表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

第5話 大丈夫、受け止めるから

ルミナリア共和国。


王都。


白い回廊を歩くフィーネリア・ルミナリアは、

豪奢なドレスを纏ってはいなかった。


深い蒼の共和国軍士官服。

胸元には王家の紋章。

装飾は最小限、実用を優先した仕立て。


王女でありながら、軍人の姿。


背後で囁き声が落ちる。


「鮮血の王女様よ……」


「野蛮……」


「怖いわ……」


足は止まらない。


侍女が小さく言う。


「姫様、お気になさらぬよう……」


フィーナは柔らかく笑った。


「言わせておけばいいよ」


窓から差す光を見上げる。


「事実だしね」


白百合。


帝国はそう呼ぶ。


白いREVに乗るから。


王都では、別の名で囁かれているけれど。


その白が何度血を浴びたかも、彼女は知っている。


それでも逃げない。


それが自分の役目だから。



出撃命令。


格納庫へ向かう。


軍帽を外し、軍服を脱ぐ。


代わりに差し出されたのは、純白のコネクションスーツ。


神経接続用の極薄繊維が織り込まれた戦闘装束。


冷たい布地が肌に触れる。


王女の外装が、一枚ずつ剥がれていく。


鏡に映るのは、ただの接続者。


白いスーツが身体に密着する。


呼吸が静まる。


「……行ってきます」


小さく呟く。


顔はそのまま、世界に晒される。


残響も、痛みも、隠さない。


逃げない。


接続開始。



白いREVのコックピット。


静寂。


接続値――20%。


実戦値。


意識が深く沈む。


視界が拡張する。


機体の指先まで感覚が通る。


鼓動が同期する。


発進。


純白の機体が光を受けて立ち上がる。


通信を開く。


「各機、焦らないで。無理はしない」


「了解!」


部下の声は落ち着いている。


それが誇りだった。



帝国機、視認。


戦闘開始。


GRASPとREVが交錯する。


閃光。


衝撃。


一機のREVが敵を撃墜する。


その瞬間。


残響。


20%。


はっきり聞こえる。


怒り。


恐怖。


断ち切られた未来。


フィーナの呼吸が乱れる。


瞳が揺れる。


「……大丈夫?」


「問題ありません!」


少し強い声。


彼女は前へ出る。


白い機体が滑る。


敵の射線を遮る。


「無理に撃たなくていい。隊形維持」


守る。


撃たせない。


自分が撃つ。


照準。


射撃。


命中。


帝国機、崩壊。


その瞬間。


強い残響が胸を叩く。


苦しい。


辛い。


視界が滲む。


白いスーツの胸元が、わずかに上下する。


重い。


20%。


これ以上は踏み込まない。


だが、接続は切らない。


拒絶しない。


あなたは確かにいた。


それを消さない。


「……っ」


歯を食いしばる。


次へ。


部下機が追い詰められる。


「下がって!」


白が割り込む。


被弾。


衝撃。


フレームが軋む。


それでも姿勢を保つ。


反撃。


撃墜。


また残響。


重い。


確かに重い。


それでも。


立つ。


それが隊長だから。


それが王女だから。


戦闘終了。


帝国機、撤退。



帰投。


接続解除。


世界が、自分の身体に戻る。


スーツは汗で肌に貼りついている。


ハッチが開く。


外気が触れる。


フィーナはしばらく動かない。


胸の奥に残る感覚。


消えない。


消さない。


整備員が見上げる。


「隊長、ご無事で」


「うん」


ゆっくり立ち上がり、空を見る。


撃ち落とした向こうに、接続者がいた。


自分と同じ。


瞳は揺れている。


それでも逸らさない。


「……大丈夫」


小さく。


「受け止めるから」


白い機体の足元に、少女の影が落ちる。


王女でも、象徴でもない。


ただの接続者。


それでも、人間だ。


第5話まで読んでいただきありがとうございます!

感想コメント、ブクマ大変励みになります!

完結まで毎日更新予定です!よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ