだ。右腕がもげたのは言うまでもなく、肩と呼べる部位がほとんど抉り取られていた。まるで彼女の肩の中に火薬が入っていて、それが炸裂したかのようだ。


 ヴィルヘルミナの肩が跡形もなくなると、一瞬遅れて破裂音のようなものが森の奥から聞こえた。


 ――弓兵を配置していたとでも? それに、この威力は。


「矢尻に銀でも塗っていたのかな?」

「当たりだ」

「わざわざ吸血鬼用の武器を用意しているなんて、驚きだね」

「魔物も人間も相手じゃねぇ。唯一邪魔になるのは同業者だ。お前みたいなのに備えておくのは当然だろ?」


 ヴィルヘルミナは溜息を吐く。


「まったく。無駄に頭が回る連中だね」

「余裕かましてる場合か? お前を狙っている伏兵はまだまだいるぜ?」

「昔は君達の何倍もの吸血鬼を相手したものだ。君達程度の人数、大したことじゃない」

「ふん。逃げた方が賢明だと思うがな」

「それはどうかな」


 ヴィルヘルミナは挑発的な笑みを浮かべた。


「……なら、今度こそ死んでもらう」


 ヘルムートが再び右腕を使って合図を飛ばす。その腕が振り下ろされた瞬間、ヴィルヘルミナの身体は弾け飛んだ。両腕と両脚、それに頭すらも胴を離れ、その胴体もいくつかの肉片となってばら撒かれた。


 血の海の中に、元が何だったのかすら分からない肉片が散らばる。


「大見得切ってた割には、大したことねえじゃねぇか」


 ヘルムートと彼の手下達は、ヴィルヘルミナだった血肉を踏み荒らした。

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