第35話 お前が俺を揺らした
帝国南部戦線。
ルクはいない。
GRASP-α《アストラ》は別戦域。
今夜、単独侵攻するのは――
GRASP-β《オルクス》。
レイ。
侵攻地点は旧共和国資源採掘地帯。
広い平原に見える。
だが地下は巨大空洞。
支柱と補強で辛うじて保たれた、空虚な地盤。
戦闘には向かない。
だが、止まらない。
コックピット。
リンクスーツが神経へ食い込む。
接続値。
30%。
静止。
レイの指が動く。
――50%。
警告表示。
LNS深層同期域。
許容。
接続。
視界が拡張される。
敵機の軌道予測。
地表の歪み。
砲撃の着弾予測。
全てが見える。
残響は遠い。
小さい。
処理できる。
オルクスが滑走する。
共和国REV部隊を蹴散らす。
一機。
二機。
三機。
圧倒。
50%。
人間の限界を超えた応答。
そして。
白。
REV-IV。
「白百合...」
刃が交差する。
衝撃。
出力差は明確。
押せる。
押し込む。
白が膝を落とす。
決められる。
その瞬間。
“あなたはこの声に何を感じるの”
「俺は...」
一拍。
遅れる。
50%のはずなのに。
遅れる。
白が刃を返す。
肩装甲を裂く。
浅い。
だが、遅れた。
レイは再加速。
オルクスが踏み込む。
その衝撃が、地面を鳴らす。
低い軋み。
地盤警告。
地下空洞検知。
白も気づく。
踏み込みが重なる。
二機の高出力が一点に集中。
地面に細い亀裂が走る。
さらに砲撃。
振動。
亀裂が広がる。
それでも。
レイは止まらない。
白が味方を庇う。
守るための揺れ。
そこを突く。
刃が白装甲を裂く。
エレジアの波形が乱れる。
だが崩れない。
50%対35%。
それでも互角。
理由は分かる。
自分が、揺れている。
リンクスーツの内側で、指が僅かに震える。
「お前が俺を揺らした」
残響は小さい。
だが。
“何を感じるの”
問いが消えない。
地面が沈む。
崩れはしない。
だが亀裂は確実に広がる。
遠方で、帝国機と共和国機が滑走しながら激突する。
振動が地表を伝う。
砲撃の衝撃が地中へ落ちる。
地下空洞が、低く鳴る。
鈍い共振。
二機の足元だけが、わずかに沈む。
白百合が気づく。
レイも分かっている。
この地面は――空洞だ。
踏み込みを重ねれば、崩れる。
だが。
退かない。
50%。
それでも決めきれない。
亀裂が、二機の間を走る。
次の衝突が、引き金になる。
白と青は、互いを見据える。
戦いは、まだ終わらない。




